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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第五章 新・ジュカ王国編
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第百十一話  気まぐれは時として、俺を悪魔に変える

『それにしてもラース、お前どうしたんだ?傷だらけで、気絶してたぞ?』


『ラース殿、お久しぶりでありますー。傷とMPはご主人が治してくれたでありますー』


『キツネさん、お久しぶりです!また、リノスさんに助けていただきました・・・。ありがとうございます』


『いったい何があった?』


「人化の練習をしてたんですよ」


「人化?」


ラースはフェリスと同様、「人化」のスキルを身に着けようとしていたようだ。しかし、今のラースではMPがすぐ枯渇してしまう。MPが0で気絶していたのは、そのためらしい。


「でも何で傷だらけだったんだ?」


「それは・・・エヘヘ・・・」


聞けば、ラースは久しぶりに帰ってきた姉に「人化」のコツを聞いたらしい。フェリスも色々とコツを教えてやっていたのだが、如何せんラースはまだまだうまくできない。じれてきたフェリスはついつい手が出てしまった。出しまくってしまった。つまり、タコ殴りにしてしまったというわけだ。


『姉ちゃんはやりすぎなんだよー』


『できないアンタが悪いんでしょうが!』


「ハイハイ、二人ともケンカしない!ふーちゃんもそのくらいで」


「・・・そ、その呼び方、やめてください」


ラースも腹が減っているので、昼飯は全部フェリス姉弟にやることにして、俺たちは非常用の弁当を食べることにした。おそらくそれたけでは足りないだろう。即席ではあるが、無限収納にあるオーク肉を焼いてやる。二人とも、うまい美味しいとすごい勢いで平らげていく。


『ちょっと!それ私のでしょ!』


『いいじゃないか!俺、今日は何も食べてないんだぞ!』


そんな微笑ましいやり取りをしながら、短い食事の時間は流れていった。


『・・・ありがとうございました!本当に美味しかったです!』


『もう食べるもの食べたんだから、アンタは早く帰りなさいよ!』


『ラース、すまないな。ちょっと急ぐんだ。またの機会に、今度はもっとどっさり持ってきてやるからな!』


『ありがとうございます!楽しみにしてます!』


ラースは大きな羽を羽ばたかせて、空に舞い上がった。


『リノスさん、俺も脱皮が終わったら・・・』


『ああ、いいぞ。いつでもウチに来い。ただし、フェリスもいるけどな?』


『ハイ!姉貴は大丈夫です!』


嬉しそうな顔をして、ラースは飛び去っていった。



「じゃあ、麓までご案内します」


「ああ。フェリス、頼む」


俺たちは再びイリモに乗り、ルノアの森を目指した。


フェリスの案内のおかげで、途中から険しい道のりがなくなったため、イリモに地上に降りてもらい、走って移動することにした。そのお陰でかなり早く進むことができ、日暮れ前にはルノアの森に着くことが出来た。


「イリモ、お疲れ様。助かったよ」


「まだ全然平気ですよ?」


実に頼もしいことを言ってくれる。取りあえず、今日の移動はここまでにして、転移結界を張って屋敷に帰る。ちょうど夕食の準備にかかったところで、キッチンではリコとペーリスが忙しく動いているところだった。


