一四時限目『 ウェアバイソン__( 付記;牛神男と俳優 蟹江敬三 )』 【 バルーンアート写真付 】
ウェアバイソン
■種別:牛頭の亜人型魔獣
■主な出現地域:魔獣深森の浅いところ。人間の勢力圏の遺跡に突然あらわれたこともある。
(部族社会【未確認】) 魔獣深森の奥より
■出現数と頻度:単独 / ごくまれ
(部族社会【未確認】) 数十〜数百頭規模?
■サイズ:身長三メートル前後
■危険度:中〜大
■知能:人間なみ?
■人間への反応;非常に攻撃的
■登場エピソード:なし
■身体的特性とパワー
猛牛の頭の巨人の魔獣です。肉食で人間も餌食にします
タフで獰猛な戦闘狂で、頭に大きな湾曲した一対の角を生やしています。からだは鎧のようにかたい獣皮でおおわれ、太い筋肉ではち切れんばかりです。
途方も無い怪力と底無しの体力で知られます。おそろしい重さの武器を軽々とふるい、英雄クラスの人間でも、足を止めた真っ向からの武器戦闘は危険です。
ウェアバイソンの武器は人間を両断できるほどの大斧で、なかには片手持ちの斧を二つ、左右の手でふるう双斧、両手持ちの超重戦棍を使うものもいます。
彼らの武器は、ヒビやカケがあるように見えても良質です。
どこで手に入れて、普段どのように手入れしているかわかっておらず、ある賢者は、ウェアバイソンは生涯に一点だけ、固有魔法をつかって自分の専用武器を創造し、戦闘を重ねて成長させると主張しています。
ウェアバイソンは素手でも強く、鉄槌のような拳打や大きな蹄の蹴りで敵を屠ります。
大角と分厚い頭蓋骨は凶器そのもので、頭を下げ角の先を前に向けた突進(体当たり)は長槍隊の槍衾を突破し、騎士の『ランスチャージ』すらも破城槌の威力で撃ち破ります。
▷ 群れとはぐれ
ウェアバイソンは大きな群れ(部族社会)をつくり、魔獣深森の奥の方にくらすとされます。
しかし、古い書物に散見される半ば伝説のような話で、はっきり確認して報告した人間はいません。
人間が遭遇するウェアバイソンははぐれ個体です。
つねに単独生活で、ねぐらにするのは見通しが悪い岩場や薄暗い樹海の奥、大きな洞窟などです。古代文明の遺跡や古城、廃墟の町にもすみついた事例もあります。
入り組んだ環境を好み、ことさらねぐらの内外の壁や床を崩し、大石や丸太で余分な?大窓や出入り口をふさいでいた例もあります。
不思議なことに、はぐれ個体が宿無しで旅するすがたは目撃されません。人と遭遇するとき、ウェアバイソンは好みのねぐらを作り終えています。
▷ 獣化と人化
ライカンスロープ全体の特性として、変身能力が挙げられます。
もっとも、ウェアウルフやウェアキャットが完全に人間に変化したり、四つ足の猛獣になることはありません。大陸中央の人間社会で恐怖されるほどの劇的能力ではなく、戦闘時、獣頭人身の人相?や体格が凶悪化する程度です。
(異説あり)
ウェアバイソンは変化しないライカンスロープの代表種とされます。
出会うとき、つねに憤怒と憎悪に歪んだ顔で、死後も表情は解けず、解体ナイフの刃も通らないとされます。
歴史的に有名な魔獣学者や魔獣ハンターも、ウェアバイソンに穏やかなすがたは無いと語っています。
▷ 生贄の伝承
悪名高い誤った風聞に、獰猛なウェアバイソンを若い娘を差し出して鎮める「生贄」の話があります。
古くからある有名な英雄譚のエピソードで、物語は旅の英雄(幾つかの類話では教会の聖剣士)が登場し、怪物が討伐されることで生贄の悲劇は終わります。
今日まで、多くの学者や魔獣ハンターがこの話に反撥し、害悪、とさえ公言しています。
これまで、ゴブリンやオークなどの亜人型魔獣との交渉が成立し、人里への襲撃が回避されたことはありません。ライカンスロープも同様です。
猛り狂うウェアバイソンに、どんな人間がどうやって話しかけて条件を飲ませたのか。
ウェアバイソンが魔獣の性を押さえて、どうしてときおり「餌」を与えられた程度のことで、ほしいままに出来る獲物の群れを捕ることを我慢したのか。英雄譚は何も語りません。
(そのくせ、物語のウェアバイソンは知性の無い邪悪な怪物と描かれています)
問題は、後世、はぐれのウェアバイソンに実際に襲われた町や村が、女子供を本当に生贄に差し出したことでした。
猛威に怯えて、人気の高い英雄譚の逸話に半ば理性を無くしてすがった行為ですが、毎回、悲惨な結果に終わっています。ウェアバイソンを大人しくさせるどころか、生贄(と運び役の人々)がすみかに近づくことで凶暴な衝動を刺激し、人食いを経験させたり、運び役たちが逃げ帰ることで町や村の襲撃を誘発させています。
