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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第五章 新・ジュカ王国編
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第百二十一話 召喚された精霊たち

ノームは土の精霊では最上位に位置する種族であり、かなり知性が高い。イリサルは懸命にノームと対話しようと試みたが、あまりに高度な話をされるために、なかなか話が理解できなかったのだという。そして逆に、ノームの方が呆れてしまい、一方的に契約を打ち切られたのだという。


「う~ん、何とも言えんなぁ」


「・・・いつもバカだの、そんなことも知らんのか!とか言われて、辛かった」


「ああ、わかるわ~。俺も新入社員の頃はそうだったなぁ・・・」


そうだそうだ。一番最初に付いた上司がそんな人で、就職した当初は会社に行くのが嫌で嫌で仕方がなかった。ただその人は意外に優しいところがあったので、なんとか俺も耐えられたのだ。今思い出した。


「それはノームが悪い。しかし、まあ、そんな奴はどこにでもいる。一番大事なことは、そいつらにナメられないことだ。イリサル。残念ながらお前はノームにナメられていた。だから罵詈雑言を浴びたのだ。ナメられちゃぁイカン!」


「ハイ・・・」


「簡単だ。『なめんなよ!』って自分に言い続けろ。そうすればナメられない雰囲気を纏える。いまから一時間、大声でその言葉を繰り返せ」


「・・・やってみる」


イリサルは再び大木の中に姿を隠した。しばらくすると凄まじい怒号が森の中に響き渡る。


「舐めんなよコラァ!舐めんなよコルァ!舐めんなよコルァァァァ!舐めんじゃねぇぞぉぉぉ~~~!!!!」


ヴィヴアル達の顔が引きつっているが、見なかったことにする。


サイリュースたちを放っておいて俺たちはメイの案内で、彼女たちの耕作地を見せてもらう。


「・・・かなり水分が多いな。ぐちゃぐちゃだ」


「これだけジメジメとしていては、作物は育ちません。木を伐採して、太陽の光が入ればいいのですが・・・」


「それは無理だと言っていたよな?」


「ええ。ですから、この条件で作物を育成させていたあのサイリュースの苦労は、並大抵のものではなかったと思います」


「精霊使いとしては優秀だったんだな」


「そう思います」


メイが認めるのであれば、本当に優秀なのだろう。集落には相変わらずイリサルの怒号が響き渡っている。何だか、かなり迫力が出てきたような気がするが、気のせいだろうか。


そんなことを考えていたら、後ろのサイリュースが何やら騒がしい。振り返ると、集落の中心に焚かれていた火が勢いを増しており、でかい火柱になっていた。


よく見ると火柱の先には、真っ赤なトカゲのような生き物が辺りをキョロキョロと見回していた。


「サラマンダー!サラマンダーだわ!」


「誰が召喚したの?誰?」


サイリュースたちが喧しい。取りあえず俺たちは火元に向かう。


「この俺を呼びゃがあるのは、どこのどいつだー」


サラマンダーと呼ばれるトカゲが叫んでいる。


「まさか、サラマンダーが召喚されるなんて・・・」


ヴィヴアルが戦いている。


「何です、あのトカゲは?」


「サラマンダーという火の精霊です。火精霊の中では最高ランクの精霊です。火が消えるとサラマンダーも消えてしまいます。みんな、薪を持ってきなさい!」


よく見ると、燃やしてあった薪が真っ黒になり、このままでは消えてしまいそうになっていた。サイリュースたちに呼び出された森の精霊たちが、あちこちの木の上から薪を持ってくる。それをサイリュースたちがドンドンと火の中に投げ入れていく。


「ウハハハハ!召喚門にぬっと顔を出すと、中の町の両側から新薪の雨がふ~る~よ~だ~」


サラマンダーはご機嫌である。


「一体誰が呼び出したんですかね?」


「おそらく、イリサルですわ」


「イリサル?」


「あの子は土の精霊と火の精霊が召喚できます。以前、火の精霊を召喚しましたがとても位が低い精霊でした。土の精霊はノームという最上位が召喚できましたので、ノームと契約したのですが・・・。まさかサラマンダーを召喚するとは・・・」


「おい、どうでもいいが、俺っちを呼びゃがったのはどこのどいつだ!おう、俺っちは気が短っけぇぜ。早くしねぇな」


「誰か、イリサルを呼んで来なさい!」


ヴィヴアルの絶叫にも似た声が集落に響き渡る。


「族長さま、そのように慌てなくても・・・」


「サラマンダーを怒らせると、この辺一帯が火の海になります。あの精霊を怒らせてはなりません」


取りあえず俺は、周囲に結界を張っておく。しばらくすると、ものすごい形相をしたイリサルが引きずられるようにして連れて来られた。


「オウ、お前ぇか、俺を呼びゃがったのは!」


「知らねぇよ!しかし、召喚されてくれたのはありがたい!アタシと契約してもらうよ!」


「ほほぅ。いい面付きをしてるじゃねぇか。気に入ったぜ。契約してやらぁ。その代り、退屈はイヤだぜ!」


サラマンダーがすっと消え、イリサルは一瞬体に炎を纏った。そして集落は何事もなかったかのように以前の姿を取り戻した。


「イ・・・イリサル」


「大丈夫。私は大丈夫だよ。族長様。大声を出した弾みに、MPが漏れたのかもしれない。でも召喚できたのは幸いだった。・・・ちょっとノームの所に行っていいかい?」


スタスタとイリサルは畑の方向に向かって歩き始めた。俺たちもその後に従う。畑に着くとイリサルは何やら呪文を唱え始めた。しかし、何の反応もない。それでも彼女は力を籠めるようにして呪文を唱えている。


