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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第三章 クルムファル編
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第八十四話  この子、ウチのペットにします!

リコたちがにらみ合っている間に、帝都からフェリスを連れてくる。フェリスはフェアリードラゴンを見るとギョッとした顔をした。


「こんな色鮮やかで、色彩豊かな羽を持つフェアリードラゴンは初めて見ました」


「そんなに羽が大事なのか?」


「フェアリードラゴンは、羽の色どりが多ければ多いほど多才なのです。この子はかなりの才能持ちのようです」


「この子に会った時、片方の羽がなかったんだ。それに、角も無くなっていたんだ」


「おかしいですね?我々ドラゴンにとって羽と角は命のようなものです。それが取れるなど・・・余程の魔物に遭ったのかもしれません。聞いてみますね」


フェリスがじっとフェアリードラゴンを凝視する。どうやら念話で会話しているようだ。フェリスの顔がどんどん険しくなる。


「バッカじゃないのアンタ!バカも休み休み言いなさいよ!」


いきなり激高したかと思いきや、フェアリードラゴンの角を掴んでブンブン振り回し始めた。ドラゴンは、あきゃーあきゃーと悲鳴を上げている。


「フェリス、そこまで!」


俺の声を聞いてフェリスは動きを止める。そしてドラゴンをポンとテーブルの上に投げ出し、再びドラゴンを凝視し、そして、ニヤリと笑う。なぜかイトラはめちゃ喜んでいる。


「きゅお!・・・きゅあー、きゅあー、きゅゅゅあー」


ドラゴンは頭を抱えて泣き出してしまった。おい、フェリス、お前一体何を言ったんだ?


「大丈夫です。ちょっとお灸をすえただけです。この子の話?ああ、聞かなくても大丈夫です。すっごく下らない話です」


「きゅあ、きゅきゅきゅ、きゅきゅきゅきゅきゅ?きゅきゅーきゅ、きゅーきゅー」


何やら必死に俺に訴えかけているが、あいにく彼女の話は俺にはわからない。


「フェリス、このドラゴンは一体なんと言っていたのですの?」


リコからナイスなフォローが入る。


「あー。すっごく下らない話です。まあ、リコ姉さまには一応お伝えしておきますね」


リコとフェリスが見つめ合っている。そして少しずつリコの顔が強張っていく。


「・・・リノスに言う必要はありませんわ。バカバカしい」


「でしょ?」


「きゅうー」


ドラゴンは羽がペタンとなり、ガックリと肩を落としている。なんだか、胸が締め付けられる。


「リノスさん、このドラゴンどうしますか?」


「どうするって・・・何がだ?」


「ステーキにするか、燻製にするか・・・シチューでもいいですけど」


「え!食べるのか?てゆうかお前もドラゴンだろ?共食いにならないのか?」


「同胞ではないので、共食いにはなりません。むしろ、私にとっては、エサにしてもいいくらいです」


「あぎゃっ!ぎゃっ!きゅあー」


何だかフェアリードラゴンが怒っている。フェリスはフッと息をつき、


「まだわからないようね。だからダメなのよ」


そういうとフェリスはフェアリードラゴンの角を持ち、外に放り出した。さすがにドラゴンだけあって、背中の羽を駆使して浮かび上がり、地面との激突は避けていた。フェリスは外に向かいながら服を一枚、また一枚と脱ぎだし、全裸になった。そして、フェアリードラゴンの前まで行くと人化を解除した。


「きゃあー、きゅあああああああああ!!!!!」


クルルカンになったフェリスを見て、フェアリードラゴンは大声で叫び声を上げた。その瞬間、俺の胸が重くなり、気が付くとフェアリードラゴンがそこにいた。凄まじい速さだ。ドラゴンは俺の胸に顔をうずめて震えている。おお、なんと愛おしい。俺はドラゴンをギュッと抱きしめる。