生贄の無意味さ、亜人型魔獣との交渉の愚かさは事件のたびに広められますが、人気の英雄譚は歌や劇で取り上げられ続け、大抵、次の事件が起きる頃に教訓は忘れられています。
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関連項目
△ 鉄本の牛魔・ミノタウロス
◎ 『 牛神男と俳優 蟹江敬三 』
牛頭人身の巨人といえばミノタウロスですが、本文記事は「ウェアバイソン」としています。
なぜなら、ミノタウロスとは「ミーノース王の牛」を指す言葉。ギリシャ神話の特定の個人についた通り名です【本名はちゃんと……詳しくは、丑年記念、後続記事の欄外特集で!!】。
ですので、牛頭種族の名をあえて和製欧風ファンタジーのセオリー?を外したものにしました。
▷「ウェアバイソン」
由来は「ウェアウルフ(狼男)」です。
ウェアウルフに関しては、今日世界に広まっている「ふつうの」狼男のイメージは、ミノタウロスに寄った狼頭の獣人です(二足で立ち上ります)。
…… しかし、神話伝承の狼男は、狼憑き(人間の姿のまま悪霊にとりつかれる)だったり、人間から魔性の狼(四足)に変わるもので、狼頭の獣人のイメージはエンターテイメント作品で広まりました。
「ユニバーサル・モンスターズ(ユニバーサル・ホラー)」と呼ばれる、ユニバーサル・スタジオ(米国)が製作していた主に1920年代から50年代のホラー映画・スリラー映画・SF映画はとくに影響がありました。
吸血鬼、フランケンシュタイン、ミイラ男、半魚人、透明人間はユニバーサル・モンスターズで実写化されて、そのイメージが定型になりました。
狼男も、映画「狼男(1941年)」がユニバーサル映画から第二次世界大戦の戦時下で公開されてヒットし、ホラーモンスターの代表的キャラクターのひとつになりました。
映画の中の狼男は、悲劇的に描かれました。人間が呪いによって人外に変わり。愛する人さえ殺しかねない凶暴性に苦しみ、破滅します。俳優の演技とメイキャップが人気を呼びました。
ーー ウェアバイソンという聞きなれない怪物と、狼男の映画の話は関係あるのか?
じつは過去、日本の子供向け人気番組で、狼男ならぬ「呪われた牛男」の変身譚が全国放送されていました。
蟹江敬三(故人)は知られざる「牛男」俳優です。
いろいろなジャンルのテレビドラマや映画、演劇、ナレーションに出演していますが、ウルトラマンシリーズにも参加し。ウルトラマンA(1972)の第16話「怪奇、牛神男」で、牛男への変身譚をKAぃ… もとい熱演しました。
ーー むかつくヒッピーの青年(蟹江)が屠殺された牛の供養の塚を荒らし、自業自得で、牛の怨念(600万頭超⁈)を負います。そこになぜかお坊さんに変装して地球の侵略者ヤプールが便乗し、青年はにわかに獣化(牛化)します。
朝、目覚めると頭にツノが生えていて。からだが獣毛におおわれ出し……
草を食べ、四つん這いになり。牛に呼ばれて会話してみるみる変貌!
(………… ここまで顔出し! )
ついに、牛頭で両手が蹄の怪奇な牛神男に!!
なんでも、ストーリーはいたずらな子供が変貌する当初案を、視聴する子どもたちが怖がるからと青年に変更ーー
しかし、蟹江敬三が狼男さながら牛頭の獣人にかわってみせ、当時の子どもは恐怖したとか?
牛神男はその後、牛頭怪獣(超獣)に巨大化して、ステーキを食べる人間を逆に食ったり。ウルトラマンAとも激突しますがーー
「イヤだよう、葉っぱがうまいなんてイヤだよう〜!」
「オレは人間なんだよう〜! 牛じゃないんだよう〜!」
…… 体をくねらせてなげく牛神男(蟹江敬三)、なりかけ!
今あるネットの紹介記事をみても、ヒーローのバトルより、まず蟹江のインパクトを讃える声が(笑)。
しかし実は、筆者にはビックリするくらいこの話の印象が薄く、そういえば??程度です。
ウルトラマンA「夏の怪奇シリーズ」の一編、「怪談・牛神男」。
ーー あるいは昔からチキンだったので、再放送であれなんであれ見ないで逃げ出していた可能性が。
いつか、なにかしら、見る機会が巡ってきたなら。しっかり視聴して、確かめてみようかと思います。
(急に忙しくならなければ)
_ _THE end ! φ( ̄  ̄ ;K _まさかまだ? (⌒ ⌒; P
* * 今回の記事に関連した短編 * *
ミノタウロスの憂鬱(作者・NOMAR)
_________ https://book1.adouzi.eu.org/n1114fa/




