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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第六章 アガルタ国編
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第百四十話  さぁーみんなで考えようー

次の日、俺はイリモに乗って帝都の宮城きゅうじょうに向かい、皇帝陛下に謁見した。


通された部屋は、陛下の私室の近くにあるいつもの会議室だ。当然そこにはグレモント宰相とヴァイラス殿下も呼び出された。俺は、昨日のラマロン軍討伐の様子を話す。


「ふむ。敵は引き上げたのか。では、国境に向かっておる軍を引き上げさせねばの」


陛下が宙を睨みながら独り言のように呟く。


「それにしても、相変わらず見事だな、貴殿の采配は」


宰相閣下は、ヤレヤレと首を振りながら呆れたような顔をしている。


「いえいえ。ラファイエンス将軍が鍛えてくれた兵たちのお蔭です。俺は何もしていません」


「それにしても、捕虜2000名というのが心配です。今後はどうなさるのです?義兄上あにうえ?」


ヴァイラス殿下が心配そうな顔をしている。この人は俺が国王になってから、「義兄上あにうえ」などと呼ぶようになった。まあ、間違いではないのだが、何とも面はゆい。聞けば陛下からそう呼べと命じられているのだという。


「いや、別段問題はないと思いますよ。おそらく、ラファイエンス将軍が都に護送していると思います。今日中、遅くとも明日には到着すると思いますよ?」


「いや、そういうことではなくてですね・・・。捕虜の処遇のことです」


「うーん。今のところ考えていませんが、基本的には解放することになると思います。ラマロンと交渉して、賠償金が取れれば御の字というところじゃないですかね?」


「ああ、その話だがの」


俺の話を聞いて、陛下が口をはさんでくる。


「先だって侵攻してきたラマロンの捕虜のことだが、捕虜交換の交渉を打診しておるが、一向に回答がない。再度、交渉を打診する使者を遣わし、回答期限も設けておるのだが、動く気配は全くない。察するところ、ラマロンに捕虜のことについて対話する余裕はないと余は見ている。おそらくリノス殿の捕らえた捕虜も、同じような対応を取るだろうな」


「・・・と、いうことは、どうなります?」


「我らで煮るなと焼くなと好きにすればよい、ということだの。まとめて全員の首を刎ねても、ラマロンは文句が言えん」


「そんな物騒な」


「ハッハッハ!何を言うか。ジュカの王都に侵攻してきたラマロン軍3000を皆殺しにしておいて、今さら物騒も何もあるまい?」


陛下は意地悪そうな目で俺を見つめている。


「まあ、それは冗談だが、捕虜の扱いについては、余からは何も言うことはない。リノス殿が決めればよい。元々リノス殿が捕らえた者どもだからの。帝国に手伝えることがあれば、何なりと言ってくれ。こちらもできるだけ対応するぞ」


「はい・・・」


「まあ、せっかく来たのじゃ。世継ぎのアローズの顔を見て行くがよい」


俺は陛下に案内されて、私室に連れていかれる。


「どうだ、なかなかの美男であろう?」


ゆりかごの中でスヤスヤと眠るアローズ皇太子は、ふっくらとした顔立ちをしている。どうやら、タウンゼット妃に面差しは似ている・・・のかな?


「これは・・・どちらに似られたのか・・・」


「どうも、タウンゼットに似ておるようだの」


「ああ、それは良かった」


「リノス殿、それは余に対して、不敬だぞ?」


陛下がちょっと怒っている。ヤバイ、地雷を踏みかけるところだった。取りあえずその場を何とか納めて陛下の機嫌を直し、俺は城を後にした。



アガルタに転移した俺は、自室で事務処理をこなしつつ、ラファイエンスが連れてくるであろう捕虜たちの受け入れ準備を命じた。そして、リコたちを呼び、捕虜の対応について話し合った。


「普通、捕虜ってのは、どういう扱いになるんだ?」


俺の問いかけに対して、リコがすぐさま答えてくれる。


「二つありますわ。国が侵略された時に兵士が捕らえられた場合は、奴隷として売買されます。そして、戦いの最中に捕虜になった場合は、大抵は国同士が交渉して引き渡すのが通例です。賠償金のような形で、金銭で交渉することが多いと聞いていますわ」


「なるほど、そうか。しかし、皇帝陛下が言うには、ヒーデータからラマロンに捕虜交換の使者を出しても返事がないそうだ。そこで、ラマロンの捕虜についての処遇は俺に一任されているんだ。皆はどう思う?」


「・・・都の人々は、ラマロンの奴らを許さないと思います」


そう言って唇をかむのは、都の人々の声を聞き、それらを解決している団体の長を務めるセオダルだった。まだ30手前だが、なかなか人をまとめる力があり、都の人々からの信頼も厚い男だ。彼自身も、ラマロン軍の侵攻で母親を殺されている。都の人々の思いは、彼が一番よくわかるのだろう。


「そうは言っても、全員の首を刎ねる訳にもいかんだろう」


「まあ、それはそうですが・・・」


「いっそのこと、奴隷にしてしまってはいかがでありますかー」


助け船を出してくれたのはゴンだ。


「奴隷であれば、行動を縛ることも可能でありますし、適性を見て、建築作業などの都の復興の手伝いに当ててもいいでありましょうし、そのまま兵士として雇うのもいいと思うでありますー」