「リノス、あんまり甘やかさない方が、よろしくてよ?」


リコが呆れたような顔をしている。


「俺には全く事情がわからん。ただ、このドラゴンが可哀想に見えてならん」


「きゅー」


一体何でこうなるのか?取りあえず、俺はこのフェアリードラゴンを鑑定してみる。


حب الملوك(フェアリードラゴン・7歳) LV10

HP:89

MP:874

風魔法  LV1

回復魔法 LV1

MP回復  LV3

気配探知 LV3

魔力探知 LV3

肉体強化 LV1

竜魔法  LV1

飛行   LV5

精製   LV4

隠密行動 LV4


疾風迅雷


疾風迅雷・・・飛行LV5


何か名前がついているが、文字が読めない。これはどういうことだろうか。それにしても、わずか7歳でこのスキル。MPが異常だ。それに飛行スキルがカンストされていて、なるほど、この素早さもうなずける。


ただ、このドラゴンと会話が成り立たなければ、どうしようもない。


「おいフェリス、念話ってどうやるんだ?」


「どうって・・・ただ頭の中で相手に話しかけるだけです。『リノスさん、リノスさーん』みたいな」


頭の中でフェリスに向かって話しかけてみる。全く反応がない。確か、念話は龍魔法と言っていたな。魔法というからには、魔力を使う。ということは、魔力に乗せて言葉を伝えているのか?とりあえず魔力をフェリスに向け、念じてみる。念じてみる。念じてみる。


『フェリスのお尻に毛が生えてるぞ』


「ええっ!うそ?」


・・・成功してしまったようだ。フェリスは念話だということに気が付かず、リコにお尻を向け、確認してもらっている。今のうちに確認してみよう。


『おーい、フェアリードラゴン、聞こえるか?』


『え?そのこえは?もしかして?』


『ああ、俺だよ。リノスという』


『リノス・・・わたしはシンジョ』


『シンジョ?』


『うん、かみさまからのつかいだっていわれてたのー』


『かみさま?』


『うん。おおきくなったらかみさまにつかえないといけないんだって』


『そんなドラゴンがなんであんな所にいたんだ?』


『うーんと、まいにちおべんきょうばっかりでつかれちゃってー。あそびにきたの』


『家には帰らないのか?』


『うーん、かえりたくないのー。それでおなかがすいたからたべものをさがしてたらすごくおいしいみずとおはなのあるとこがあったから、そこにいたの』


『じゃあなんであんな怪我してたんだ?』


『おうちをでるときにけがをしたのー。だからうまくとべないし、たいへんだったのー』


神様に仕えるために教育されたドラゴンか・・・。何だか厄介ごとの匂いがするな。


「おい、フェリス!このドラゴン神様の使いって言ってるぞ?」


「あーわかっちゃいましたか。・・・って、え?念話は?」


「ああ、習得した」


「さすが、リノスさんですね・・・。そうです、その子は龍王に仕える資質を持った神女です。1000年に一度、ドラゴン族の間でその資格を持った子供が生まれると言われています。大きくなると族長となり、龍王様のお告げを聞く役割も担います」


「この子ここにいて大丈夫なのか?」


「だめですよ。この子が逃げたために、フェアリードラゴンは龍王様から見捨てられるかもしれません。本当にバカですよ、この子。一族の未来を捨てて逃げたんです。龍王様にお仕えするとなると、その一族の繁栄は約束されたものだったのに・・・。確かに修業は厳しいです。私も修業は大変でしたし、神女たる者の修業は私たちの比ではないでしょう。しかし、この子はそこから逃げ出した。きっと帰っても、殺されるだけです。それなら食べられた方がマシですし、その方が一族にとっても、龍王様への言い訳も立ちます」


「そうか・・・。うーん、俺も勉強しなかったからなー。この子の気持ちはわからんでもないが・・・」


「ご冗談を。リノスさんのそのスキルは相当の修業をしたはずです」


「う~ん。俺の場合は生きていくために仕方なくだったからな。人ってそういうもんだよ?危機感を覚えないとやらないもんだよ?」


「危機感・・・。そうですね、この子にはそれがないでしょうね。それに、言うに事欠いて、リノスさんの所にずっといたいなどと言ってましたので、かなり厚かましいです。私に対してはケンカ売りましたしね。身の程も知らないようです」


「この子が怪我をしていたのは、何か魔物にでも襲われたのか?」


「神女は絶対に守らなければならないので、基本的に竜族の張った結界で過ごします。そこから無理やり出ようとして、翼と角を失ったのだと思います。天罰です。でも、よく生きてましたね。普通、羽と角を失ったドラゴンは方向感覚がなくなると言われていますが・・・」


