表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜  作者: ルド
第5章 弟子の魔法使いは世界を彼らと共に守り抜く(掟破りの主人公大集結編!!)。
85/103

第77話 異変は記憶の中と謎の騎士(弟子は選択肢で悩む)。

 ──あの時、俺はどうやって魔神を退けた?

 記憶が確かであれば出せる魔力、気力、チート技も出し尽くしてあとは負けるだけだった。

 だけど結末は全くの逆で倒したのか勝利したかも不明であるが、魔神を退けて気付いたらマドカに寝かされていた。……マドカは何も知らないと言ったが、それから度々肉体や魔力に異常が無いかチェックをさせられた。


 俺自身も何も覚えていない。そもそも魔力と気力が枯渇して意識も途切れる寸前の状態だった。覚えてなくて当然だ。

 ……だけど微かに残っている。そんな気がしたのは、しばらくしてからである。


 朧げな夢を何度も見ている気がした。

 無意識領域の話なので確信は何もなく『瞑想(ヴィジョン)』によるスキル効果でもないようだ。


 ただそう思って、ある時ふと思い出そうとした事があった。

 けど何も思い出す事はなく、時々出てくるモヤばかりの記憶をぼんやりと眺めているだけ。

 会話も何があったかも分からない。けどその時の夢を見ている。そう思った理由は──。



【契約二従イ一部解放シタ……次ハモット美味イゴ馳走ヲ期待シテルゾ───オレノ後継者(・・・・・・)



 マドカには何も言わなかった。

 ただの夢だと思いたかったわけじゃないが、言ってもどうしようもないと感じたからだ。

 決して抗えない運命。その道は修業時代から既に踏み込んでいる。師匠たちの一部まで喰っている以上……そうなってしまうのは、もはや確定事項であった。




「また会えたね〜龍崎刃くん」

「やっぱり生きていたのか、魔神……!」


 奴を目にした途端、鼓動が高くなった。──また来たかオレの喰いモノ。


 全身の血管、神経、魔力器官が煮え滾っているようだ。──さぁ、オレを解放しろ。


 魔力が燃え上がり、全身の気も昂って制御から外れそうだ。──遠慮するな、喰わせろ。


 視線が外せなくなる。呼吸が落ち着かなくなり、意識が徐々に──喰ワせろ喰わセろ喰わセロ……喰ワセロ(・・・・)


「刃、落ち着け」

「──っ」


 零さんに言われてハッと意識が元の状態に戻った。……今何を考えていた?

 魔神を睨んでいたら急に意識がおかしくなって……何に飢えた? もしかして知らないうちに何かとんでもないミスでもしたか?


「アレが敵の頭なんだろ? 何があったか知らないが、切り替えろ」

「……分かってます」


 そう、分かっている筈だ。筈なんだ。

 なのに嫌に鼓動が早くて強い。全身から魔力、気力に至るまで本気に近い質に上がっている。

 ……無意識に警戒している。あっちも同じか、余裕そうな笑みを浮かべているが、《《あの時より》》距離を感じた。


「……正直に言いますが、前戦った際どう追い払ったか覚えてないんです」


 一応伝えておこう。意味があるか怪しいが。


「どんな能力を使う?」

「基本的な魔法です。分かり易く言うと悪者が使いそうな攻撃。と魔物を使役したり強化させて魔物同士の融合や蘇生も出来るようです。自身との一体化もしたのでとにかく魔物が出して来たら警戒が必要です」

「魔物を蘇生、あと強化に融合か……」


 零さんの視線が魔神から移る。俺が倒したスモアというゴブリンの残骸。零さんが倒した種族は不明だが、赤い老人魔法使いのツファーム。エラというダークエルフの残骸らしきモノは燃えたままだが、それぞれに視線を送ると零さんは俺をジッと見る。そして槍を作り出して片手で持つと。


「単独の今を狙うのがいいか」

「え、ちょっ」


 見向きもしない躊躇わず投げた。また雷を帯びて稲妻のような動きで魔神の彼女へ迫る。容赦ないな。

 だが、魔神もなんでもない様子で雷の槍を今度は手のひらで弾く。防御に回した暗黒の魔力が漏れ出ているのが分かる。


「この程度の不意打ちじゃ無理か」

「いきなりだねぇー? 死神くん?」

「頑丈だな。仮にも神と呼ばれるだけはあるか」

「仮でもなく神だけど?」

()神だろ? 情けなく地に堕ちた神の面汚し」


 会話しながら冷静に分析している。かなり毒が混じっているが、零さんにとっては初見だからな。魔神の事もどこまで知っているか。警戒しているようだが、何考えているか顔だけじゃ分からない。