俺はしばし目をつぶって考える。そして、


「よしわかった。捕虜たちについては、奴隷にすることにしよう。ただし、ラマロンに帰りたいと希望する奴らについては、国境まで送る。奴隷になった者たちは俺たちが管理して、都の復興を手伝ってもらう。よく働いたものについては、奴隷から解放してやる。この方向でどうだろうか?」


「リノス様、それは・・・甘すぎるのでは?」


セオダルは納得いかないみたいだ。


「いいえ、これでよいと思いますわ」


その空気を感じてか、リコが賛成の意見を述べてくれる。


「今回侵攻してきた兵たちの中には、イヤイヤ連れてこられた者もいるはずですわ。そのような者たちには、国に帰りたいと思う者も多いと思います。それに、捕虜たちにも家族がいると思いますわ。その人々に家族がいなくなる悲しみを味わわせるべきではないと思います。返還する捕虜たちについては、リノスとゴンに見分してもらえればいいのですわ」


「わかりました。リコレット様がそう仰るのであれば・・・」


セオダルは首を垂れる。


「セオダル、あなたの気持ちは、私もよくわかりましてよ。しかし、憎しみを憎しみで返せば、必ず新たな憎しみを生みます。どこかで、断ち切らなければならないのです」


「はい。このセオダル、肝に銘じます」


凛としたリコの姿勢が、実に頼もしい。リコはその表情のまま、俺の目を見つめる。


「ところで、マトカルたちの処遇はどうされますか?」


「うーん」


マトカルたちに従っていた結界師と回復魔法が使える魔術師については、普通の捕虜と同じ扱いでいいだろうが、マトカルとフルチン野郎の処遇は別である。何と言っても、この都に侵攻してきた軍の司令官とその副官なのである。何らかの責任を負わねばならない立場なのだ。


「何となくだが、この話をすればマトカルは自分で死ぬだろうし、フルチン野郎は命乞いをするだろうな」


全員が黙り込む。どうやら、考えていることは同じだったようだ。


「一番、捕虜として旨味があるのは、マトカルでありますなー」


ゴンが俺たちを見回しながら口を開く。


「何と言っても、皇帝の娘という事実があるのでありますー。最悪、マトカルは人質という使い方が出来るのでありますー。何かの交渉の時に有利に働くと思うのでありますがー」


「いやしかしゴン、ラマロンの皇帝は宮殿でマトカルを育てずに、フルチン野郎の親父に養育させたのだろう?愛情のカケラも持ってないんじゃないのか?」


「うう・・・ご主人の言うことも、もっともでありますー」


「わかりました。マトカルについては、私に考えがあります。一度、マトカルと話してみたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」


リコの目が光っている。何かいい案を思いついたようだ。俺は、すぐさま許可を出した。


「では、あとはフルチン野郎の処遇について考えよう。あ、ついでに、カルギの息子も捕らえていたんだっけな。ついでに、そいつの処遇も考えようか」


俺たちの会議は、夕方になるまで続いたのだった。


結局この日、ラファイエンスたちは都に帰ることが出来なかった。都まで数時間という場所まで来てはいたものの、一旦野営をして、明朝に都に入るのだという。そして、明日の朝は俺も軍に合流して一緒に都に入ってほしいのだという。俺はその話に同意し、彼らへの十分な食糧を持っていくよう指示して、帝都の屋敷に帰ったのだった。


あくる日、老将軍の一行に俺は合流した。見て驚いたのが、全員、鎧がピカピカに磨かれており、きれいに身支度をしていたのだ。一糸乱れぬ隊列を作り、その先頭を堂々と闊歩するラファイエンスは、とても格好が良かった。そして、彼に指示される形で、俺はその先頭をイリモに乗って進み、都に凱旋した。


当然都の人々は大歓声をもって俺たちを迎えてくれた。そして、クノゲンたちの部隊と合流した部隊は、きれいに整列し、老将軍の指揮のもと、彼らは一糸乱れぬ動きで俺に敬礼をしてみせた。あまりの見事さと驚きのあまり、取りあえず敬礼を返した俺の右手が震えていたことは、ナイショの話である。


その後、俺とゴンは捕虜たちを引見し、犯罪歴のある者をはじき出した後、彼らに今後のことについて伝える。


「今ここにいる奴らの中で、ラマロンに帰りたい奴らは手を上げろ。国境まで送ってやる。その他の連中は奴隷となり、都の復興を手伝ってもらう。このまま兵士として居てもらっても構わない。よく働いたものは奴隷からの解放を約束する。あとは・・・毎日三食、全員、腹いっぱいメシを食わせてやる!」


結局、ラマロンへの帰還を希望したのは60名ほどであり、俺はそいつらに十分な食糧を持たせて、国境まで送らせた。そして、アガルタに留まることを選んだ捕虜の大半は、ラマロンに雇われた傭兵であり、この奴隷兵たちが後に、アガルタ軍の最強部隊になっていくのだが・・・。それはまた、別のお話。

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