一七時限目『 東の国のオーガ・オニ 』【 バルーンアート写真付 】
オニ
■種別:巨人の亜人型魔獣(東の国のオーガの亜種)
■出現数と頻度:単独〜 4.5体/まれ
■サイズ:身長2〜2.5メートル
■危険度:中
■知能:人間なみ
■人間への反応:非常に攻撃的
■登場エピソード:なし
■身体的特性とパワー
オニは、大陸の東端の『東の国』にみられる亜人型魔獣で、オーガ系の亜種です。
▷ オーガの概説
オーガは、頭に角を生やした獰猛な亜人型魔獣で、しばしば人喰い(巨人)と呼ばれます。
鎧のようなぶ厚い筋肉に硬い肌で、大きな武器を怪力でふるい、人間に対して暴力的で残忍です。
ゴブリン、オークなどのほかの下位の亜人型魔獣とは比べ物にならないほど強く、魔獣深森の奥の土地で単独で生きられるのはオーガくらいです。
東の国のオニは、オーガとほぼ同等の力をもち、外見や生活(生態)に異なる特徴があります。
◇主な相違点
▷ 外観
オニは、ずんぐりとした体形で熊のように太い腕です。
くせのある乱れた長髪から一本、または二本の角が生え、大きく裂ける口に牙が生えています。
オーガとの大きな違いは筋肉質の両脚です。
オニの両脚は太く張りつめ、オーガと異なり黒〜茶系の獣毛におおわれています。その多くは、黄色や茶色や白の紋様(多くは虎縞)があります。
ただし、半獣ではなくヒトの脚の関節構造で、踵もそなわっています。
▷ 戦闘
オニは、人外の脚力とバランス感覚で軽々と高所に跳び上がります。
爆発的スピードで木々や家々の間を駆け、しばしば宙を舞うアクロバットな動きをみせます。夜襲や奇襲、立体的な撹乱が得意です。
一方、変幻自在の動きのため両手を自由にして武器を持たないことが多く、武器製造と武器戦闘術は未熟です。怪力に耐える太さの金棒、あるいは釘や鋲を乱雑に打った硬木の棍棒をふるうのが精々です。
かわりに素手の戦闘に長け、怪力の拳打や足技を放ち、体当たり、爪や牙の斬撃・嚙みつきをまじえて攻撃します。
また、過去には異能のオニがいて、一呼吸で肺を溶かす毒気、金縛りの眼光、紫電の手のひら、金属化する肌などおそろしい力を示しました。
それぞれのオニに固有で、幾つかの証拠から魔法ではない別の力だったといわれますが、諸説あり、力の正体はよくわかっていません。
▷ 生態
オニは僻地に現れ、その多くが単身でくらします。
東の国は、山がちな地形と急流の川に遮られて行き来しにくいためか、オニは大陸西方のはぐれオーガと異なり放浪生活を好まず、可能な限りねぐらをかまえて縄張りを持とうとします。
町外れの墓地や崩れかけた廃屋に住みつく変わり者もいますが、大抵、人里から距離をとり、けわしい山の山腹や深い森、大きな洞窟の奥へ住み着きます。
廃城や廃村、廃鉱山をねぐらにすることもあります。
はぐれオニたちは、ねぐらや狩場をめぐって激しく争いますが、数体でつるむこともよくあります(長続きするか、まちまちですが)。
図抜けた力のオニがいると集団は大きくなり、オニが十体以上集まれば中堅クラスの領主も脅かす脅威です。その討伐戦は、名だたる手練れが集められて戦争そのものの規模で兵士が動員されます。
♢ 東の国の国情 〜 アシュラの大乱
東の国は過去、アシュラ(オーガ系上位種・四腕オーガ)の大集団によって伝統王朝が倒されました。
人間は100年以上かけて国土を解放しましたが、後世、アシュラの大乱(別名;四腕の大禍)と呼ばれた時期、死滅寸前まで追い詰められました。今日でも、東の国のオーガ系魔獣の脅威は、ほかの土地では考えられないほど人に身近です。
── 東の国の民は、苛烈極まりない闘争で武勇をみがき、さまざまな戦技を編み出してアシュラの支配をくつがえしましたが、その後、数百年たっても下位種のオニを駆逐出来ていません。
連携を無くして、時折、酷い被害を出しています。
東の国は大乱後、狭い土地で人口が急激に増えて、多くの領主が紛争(おもに相続争いと領土問題)をかかえたためで。オニの群れの討伐は金穀を費やし、兵の犠牲が避けられないことからきわめて慎重です。
問題をかかえた土地の領主ほど躊躇し、いざというときオニの退路をふさがず、追撃の手を緩めるなどして、死に物狂いの反撃を避けようとします。生き残りのオニを他領に追いやることも珍しくありません。