「君みたいな処刑人気取りが一体何を知ってるかな?」


 魔神の方は零さんの事を知っているようだが、仮とか元とか言われた辺りから雰囲気に剣呑が宿って笑っていた瞳にも殺意も満ちていた。


「邪魔するなら排除する」

「それを言うならボクもさ。邪魔しないでくれないか? 消しちゃうよ?」

「やってみろ」


 ドンッと零さんの足場が彼のジャンプ力で砕けた。空中で浮いている魔神の間合いまで接近した。


「オレがやる。お前たちは先に行け」

「零さん!」


 声を掛けて呼び止めようとするが、零さんは止まる気配を見せず黒雷を纏った蹴りを放つ。


「貴様らの危険度は理解しているつもりだ」

「ボクも知ってるよ? 君の危険度は」


 魔神は片足を出して容易く受け止める。連続で繰り出される蹴りを全て弾いて、指先を零さんに向けると指先から暗黒の弾丸が飛ぶ。頭部を狙った一撃だ。


「風穴開くよ」

「どうかな?」


 しかし、空中で零さんが消える。否、黒雷となって瞬間的に雷速移動を行なって躱した。背後へ回って鋭い手刀が魔神の頬を当たる。


「甘いな」

「君が?」

「──っ」


 だが、衝撃を流すように体を回転した魔神。回転を活かした蹴りが零さんを襲う。腕でガードする零さんだが、暗黒のオーラが腕の部分の鎧を破壊。衝撃を殺せず今度は零さんが吹き飛ばされてそれを追う魔神。


「君一人でボクを倒せると? 考えが甘過ぎるじゃな───ッッ!?」


 そして頭を掴んでもう片方の手で彼の喉元を貫こうと───したが、寸前で手を離して頭も下げた。



 トオルさんが引き抜いた刀の一閃。魔神の首を狙っていた一撃が空を斬った。



「チッ、外したか。やっぱ楽にはいかねぇか」

「魔導神の守護者かぁー。随分と礼儀のない挨拶だねぇー?」

「礼儀が必要な奴にはちゃんとするぜ? お前らは論外だろ?」


 ──剣導王のトオル・ミヤモト。

 師匠の世界では最強の剣士と言われた『無双』のお姉さんの弟子で、ミヤモト流だけでなくそのお姉さんの剣技も吸収して『剣の王』と呼ばれている怪物。


 師匠曰く、剣だけならトオルさんは世界どころか神にも匹敵する。


「活躍が少ないんだ! その首を寄越しな魔神!」

「どっちでもいいが、足引っ張ったら承知しないぞ?」

「滅茶苦茶な男だね!?」


 零さんとトオルさんが魔神と対峙する。

 零さんが剣を作り出す。雷を纏わせてトオルさんに続いた。


「零さん、トオルさっ……!」


 俺も応戦する為に飛ぼうとしたが、闇が混じった黄金の雷が落ちた。


「なんだ!?」

「ジン! ッ……お前は!」


 慌てて踏み留まる。ヴィットも駆け付けてくれたが、雷の中から出て来た異形を見て嫌そうに息を吐いた。


「ハァ、神の守護獣がこうなると見る影もないな。──シャドウ(・・・・)!」

『女神共から聞いたか。その名で呼ぶな四神使い!』

「子分がやられたから敵討ちに来たか!」


 まさか知り合いなのか、探るような目で尋ねるヴィット。その右手は太陽の炎。

 苛立った黄金の怪物──シャドウと呼ばれた元守護獣の魔王は闇が混じった金色の炎を発生させる。


『我が配下達は不死身だ。我が直々に来たのは鬱陶しい害虫を自ら消し去る為だ!』

「はっ、そうかよ!」


 お互いの拳が激突。同時に互いの炎が膨れ上がり巨大な爆炎を起こした。

 魔王相手に一歩も退く様子がないが、いくら精霊の力が使えるからってサシで勝てるかどうか。


「けど魔神の方も無視できない。トオルさんもいるが、加勢するなら──ッ」


 どちらに向かうか、というところでまた気配が増える。殺気はない無機質なものだ。


「次から次に……また増援か。今度は何処族だ?」

『……』


 感じ取った方向へ振り返るとそこには白い甲冑を着た騎士が一人。

 よくありそうな西洋風のモデル。剣と盾を持ってまるで置き物のように立っていた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