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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第四章 ニザ公国編
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第九十七話  たねあかし②

「ところでコンシディー様。貴女様の母上様、すなわち、ドワーフ王のお妃さまはいかがされましたか?」


「母上は・・・3年前に亡くなりました」


「レコルナイたちが現れてすぐに、お亡くなりになったのではないですか?」


「そ、それは偶然というものです」


「お妃さまはある時、体調を崩された。色々な回復魔法や薬を試してみたが、なかなか回復しない。そこにレコルナイが薬を持ってきた。試しに飲んでみると、嘘のように体調がよくなった。違いますか?」


「・・・」


「しかし、しばらくするとまた体調が悪くなる。そしてレコルナイが薬を持ってくる。治る。しかし、しばらくするとまた体調が悪くなる。その繰り返しだったのではないですか?」


「も、元々母上は体調が・・・」


「真実を言えば、その薬は身体の病を増幅させる薬です。しかも、一定期間、痛みや苦しみを感じない麻痺の効能の付いた毒薬です」


「バーサーム様!」


「お妃さまは、最終的にどのような病で亡くなられたのですか?」


「そ、それは・・・」


「妃は、ティヤカは、体のあちこちから病を発して、手の施しようがなかった」


「父上!」


「国王様、コンシディー様、一般的にドワーフの寿命はどのくらいでしょうか?」


「大体、200年は生きる」


「レコルナイたちの目的は、ドワーフ族の壊滅です。一度に多くのドワーフを葬るのは、毒を用いることが効果的です。しかし、ドワーフの寿命は長い。つまりそれだけ生命力が強いということです。そこでレコルナイは、お妃さまを利用した。何らかの方法でお妃さまに薬を与えて病を得させる。そして、回復薬と偽って毒薬を与える。そうやって毒の効能を確かめていたのです。言ってみればお妃さまは、実験台にされたのです」


「そんな、バカな・・・」


「しかもドワーフは女性の方が長生きすると聞きます。お妃さまに効く毒ならば、全てのドワーフに効くものと考えてよいでしょう」


コンシディー公女は茫然としている。そして震える手で、懐の中から大切そうに梱包された紙包みを取り出した。開けてみるとそれは、いくつかの黒い丸薬が出てきた。


「まさか、博士とウトニカさんがくれたこの薬が、母上を殺した毒薬・・・?」


「ええ、間違いないと思います」


「おそらく、お妃さまを看病していたのはウトニカだったのでしょう。彼女は看病するふりをして、お妃さまの毒の効果を観察していたのです。それを知らないお妃さまは、ウトニカを毎日のように労い、感謝の言葉をかけていました。しかし、ヤツは心の中で笑っていたのです」


「まさか・・・」


「ヤツらの作った毒薬の最終実験として選ばれたのが、コンシディー様です。幸い公女は他の王族たちのように原因不明の病を発病していなかった。若い女性のドワーフがすぐに病に倒れ、亡くなれば、ヤツらの毒薬は完成だったのです。他のドワーフは間違いなく殺せますから。ですから、森の中でユニコーンに襲われた時、公女は胸ではなく、太ももを刺されました。ヤツらはおそらく、すぐに傷を治癒した後、化膿止めとか何とか言って、公女に薬を飲ませるつもりだったのです」


「うそ・・・うそよ・・・」


「お気持ちはよくわかります。しかし、事実です。おそらく納得は行かないと思います。ですからここで、一つ実験をしたいと思います」


俺はフェリスに命じてレコルナイの部下の一人を転移させて来させる。いきなり人が消えたかと思えば、しばらくして黒ウサギの獣人を連れて現れたので、王も公女も驚きを隠せないでいる。


「ご無礼をお許しください。これはポーセハイたちが使う転移術です。術式が分かれば簡単に使用できます。コンシディー様も、これで転移させました」


帝都の屋敷で、貧血で倒れる寸前だった公女を一旦魔法で眠らせて、その隙にニザまで転移したのだ。


「目が覚めたら王宮に居たのは、そういうことだったのですか・・・」


「さてコンシディー様。この黒ウサギに見覚えはありますか?」


「この方は、レコルナイ博士の下で研究をしていたリハンメルさん・・・」


「さて、リハンメルよ。お前は顔色が悪そうだ。何か病気ではないかと俺は思っている。この話をしたところ、コンシディー公女がお前に薬をお与えになるそうだ。ありがたくお受けしろ。コンシディー様、先ほどの薬を、この者にお与えください」


公女は黒い丸薬を取り出し、リハンメルに渡す。薬を見た瞬間リハンメルの体が一瞬動いた。そして、薬を与えるコンシディー公女の手も震えている。


「今すぐここで飲め」


「そ・・・それは・・・。私は病気ではないからして・・・」


「これは毒薬なのか?」


「ち、違う!決して毒などでは・・・」


「じゃあ飲めるだろう。副作用を起こすのであれば俺が回復魔法で治癒してやる。飲め」


「ううう・・・」


「飲め!」


男の手から薬を奪い取り、無理やり口の中に押し込む。


「うわー!ぐわー!いやだぁ!」


即座に男は薬を吐き出した。


「本当に、毒薬・・・なの?」


俺は吐き出された丸薬を布で丁寧に包む。


「念のため、妻に鑑定させます。メイ、この薬を調べてくれ。どなたかドワーフの方にも立ち会ってもらった方がいいかもしれませんね」


「この薬、調べてみます」


「頼んだぞ」


ドワーフ王は目を閉じたままじっと天井を見ている。コンシディー公女は茫然自失となっている。


「愚かな話だ。妻を殺した者たちを召し抱え、挙句に娘まで殺されそうになっていたとは・・・フッ、フフフフフ・・・」


ドワーフ王の乾いた笑い声が部屋にこだまする。そして、その声はいつしか、泣き声に変わっていた。



その後、コンシディー公女が持っていた薬は、メイによって毒薬と証明された。ちょうど戻ってきたユーリー宰相立会いの下、たまたま地下牢に閉じ込められている盗賊に薬を与えたところ、たちどころに絶命したのだ。


