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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第二章 ヒーデータ帝国編
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第五十五話  返す刀で返り討ち

「ご主人様、完了しました」


ご苦労と、俺からの労いの言葉を聞いて、ハーピーは飛び上がっていった。


夏の日差しが眩しい。遠くに目をやると、地平線の彼方が陽炎にゆれている。俺は夏の到来を感じながら、馬小屋を見る。


馬小屋では、冒険者の格好をした10人の男がいた。俺はその男たちの前に、無言で立った。



事の発端は、休日であるこの日、昼飯を食ってまったりとしている時間だった。俺のマップに、真っ赤なマーカーが10個ほど現れたのだ。全員に注意を呼びかけ、警戒態勢を取る。その集団は途中で3つのグループに分かれてやってきた。4名ずつのグループが二つ、そして二人一組のグループだ。


二人連れはまっすぐにこの屋敷にやってくる。あとの二つのグループは馬小屋と屋敷の裏庭に向かっているようだ。どうやら屋敷を挟み撃ちにする計画らしい。


俺の指示を待つまでもなく、ハーピーが不審者の来訪を伝えに来る。俺は動けるもの全員を動員するよう指示を出す。


こちらの準備が整い、不審者たちも配置が完了したと見え、二人が俺の屋敷の玄関に立つ。


「結界師、リノス殿の屋敷はここか!」


俺は玄関まで不審者を出迎える。


「結界師のリノスですが、何か?」


「リコレット皇女がお呼びなのだ。我々と同行いただこう」


「リコレット皇女?一体何の用です?」


ピィィィィーーーー!!というけたたましいハーピーの鳴き声が響き渡る。馬小屋の方から、うわー、ぐわッといった人間の悲鳴も聞こえてくる。驚いた二人組が外に出る。俺もそれを追うように外に出る。


「な!ハーピー!なぜハーピーがこんなところに」


「おーいお前ら。そいつらを殺すな。生け捕りにしろ」


「貴様は一体・・・」


「もしや魔族か!」


一人の冒険者が俺に剣を振るう。俺は軽くかわしてソイツに当て身を当てて気絶させる。その間に、もう一人の男もハーピーたちに抑え込まれている。その騒ぎを聞きつけて、裏庭の部隊もやってくる。そしてそのままハーピーたちになす術もなく抑え込まれた。


「で、リコレット皇女は、俺に一体何の用だ?」


男たちは答えない。


「全員ハーピーの餌になりたいようだな?」


「ま、待て。話す!」


玄関で俺に話しかけてきた男が口を開く。俺はそいつの前に足を進める。


「・・・グレモントの犬である、貴様が邪魔なのだ」


「俺を消してどうするつもりだ?俺が消えても何もならんだろう」


「お前が死ねばグレモントの結界が解除されると聞いた。だからだ!」


宰相閣下を暗殺しようとしているらしい。何とも物騒な話だ。


「グレモントは帝国の執政という立場にありながら私腹を肥やし、あまつさえ帝位を簒奪しようとしている。あいつは生かしておくことはできんのだ!」


ハーピーに抑え込まれながらも熱弁を振るうこの男は見たところ、かなり若いようだ。年齢を聞いてみると、20歳だという。


「帝位って、帝国には皇太子がいるだろう。帝位を奪うのは難しいだろう」


「自分の孫のヴァイラス殿下を帝位に就け、自分はその後見となろうとしているのだ!」


なんだか言っていることがムチャクチャである。念のため俺はこの男の過去を覗き見る。


「おいおい、リコレット皇女は関係ねぇじゃねぇか。嘘つくなよお前」


男の体がピクッと動く。


「ハア?皇帝陛下は崩御されたのか?ほう、そのスキに宰相閣下を暗殺してリコレット皇女を新皇帝の後見に就ける?それでお前らが甘い汁を吸うってか?ロクでもねぇなお前ら」


「だ、黙れ!勝手なこと言うな!今の帝国では優秀な人材を活かしきれない!グレモントでは帝国が崩壊する!」


「で、お前らがその後釜に座ると。バカかお前。お前のスキルで宰相閣下の代わりが務まるか」


「グレモントの犬が!」


取りあえずこの襲撃者たちをふん縛る。あとあとが面倒なので、こいつらに結界を張り、ハーピーたちの記憶を消して、俺にやられたように記憶を書き換えておく。その後、そいつらを引き立てて俺は、転移ポイントに向かう。ちょうどいい。10人乗っても大丈夫かどうかの、いい実験台だ。俺は転移を発動させる。行先は帝都にある俺の店だ。


