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魔術師の杖【コミカライズ】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@『魔術師の杖』11月1日コミカライズ開始!
第十二章 移動要塞バハムート

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517.戦闘狂師弟

魔術師というのは好戦的で凶暴な職種らしいです。

 その後、ハルモニア号の航海は順調だった。ときどき万魔殿(パンデモニウム)状態になるものの、竜騎士レオと魔術師ローラでサクサクと片づけてしまうから、おかげで船の損傷も少なくて済む。


 しかもヤバそうなときは、わたしまで引っ張りだされて、船全体に三重防壁を張らされている。


「ひいいいぃ!」


 マストにしがみつくように……というよりも、ロープでくくりつけられるようにして固定し、ただ突っ立ってるだけですけど何か⁉


 わたしは防壁をばっちばちに張り、目の前でくりひろげられる激しい戦闘を、臨場感あふれる甲板から目撃しているのだけれど……。


「いぃやああぁ!こっちこないでえぇ!」


 半泣きである。クラーケンの血が青いなんて聞いてない。しかも船には防壁が張ってあるものだから、レオたちの暴れっぷりが凄まじい。


「強化式弐型魔法陣発動!」


 さすが前魔術師団長、ローラの敷く魔法陣はでかい!渦を巻くように魔素が術式の線を走っていく、その中央で白髪が光を帯びて輝いた。


「ローラさんっ!それ何ですかああぁっ!」


「あん?これは魔術のドーピングだね。魔素による波動のふり幅をでかくする」


「そ、それって……」


「お嬢ちゃんは防壁をしっかり張ってな。くるよ!」


「な、何がって……きゃあああぁ!」


 何が……と聞くヒマはなかった。魔法陣全体を縦横無尽に稲妻が駆け巡る。まばゆいばかりの閃光と火花が散り、雷鳴がとどろき爆風と突風が吹き荒れ、はじけ飛んだ魔物たちの欠片から、焦げた臭いが漂った。


 竜騎士レオが雷魔法を炸裂させたのだ。しかもローラの補助魔法陣で何倍にも強化されている。


 こんな状況でもわたしは防壁を張りっぱなしで、甲板に突っ立ってるだけである。だって何にもできないもん!


「すげ……衝撃すごかったのに、船には傷ひとつついてない」


 船員たちが感心する横で、ローラはカラカラと笑い、楽しげに魔法陣をくりだしていく。


「レオポルドもいい女と婚約したねぇ!船が壊れる心配がないから、もっと派手にブチかますよ!」


 そういう使いかたするんじゃないんだけどなぁ!


 レオもその気になって魔力を練りだすんじゃなーいっ!


「ひいいいぃ!」


 三度目の雷鳴がとどろいたところで、艦橋にいるユーリからエンツが飛んできた。


「お疲れ様です。半径五十キム以内の魔物は殲滅したようですよ。いったん休憩しましょう。ネリアにはホットココアも用意してありますからね」


「ホ、ホッドゴゴアがのびだいでずぅ~」


 泣きながら訴えたら、ローラがしゅぱっとわたしにメローネの秘法をかけた。


「ひえっ⁉」


 メロディ以上の速さにびっくりして、目をパチパチしていると、ローラはひとさし指でわたしのあごをくいっと持ちあげ、しげしげと眺める。金色に光る瞳は何だか猛禽類を思わせた。


「ななな何でしょうか、ローラさん」


「いや、この顔のせいかねぇ。あんたがベソかきながら悲鳴をあげるのを聞くと、何だか気分がいいんだよねぇ。スカッとするというか……」


「えええ⁉」


 ローラがバリバリの武闘派魔術師だということは、ユーリに聞かされるまで知らなかった。さすがレオポルドのお師匠様!


 そしてローラに見つめられているわたしは、蛇ににらまれたカエル状態だ。


「おかげで戦闘が楽しみでしかたないよ」


「た、楽しまないでください!」


 わたしの護衛騎士、護衛騎士は何やってんのよおぉ!


 助けを求めて思わずレオを目で探せば、彼は魔獣の残骸から、きっちり魔石や素材を回収している。


「これだけの魔石があれば、船の動力源としても役に立つだろう。リコリス女史がパラツァの毒袋をほしがっていた」


「パラツァって何?」


「これだ」


 レオが無造作に取りだしたそれは、どうみてもゼリーに包まれてうごめく、むきだしの内臓で……。


「いぃやああぁっ!」


 気が遠くなりかけたわたしはほっといて、ローラがクラーケンの残骸から、ころんと魔石らしき塊を蹴りだす。


「クラーケンの魔石はどうするんだい?」


「護符に仕立てて、彼女につけさせてもいいが……」


 彼がちらりとこっちを見たので、わたしはぶんぶんと首を横に振った。


 思い出がね、思い出がよみがえるの。クラーケンの全身が千切れて、青い血しぶきがドパーッって……そんな護符、身につけられるかあぁ!


 レオは首をかしげて淡々とつぶやく。


「海は慣れれば、素材稼ぎにとてもいい。錬金術師団長ならもっと喜ぶかと思ったのだが……」


「素材稼ぎが激しすぎるんだもの」


 マウナカイアの人魚たちはもっとのんびり、採掘してたもん。


「まぁ、あたしたち魔術師が遠征にでられる期間は限られているからねぇ。どうしたって効率優先で、根こそぎってパターンが多いよね」


「はぁ」


「その恩恵をあんたたちも受けているんじゃないか。防壁のおかげで助かっているし、感謝しているよ」


 たしかに素材はありがたい。ありがたいんだけど……レオもローラもめっちゃ生き生きしているというか、こいつらマジで戦闘狂だよ!

イカやタコの血はヘモシアニンのため青いのです。クラーケンもきっと青。

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