森の中、俺の結界で拘束されていたポーセハイたちは、メイが実験をしている間に全員が拘束された。約40名のポーセハイ一人一人に、転移術と思念が使えない結界を張るのは少々骨が折れた。その上で、自爆スキルを持っている奴については全員、そのスキルを奪っておいた。


メイの薬のおかげで、毒に侵されていた王族たちは全員、無事に毒状態から脱した。コンシディー公女も薬を飲み、毒物を全て吐き出したそうだが、あの時以来、彼女は俺たちの前に姿を見せない。鹿神様もあの後すぐに森の結界に帰ってしまった。しかし、俺たちにはいつでも会ってくれるそうである。時間が出来たら、お供えをもってあの大木に伺うとしよう。


メイには、ポーセハイの毒実験の直後から川の水の調査をしてもらったところ、かなり汚染されている状態であることがわかった。ドワーフ王はすぐに川の水の使用禁止令を出した。


メイはすぐさま、その川の水を解毒する薬品を作り上げた。メイ曰く、水質はすぐに改善されることはないが、毒物だけは中和しているとのこと。あとは自然に川が浄化されるのを待つしかないのだという。


その後、ドワーフ王の体調が小康を得て、ようやく顔色も赤黒い色から、やや青みがかってはいるものの、通常の顔色に戻ってきた頃に、これからの対策を本格的に話し合っていった。


一番の問題は、土壌汚染であった。クルムファルの如く、土に雨水を染み渡らせて汚染物質を取り除くことも検討したのだが、この毒はそんなに簡単ではないらしい。メイがいろいろと調査をしてくれた結果、二つの対策を行うことになった。


一つ目が、これまで農作地として使用してきた土地については、メイとフェアリが協力して行うこととなった。


何とフェアリの羽から生み出される粉が、耕作地の毒物を中和することがわかったのだ。屋敷で俺とメイが話をしている時、フェアリが「こんな感じのこなですかー?」と言って、羽をパタパタと動かし、粉を落としてくれた。メイが調べると、毒物を中和する成分であることが確認された。彼女の偉い所は、その粉がさらに効果が発揮できるよう薬品を開発してしまうところだ。


元々の農作地は汚染状態が軽かったため、メイとフェアリで何とかなりそうなのだが、問題は新しく開墾された農作地だ。


ここの汚染状態は酷く、それは王宮内の畑も同じであった。王宮内についてはすぐさま耕作を廃棄し、何らかの建物が建設される予定なのだという。残る広大な耕作地であるが、これについては力技で解決することにした。


つまり、元あった土地の上に盛り土をし、汚染された土地を土の中に閉じ込めてしまおうという戦略だ。幸いにしてニザは山国である。山の斜面を切り崩し、その土を利用して盛り土にするのだ。俺の土魔法を使用しつつ、ドワーフや他の冒険者たちも雇いながら進めていく段取りになった。今後予想される食糧不足はヒーデータ帝国が中心となって支援することになり、何とかニザ公国は復興の見通しを立てることができた。


とはいえ、俺もメイもまだまだニザから離れられそうもない。毎日屋敷から転移して王宮や現場に通う日々が続いている。ちなみに、俺の転移術については、ドワーフ王、コンシディー公女、ユーリー宰相しか知らない。まあ実は、俺の転移結界を使って移動しているのであるが、とりあえず今は秘密にしてもらっている。彼らとしてもいたずらに世間を騒がせたくないのだろう。


俺たちが初めてニザを訪れてから、二か月が過ぎようとしていた。ようやく復興計画もある程度決まり、これから本格的に取り組んでいこうとした矢先に、俺はメイと共にドワーフ王の下に呼ばれた。


「ドワーフ王、お加減はいかがですか?」


「うむ。まだ立てぬが、気分は以前とは比較にならぬくらいよい」


「それはよろしゅうございました。で、ご用とは何でしょう?俺もドワーフ王にお願いがありますので、ちょうどよかったです」


「ほう、儂の用事など、ただのお願いのようなものだ。さして重要ではない。バーサーム侯爵のお願いの方がはるかに重要だ。何なりと言ってくれ」


「すみません、非常に言いにくいのですが・・・」


「遠慮することはない。何なりと言ってくれ。儂に出来ることであれば、協力は惜しまん」


力強い言葉を聞いて俺は気持ちを新たにする。そして、深呼吸をして、意を決してドワーフ王を真っすぐ見つめる。


「お願いというのは他でもありません。捕らえられている40名のポーセハイ、あれらを私の配下としてお譲りいただけませんか?」


初夏の蒸し暑さを忘れるくらいの張り詰めた空気感が、ドワーフ王の部屋に満ちていく。

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