『おいドラゴン、お前よく生きてこれたな』


『すごくたいへんだったのー。どこにいるのかわかんなかったー』


『メシとかはどうしてたんだ?』


『うーんと、エサのとりたちがすきなにおいをきにつけてー、おびきよせてたべてたのー』


『匂いをつける?お前匂いが出せるのか?』


『そうだよー。においのでるこなをつくれるんだよー』


『その粉、出してみてくれるかな?』


『いいよー』


フェアリードラゴンは、羽をパタパタと動かすと、机の上に黒い粉が積もってきた。匂いを嗅いでみると、バニラの香りだった。試しにその粉を舐めてみる。・・・バニラの味がする。このドラゴン、バニラビーンズを精製できるようだ。


『他にも、どんな匂いのする粉が出せるんだ?』


『いろいろできるよー。ここのおみずとおはなおいしいから、いいにおいのするものならだせるよー』


・・・こいつは、使えるかもしれない。でも、懸念がないわけじゃない。俺はフェリスに確認を取る。


「このドラゴン、殺しちゃうと龍王様が怒らないか?」


「怒らないとは思います。何せ、逃亡していますから」


「龍王はこの子を殺しに来るかな?」


「殺しにも来ないと思います。たぶん、興味を持たれないでしょうね」


「なら、家で飼ってもいいな?」


「こんな臆病者を仲間にするんですか?」


「仲間、というよりペットだな」


「ペット・・・。奴隷以下ということですね?リノスさんが主ですが、基本的に全員の持ち物、というわけですね?それなら私は反対しないです」


「リコもどうだろうか?このドラゴン、羽からいい匂いのする粉を作り出せるらしいんだ。もしかしたらリコの美しさを引き出す匂いのする粉を出すかもしれん。あ、そうなると、俺がもっとリコを好きになっちゃうな。それはリコの・・・」


「飼いましょう!」


即答だな。リコの目が怖い。


『お前、俺の所に居たいのか?』


『うん、すっごくおいしいたべものごちそうしてくれたし、はねもつのもなおしてもらったから、ここにいればまもってもらえそうだし、ごはんもたべられそうだからー』


『我が家は、働かない者、怠けるものは家に置かない。お前は俺の仲間の中で一番下っ端ということになる。俺はもちろん、俺の仲間の言うことを素直に聞くのならば、置いてやってもいい』


『うん、わかったー。ちゃんときくー』


『これからはご主人様と呼んで、絶対わがまま言っちゃダメよ?ちゃんとお姉さまたちの言うことを聞かないと、私がアンタを食べるからね?』


『ううう・・・わかったー』


『わかったー、じゃない!わかりました!』


『わかりましたぁー』


フェリスがものすごい顔でドラゴンを睨んでいる。フェリス、どう!どう!


「取りあえずコイツに名前を付けるかー。そうだな・・・お前の名前は、フェアリだ」


『わーい!』


『ありがとうございますって言いなさい!』


『ありがとうございまぁす』


フェリスがいい教育係になりそうなので、基本的にこのまま放置することにする。しかし、フェリスは全裸のまま怒っているので、かなりシュールな光景だ。


「どうでもいいがフェリス、まずは服を着てくれないか?それに、人化した体の出来栄えがもう一つだな。リコのようなシミ一つない肌、胸は小さいが、均整の取れた体を参考にすればいい。お前も、頑張れ」


「・・・リコお姉さま、服を脱いでいただいてもいいですか?」


「イヤです。こんなところじゃいやですわ」


「じゃあ、お風呂に入る時にでも」


「わ、私の裸は、リノス以外には見せないのですわ!」


「メイ姉さまとは一緒にお風呂に入ってるじゃないですか!」


「メ、メイはいいのですわ!」


「何で私はダメなんですか?一緒にお風呂入りましょうよー」


「イヤです!私の裸は絶対に見せませんわ!」


何やら女同士でヘンな会話になってきている。しかし、顔を真っ赤にしたリコはとてもかわいらしく、俺は今日の夜もリコを愛でようと心に誓うのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ご存じかも知れませんが バニラって単体で舐めるとクソまずいです バニラアイスの味とは全く異なるのでご注意を
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