問題なく全員帝都の俺の店に転移できた。俺はそいつらを置いて再び転移ポイントに乗り、宰相閣下の屋敷近くに設置したポイントに転移する。そして、屋敷に入る。


宰相閣下は留守だった。俺は事の顛末を宰相家の執事に話すと、このままこの屋敷にとどまるよう言われ、執事は宮城きゅうじょう に出かけて行った。そして、宰相家の者たちが、俺を襲った者たちを引き取りに俺の店に向かって行った。


ほどなくして、俺を襲った奴らが宰相家の者たちに連行されてきた。連行されるときに抵抗でもしたのか、全員ボコボコにされていた。


かなり長い間待っていたが、宰相閣下の帰りは夜になるという。俺は手洗いに行くふりをして、個室に入り、そこに転移ポイントを作って再び俺の屋敷に帰った。取りあえずペーリスに、今日は戻らないかもしれない旨を伝え、念のために結界を張りなおして、再び宰相家のお手洗いに帰る。転移ポイントを解消し、応接室に戻った。


宰相閣下が戻ってきたのは、深夜だった。かなり疲れの色が見える。


「お疲れのようですね」


「まあな。色々と問題が山積していてな。バーサーム候のような体と頭が欲しいわ」


「陛下が崩御されたそうですね?」


「!どうしてそれを!?・・・そうか、奴らが喋ったのか。バカな者どもだ。私を殺したところで、何も変わらんというに」


「彼らはどうなります?やはり死罪ですか?」


「奴らは伯爵、子爵家の三男坊や四男坊たちだ。家を継ぐ可能性は極めて低く、将来は冒険者になるか、商売でも起こすか・・・さもなくば、兄たちからいくばくかの金をもらいながら生きていくしかない者たちだ。奴らの家が救いの手を差し伸べるとは思われん。まあ、悪くて死罪、良くて流刑が妥当だろうな」


「でしょうね」


「その前に、奴らの首魁の名を吐かせねばならん。あとは、奴らの計画がどこまでのものを考えておるのか、それも吐かせねばならん」


「俺が聞いた話では、ヤツらだけの行動みたいだったですよ?」


「いや、貴殿への襲撃の内容を聞いたが、あれはかなり訓練されたものだ。おそらく首魁がいるのであろう。そして、壮大な謀反が計画されているような気がするのだ」


「吐きますかね?」


「・・・何としても吐かせねばならん」


「折角ですので閣下、俺も一度その者たちに会わせてもらうことはできますか?俺も聞きたいことがありますんで」


「・・・よかろう。付いてこられよ」


宰相閣下は屋敷の地下に降りる階段をゆっくりと歩いていく。地下までの距離が結構長い。そして、階段を下り、しばらく廊下を歩くと突き当りに扉が見えた。


中に入ると、俺を襲った10人がちょうど尋問を受けていた。全員縛られており、顔のいたるところに青あざを作っている。かなり激しい拷問が行われたようだ。


「どうだ?」


「いえ、まったく口を割ろうとはしません。自分たちだけの計画、との一点張りです」


「どんな手段を使ってでも吐かせろ。最悪の場合、殺してしまっても構わん」


「ちょっと待ってください」


俺は捕らわれている奴らのうちの一人の下に歩いていく。俺の屋敷で尋問したヤツとは違うが、こいつだけなぜか一瞬俺と目が合ったのだ。俺はコイツの過去を覗く。


「・・・クルムファル?」


男の体がピクリ動く。


「どんなヤツなんだ?」


「し、知らん。クルムファル様など、俺は知らん!」


「知らない人間に、様は付けないよね?」


「クルムファル・・・リコレット様の家庭教師だ。なるほど、お前たちの家庭教師でもあったな。そうか、黒幕はクルムファル伯爵か!」


宰相閣下の目が爛々と輝きだす。


「リノス殿、大手柄だ!これで帝国に跋扈する悪どもを一掃できる!」


「それはよかった・・・。リコレット様は関係なさそうですね?」


「いや、そうもいくまい」


うん?関係ないんじゃないのか?


「リコレット様にも責は負っていただく。あのお方は、死罪だ」

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