すると、彼女の体から炎が噴き出された。尋常じゃなく熱い。しかし、その炎で周辺にいるサイリュースたちの体が透けて見える。エロい・・・。あの人など全部見えてしまっている・・・。ヤバイ、理性が・・・。


「やかましいのぅ!さっきから!!お前とは会わんと言ったじゃろうが!!」


しわがれた声が森に響き渡り、俺はその声で理性を取り戻す。よく見ると、イリサルの足元に小さい、スコップのようなものを持った老人がいた。


「ジジイ!アタシもアンタに用はない。アンタに用があるのはあの人たちだ!」


「なんじゃとこの小娘!誰にものを言っとるんじゃ!よーし、儂ゃ怒ったぞ!この森の畑を丸ごと・・・」


「少々恐れ入ります」


メイがイリサルの後ろからノームに声をかけている。メイ、熱くないのか?


「何じゃお前は!」


「私、メイリアスと申します。ノームさんに一つ提案がありましたので、イリサルさんに呼び出していただきました」


「ああん?提案?」


「ここの畑って、水分が多いですよね?この状態だと作物は育たない・・・」


「それを何べんもコイツに言っとるんじゃ!水分を取り除けと!」


「そうですよね。わかります。それで、ここの水分が取り除ければ作物は実りますよね?」


「ああ、自信はある」


「私の方で、コングライリットを製作します。それをマクストリカ方法で土に入れて、その後、レイタンス方法で土をならしていくのはどうでしょう?」


「ホウ、お前は話せそうじゃな。しかし。マクストリカをするのであれば、コワイカンスが必要じゃぞ?」


「それは私が作ります」


「材質は?」


「メンサの木です」


「いや、ジュゴカンの木、しかも、白い部分が一番いい」


「なるほど、乾燥しますものね!それを作って・・・」


「それでじゃな・・・」


・・・何やら二人で盛り上がっている。ジジイの方は「そういう手があったか!」「そうじゃ、それがええのう!」と嬉しそうに喋っている。本当に嬉しそうだ。


「・・・イヤな老人ですわね」


「リコ、言ってやるな。久しぶりに若い女としゃべるんだ。その気持ちは、察してやろう」


「・・・アタシも若いんだけどな」


「イリサル、君は、若すぎるのだよ。お姉さんたちみたいに、胸が膨らんでくれば、ジイさんの態度も変わると思うよ」


イリサルは分かったような、分からないような顔をしている。そしてその隣でリコは何故か俺を睨んでいる。


「ご主人様、この畑は何とかなりそうです。今からお屋敷に帰ってその道具を作ります」


「メイちゃん、まずはこの土が乾ききってからじゃから、ゆっくりでええぞ。ゆっくりで」


「ハイ、ノームさん」


「エヘヘ。メイちゃんはかわいいのう」


エロジジイが・・・メイに鼻の下を伸ばしてやがる。ダメよ、メイは俺の嫁なんだから!


「土を乾かすんだろ?わけないよ?」


突然イリサルが呟いて、畑に向かって何やら呪文を唱えている。すると、サラマンダーが現れ、畑の真ん中で寝そべり出した。その瞬間、畑からはユラユラと煙が立ち上がっている。


「まあ、こんなものだぁ!」


サラマンダーは得意げに叫んで、姿を消した。調べてみるとそこは、先ほどまでのジメジメとした土ではなくなっていた。


「ほ~う。これなら、いい作物が出来そうじゃな。お前、ヤルではないか」


ノームのジジイが満足そうに微笑んでいる。


「でもここは湿気が多いので・・・」


「そうじゃな。メイちゃんはそのまま道具を作ってくれるといいのじゃ」


「わかりました」


「じゃあメイちゃん、何かあれば呼んでくれい」


「ハイ」


そう言ってノームは消えて行った。その後、メイから今年の秋の収穫を目指して畑を作り替えていく説明をしてもらった。ヴィヴアルをはじめサイリュースたちも安堵しているようだ。


「さ、リノス、あとはメイに任せて、帰りますわよ。」


「え?帰るの?」


「帰るんです」


俺はメイとサイリュースたちに一旦屋敷に帰ることを伝えて転移結界を張り、屋敷に帰った。


着いた途端、リコに腕を掴まれ、すごい力で引っ張られるようにして部屋に連れて行かれる。


「リ、リコ。まだお昼前だよ?」


「それが何か?」


「せめて昼飯を食べて・・・」


「ダメです!」


「落ち着けリコ、落ち着いてくっ・・・」


乱暴に唇を奪われた俺は、そのままベッドに押し倒された。

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