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神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜  作者: ルド
第4章 弟子の魔法使いは試験よりも魔神と一騎討ち(でも試験荒らしてトップを蹴落とす)
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第54話 侵入者と最下層(弟子は邪魔者であった)。

 試験最終日の翌朝、まだ起床に早い六時頃。

 第一層の入り口前で、三人の人物が待機していた。


「そろそろ行く。長谷川教員、開けてくれるか?」

「かしこまりました」


 スーツ姿の男の指示に従い、戦術クラスの担任の長谷川は入り口の門を開ける。

 本来なら入り口前に警備する者たちが立っている筈だが、教員と男の指示によって一時的に外れて貰っている。

 警備の者はトイレ休憩としてほんの数分だけ留守にする。それだけで大金が貰えるので、口止めも簡単であった。


 ただし、こうしてお膳立てがしっかり出来ている筈なのに、男の表情には苛立ちの色が強く含まれていた。


「付いて来るのは貴方だけか? 我々が誰か分かっていての対応か?」


 我々と言って自分と、そして並んでいる少女を見て長谷川に問いかける。

 こうして時間自体が守られているのに、何故頼んでいた人員が用意されてないのか。


「言った筈だ。拘束はしてあるが、彼を侮るなと。すんなり済めば問題ないが、もし暴れたら面倒なんだぞ」


 事前に中からの情報で欠陥品である筈の龍崎刃の危険度は、もう十分過ぎる程伝わっていた。

 それを踏まえて学園側には拘束要員を出すように頼んでいたが、まさかの一人だけ。これでは不満を隠すなど無理な話なのだが……。


「言っておきますが、これでも学園としてはギリギリの対応なんですよ」


 学園側が学園側として訴えに対する返答を用意していた。

 失礼のないように事前に言われていたが、その後の要求には忠告していた面々も流石に無茶だと結論。長谷川にその件に関しては、どうあっても無理だと伝えるように指示していた。


「そちらの要望は彼を学園から排除する事。それは我々と共通認識なので、用意して頂いた姫門の生徒方には感謝しております。ですが、それを彼に退けられた事で他の担当教員から不信感を持たれてしまった」

 

 監視とまでは言わないが、姫門件を学園の方へ問い合わせた教員も出ている。

 なんとか誤魔化しているが、それが一人の男子生徒のために用意した戦力だと、万が一にでも気付いたら抗議どころでは済まされない。


「今回の試験には多くのイレギュラーを起こしてます。その所為で臨時で来ている三年の教員たちや私にまで疑いの眼差しを向けている教員がいます。最初はただの違和感だったでしょうが、六日目の騒動でそれが色濃くなっています」

 

 それと何故か知らないが、姫門の生徒たちが時間前に動いて一人の生徒を襲撃した。という話が漏れてしまっている。

 襲撃したと言うのは流石にデマだろうと考える者が多いが、時間前に姿が見えなかったのは事実。それもあって担当していた自分や一部の三年教員に対する疑いの目が強くなってしまった。


「これでは手を貸したくても貸せません。動くのであれば最低限の便宜はしますが、我々にも限界がある事をご承知いただきたい」

「……」


 と言われては流石の男も黙るしかなかった。

 ここで文句を言って無理を通す事も出来るが、そんな事をすれば確実に龍門学園との協力が切れると理解したからだ。

 向こうだってリスクは最低限が望ましい。いくら神崎家に縁のある白坂家の次男の要請で、神崎家の娘から戦力要員が用意されても、このまま無茶をすれば教員側の未来まで危うくなる。いや、既になりかけていた。


 確かに龍崎刃という生徒は、彼らにとっても異物的な存在かもしれない。排除出来るからそれが望ましい。

 だが、それは学園の安定と平穏を思うからであって、自分達の未来まで天秤に賭ける覚悟など彼らにある筈がなかった。


「大丈夫ですよ、隆二さん」

「っ、緋奈君」


 徐々に雲行きが怪しくなる会話を聞いて、それまで黙していた神崎緋奈が口を開く。

 背中に差してある剣の袋を触りながら、苛立った隆二に向かって笑みを見せる。


「兄さんは───私が倒します」

「……決心は変わらない、という事で良いんだな? もしバレたらいくら君でも立場を失うのは確実だぞ?」

「だからこそ本気で行きます。放って置いたら離れいくだけなら、私は私の望みの為にあの人を取り戻します」


 女性でありながら神崎家の後継者。

 神童とまで呼ばれた彼女が遂に自ら動き出した。




 そして白坂隆二は付き添いの長谷川のタッチパネルを見ながら最下層を移動する。

 関係者のみが使用可能な転移の魔法陣を通じて、最下層まで一気に降るとそこはマグマのように危険な真っ赤な川が流れる。


 夕焼けのように燃えるような景色。赤い岩と土、そして山もある『セキリュウの間』。このダンジョンのボスが眠る場所だ。


「まだ着かないのか?」

「お待ちを。二人の発信はこの地点周辺です。最下層なので少々時間を掛けましたが……」


 入り口から二十分ほど移動する。そうして彼らは目的の場所に辿り着いた。


「来たか」

「電話でしか話してないが……でかくなったな。尊君」

「時間よりも遅かったな。……神崎緋奈はいないのか?」


 一面が赤き世界で隆二は、肩に金の鳳凰を乗せる四条尊と対面する。

 教員も一緒にいるが、僅かに一瞥しただけで興味を失う。下手したら隆二以上に厄介な緋奈の存在を確認する。


「彼女は慎重なんだ。藤原に話があるらしく彼女のところで待機してる」

「藤原も来てるのか……あの臆病者が」


 ──臆病者。それが尊の中での藤原輝夜の評価であった。

 小者でも手下に囲われてないと安心して能力を発揮できない弱虫。

 たとえ知能が高かろうと肝心の覚悟を見誤っている小娘。


「随分と言うな? クラスメイトなんだろ?」

「クラスメイトだからこそ恥ずかしいんだ。コソコソと……教室が一緒の所為で毎回会うからストレスだ」

「緋奈君に似ってるからか? 前にも言ったが、彼女の……いや、彼女たちの選択は決して間違いでは──」

「くだらねぇ話をしに来たんじゃねぇだろ? そろそろコイツを引き取れよ。いい加減うざっテェんだ」


 これ以上聞きたくなかった尊が隆二の話を打ち切る。

 クイと下に転がっている存在へ顔を向ける。釣られるように二人の視線もそちらに移ると、これまで黙って鎖で縛られた彼──龍崎刃が上体を無理に起こした。

 

「油断したな。龍崎」

「ッ……クソが」


 鼻で笑う隆二を睨みつける刃。

 今すぐ殴りかかりたい。だが、縛られた所為で身動きがロクに取れない。


「フッ、まさかこうも簡単にいくとはな。やっぱりお前に頼んで正解だった。なぁ? 尊よ」

「ミ、ミコ、何故だ? 何故お前が……!」

「ジン……悪りぃ。家の為なんだ」


 必死に顔を上げて問い掛けるが、視線に耐え切れなくなった尊が視線を逸らす。

 申し訳なさそうな顔で謝罪すると……。


「頼むジン。オレたちの前から消えてくれ」


 悲痛の顔を消して、敵を見るような冷たい表情で親友を見下ろした。


 やっとヤバ目な仕事の波を超えて落ち着くと思ったんですが、また別の新しい仕事を押し付けられて……現在軽くうつ気味に突入中。筋肉痛もありますが(笑笑)。

 この章にもほぼ終盤なのでこれからも頑張りたいです。

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