結果として、オニが山間部や島嶼へ逃げ込み、力を取り戻す機会をあたえています。
── ただし、アシュラ(四腕オーガ)の討伐では真逆の光景が見られます。
はぐれアシュラ一体に近隣の勢力が先を争うように挑みかかり、毎回、異常な損害を出します。パニックに近い自殺攻撃や闇雲な射撃魔術、同士討ちも珍しくなく。一刻も早く旧支配者のアシュラを殺そうとする様は『狂気』『総員死兵』と他国人が形容するほどです。
♢ オニをめぐる謎
奇妙なことに、オニの赤子や子どもは目撃されていません。東の国の人々は若いオニがどこで生まれ育ち、どうやって東の国に現れるのか知りません。
魔獣深森のようなオニの部族社会の話は、曖昧な噂さえありません(上位種のアシュラも同様です)。
多くの人はオニ(そしてアシュラ)の秘密の国が存在すると考え、そこから山奥や樹海、洞窟の深部へ、オニの国から未知の街道(又は地下通路)がつながっていると推測しています。
秘密の国の有力な候補地は、ひとつは東の国の遥か北方の、氷の大地の奥地。もうひとつは、地の底深くの未知の大空洞です。
さらに最近、創作作品とされる手記で、地底の未知の古代遺跡でアシュラやオーガが人形のように製造されていると発表されて話題になりました。
作家の空想と明言されていますが、迫真の描写に衝撃を受け、真剣に受け止めた者もいます。
♢ オニの刺青・『鬼紋』
東の国のオニの独自の技巧です。
オニのかたいからだに、玉石を研いだ針で鉱石顔料の墨を差し入れます。
部位と機能によって、ひとつは顔の黥面。もうひとつは胸と背、両腕(とくに拳)に入れる紋様に大別されます。
顔面はオニの地位、戦歴(倒した敵)を示すもので、自分自身や仲間(手下)のオニが施します。黒色の幾何学的な各種の線や点、方形が主です。
まだ若いオニは目の下に数本の線だけですが、多くの手下を持つボスの顔の刺青は複雑です。
あるボスオニは、倒した上位の蜘蛛魔獣になぞらえて、凶々しい蜘蛛脚を思わす刺青を顔から胸まで入れていました。
胸と背、腕の刺青は二種類あり、単なる装飾と、身体を強化増力する「機能」をもつものです。
後者は人間に「真のオニ刺青」「鬼紋」と呼ばれ、オニの経穴、経絡を刺激しながら筋肉や神経に沿って太く深く墨が差し入れられて、黒系や青系の線形、斑紋を回路図のように描きます。
効能は筋肉の異常発達、反射速度の増強、拳や腕の皮の擬似金属化などです。
人間の鬼紋研究者は、毒気などの正体不明の異能のオニは、特別な鬼紋持ちだったと考えています。さらにほかのオニや、下位種のコオニを従える覇気を宿すようです。
そのため鬼紋持ちのオニは、手練れのアシュラに匹敵する怪物とみなされています。
ただし、鬼紋の刺青のオニは滅多に現われず、正確な力量や鬼紋のメカニズムは詳しくわかっていません。
施術途中のオニが死ぬことがあり、一度仕上がっても、肌に露出した紋様が傷ついて急に力を無くしたり暴走するリスクもあるようです。
鬼紋の刺青は特定のオニ(たち)が継承し研究して、どれほど力のあるボスオニが望んでも、刺青師のオニの側から接触してこないと鬼紋を得られないようです。
一方、身体改造の鬼紋と異なり、魔法的効能のない装飾の刺青は、色数が多く、縞模様や複雑な線画などデザインも様々です。
大きく目立つように胸や背に描かれて、オニの戦意を高めてまわりを威圧します。
美術的にすぐれた刺青もあり、東の国のある旧家はオニの背から先祖が剥ぎ取ったとされる刺青(鬼皮)を代々家宝として継承しています。
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関連項目
△四腕オーガ(アシュラ)
△オーガ
△コオニ
◎ 鬼トーク plus α
Out with the devil!
______ In with good fortune!
【 鬼は外!__ 福は内!__】
_さぁ、豆まきだ! φ( ̄  ̄ ;K
____ __ _なに?節分… (⌒△ ⌒; P
K〉鬼は英語だと Devil。
P〉全文英訳⁉️ Out with …もり上がらないねッ!
悪魔を豆で追っ払う(… 軽!)
K〉豆まきは「豆」が「魔滅」に通じ、炒った豆を使うことは「射る」ことにつながるという説がある!
P〉? こじつけじゃないのそれ(個人的感想です)
K〉まぁ 豆=魔滅なら、日本のあちこちで魔よけで投げてそうなもんだけど、鬼に限らず。
でも、節分のほかとくに聞かないな。
P〉… 鬼に話をもどそうか。Ogre と訳すこともあるね。
K〉鬼の基本的性格のひとつは『人食い』だし、鬼= Ogre と当てるのはわかるけど(鬼が島は『the island of ogres』)。逆にいうと、人食い以外の似たところは何だろう。
むしろ、鬼=オーガと訳された後、日本の創作作品に角の生えたオーガが産まれたんじゃないか? ヨロイと刀剣の強者オーガーなんも、鬼を経由して、サムライの要素が混じった感じだし。
『鬼っぽい和風オーガ』。
今はもう、オーガは角付きが当たり前で、原型に違和感あるひとがいそう。そうなったのが、Ogreと鬼を対応させた訳で。そこから、なんとなくイメージが入り混じって、いつの間にか日本限定のオーガができてしまったなら………何だかもやっとする。
P〉もや?? 面白ければいーんじゃない(そんな今さら)。
K〉……………… 例えばなぁ。
ある時期、天狗みたいな鼻をした『ハナナガ・ハーピー』がゲームや漫画やアニメに登場して。みるみる、もとあったハーピーが置き換えられていって。
ハナナガ・ハーピーをハービーと、日本人が何の引っかかりもなしに呼ぶとしたら??
P〉その例えはひどすぎない?(うっかり、顔を想像したよ)
○○○○○
── 日本の伝承の鬼。
それは、古くは怨霊の化身、姿の定まらないモノノケの鬼が主でした。
『人食いで粗野残忍な、角あるいかつい大男』のイメージが確立したのは、十二世紀ごろのようです。
鬼は、絶対悪かといえばそうではありません。
西洋の悪魔 devil は人間を欺き、破滅させようとする悪、滅ぼされるべき・変わることのない大敵です。
しかし、日本の鬼は、降参するや否や人間世界に取り込まれて強い人間のしもべになったり、ときには福神になったりします。
逆の例もあり。有名な秋田のなまはげは、鬼と関係なかった来訪神・仮面の神が、近代化する中、鬼文化に取り込まれて「鬼面」に姿を変えたという説があります。
なまはげは言うまでもなく、相容れない絶対悪ではありません。
想像上の悪しき鬼の中には、激しい恨みや怒りで、人間が生きながらにして変ったものがいます。
平安時代末の『今昔物語集』には、女がひどく年老いただけで人食い鬼に変貌した話があり。その編者は、人の親は年をとると必ず鬼になって子を食おうとすると断言しました。
(『人の祖の年痛う老いたるは必ず鬼に成てかく子をも食はむと為る也りけり』)
また『付喪神』は、古ぼけた器物が捨てられて変化した存在です。
小人や、皿や楽器に手足が生えたコミカルな絵が知られますが………伝承の付喪神は人間のかたちや動物のかたちと共に、鬼のかたち(「魑魅悪鬼の相」)をとるものもいます。
つまり、古びた道具も鬼になるのです。
(オーガとかけ離れた特徴です)
鬼は、平安時代にひどく恐れられました。
しかし、人間の側の意識は変化してゆきます。
江戸時代、ときに文化は爛熟退廃の様相を呈し、人食い鬼を真面目に信じる者は減って。かわりに、怨みをいだいて死んだ人間の幽霊が恐怖されるようになります。
現在の日本でも同様です。人々が恐れウワサする超常的存在は、鬼ではなく人の怨霊や呪いです。
鬼は時代と共に、子どもの童話の悪役にされ。かくれんぼといった子どもの遊びにも言葉が使われました。
虎じまビキニの鬼娘がヒロインの、ドタバタラブコメディ漫画が大ヒットしたり(2019年4月時点で、累計発行部数は3000万部を突破 wiki)。節分のたび、マンガチックな笑顔の鬼のイラストが街にあふれます。
鬼をいろいろな要素と交わり、人々に親しまれるうちに、子ども騙しな『悪役』やマスコットのような存在になったようです。
トークの『鬼の角のオーガ』は鬼の復興復活。
『手垢の付いていない怪物』と融合させることで、日本の創作作品に「悪の鬼」を蘇らせた、ともとれます。
2021年初め現在、大ヒットの漫画・アニメ作品『鬼滅の刃』はさまざまな鬼が登場しますが、基本型は、鬼と『西洋の吸血鬼』の要素を融合させた存在です。
原型の作品は、鬼と吸血鬼と人間の三者のバトルだったと聞きます。
このような自由さは鬼ならでは、天狗や河童や化け狸にはない特性です。今後さらに、新しいタイプの鬼がエンタメ作品から生み出されるかも知れません。