「じゃあ、私たちも手伝ってきますねー」


フェリスとルアラもキッチンに向かう。ダイニングを見るとフェアリがパタパタと飛んでいる。俺が手招きをすると嬉しそうに飛んできた。


『フェアリも留守番ご苦労様でした』


『ジェネハさんがいるから全然平気ですー』


『そいつは良かった。ところで今日、お前の仲間に出会ったぞ?』


『仲間―?』


『フェアリードラゴンに襲われた』


フェアリはギョッとした顔をして固まっている。


『心配するな。全匹確保の上、拘束してある。命に別状はない。フェリスは昔の仲間に会いたいか?』


『・・・会いたくない』


『わかった。じゃあ、奴らをお前に会わせないようにする。お前はいつまでもこの家にいていいからな』


『うん!』


フェアリは嬉しそうに俺の胸の中でパタパタと羽を動かした。


俺は再びフェアリードラゴンの結界に転移し、非常食用の弁当と食材を適当に結界の中に放り投げる。


『オラ、メシだ』


『いつになったらここから出られるんだ!』


『知らん。俺の仕事のカタがついてからだ』


『できれば暖かくて、美しい水があって、花が咲き誇るところがいいのだが』


『心当りはあるな』


『ではそこに連れていってくれ!』


『天国だけどな?』


『・・・』


『お前ら囚われの身のくせに贅沢言ってんじゃねぇよ。飯を食わせてもらえるだけありがたいと思え。一晩そこで頭を冷やしてろ』


そう言い残して、再び屋敷に戻ってきた。基本的に俺の張る結界は、一定の温度が保たれるようにしている。間違ってもヤツらが凍死することはないだろう。


ワイワイと皆で今日あったことを報告し合い、美味しい料理に舌鼓を打つ。そして、ゆっくり風呂に入る。ここ最近メイはお疲れ気味だ。ニザでかなり力仕事をしているらしい。肩や腕がパンパンに張っている。ということで、夜は必然的にリコを抱きしめて寝る。次にメイと寝る時が少々怖いが、その時はその時で覚悟を決めて対峙したいと思う。


戦争に突入する寸前の緊迫した時期だというのに、我が屋敷だけは平和そのものだ。ここがあるおかげで、やってられない仕事も何とかやってられるのだ。


そして朝、いつものようにリコから昼食のバスケットをもらって、俺たちは転移結界に乗る。フェリスもルアラも手伝ったようで、今日もバスケットが4つもあった。自分の食べたいものをルンルンで詰めていたようだが、戦争を仕掛けに行っているので、もう少し緊張感も必要ではないか、と思ってしまうくらいこの二人には緊迫感がない。


ルノアの森を徒歩で抜けようとすると5日程かかってしまうので、イリモの翼で飛んでいくことにした。彼女には負担だが、これならばかなりの距離が稼げる。


「イリモ、今日は頼むぞ。フェリス、はぐれるな。全力で付いてこい」


「わかりました!」


イリモの全力での飛行は思った以上に速かった。フェリスが付いてこられるかが心配だったが、彼女も何とか付いてきている。このまま進もうと思っていたところに、俺の視界に何かの塊を捉えた。


よく見ると、黄金鳥の群れだった。


「イリモ待て!」


「え?どうしたんですか!?」


イリモもフェリスも驚いている。俺は二人に目もくれず、黄金鳥をガン見している。見たところ、300羽くらいいる。あの濃厚な味、肉汁・・・あの肉の美味さが口の中に湧き上がってくる。・・・食いたい。


「一旦下に降りてくれ」


ヤツらに見つかり、警戒されてしまうと逃げられてしまう。ここは細心の注意を払うところだ。


「ご主人様・・・?」


皆、けげんな顔をしている。俺はそれどころではない。どうやって黄金鳥を狩ろうかで頭がいっぱいだ。前回のような作戦はダメだ。時間がかかりすぎる。一網打尽にするためには・・・。


「そうだ、アレを使うか!」


俺は転移結界を張って移動する。そしてすぐさま戻ってくる。


「ご主人、これは・・・」


「コイツを使う」


俺は閉じ込めたフェアリードラゴンを結界ごと持ってきていた。


『え~フェアリードラゴンの諸君。緊急任務を与える。非常に名誉ある作戦に従事できる幸せを嚙みしめたまえ』


うん?なぜかヤツらが慄いて見えるのは、気のせいか?


『諸君たちの任務は、北東の方向にいる黄金鳥の捕獲だ。上空に至ればすぐにその姿は現認できるだろう。羽根と嘴が金色であるために、見つけることは非常に簡単だ。その鳥を生け捕りにしてもらいたい。ただし、ヤツらの逃げ足の速さは折り紙付きだ。そこで、諸君たちの出番だ。その機動力をもってヤツらを圧倒し、逃げる前に捕らえるのだ。これから広範囲に結界を張ってヤツらを閉じ込めるが、襲撃がヤツらに知れると厄介だぞ。光の速さで逃げるからな。短時間で一匹も殺さず、捕らえることが出来れば、今後の君たちの処遇は変化するだろう。期待している。以上だ』


『いきなりそのような・・・』


『聞こえんな。何か言ったか?お前・・・名前がないと不便だな。そう・・・サダキチ。お前を本日よりサダキチと命名する。サダキチ、お前が頭領となり、捕獲せよ。捕らえた黄金鳥は、この紫の結界の中に放り込め。簡単だ。黄金鳥を捕らえたままこの結界に入れ。お前たちは出られるようにしておいてやる』


俺はすぐさま捕獲用の結界と、数十キロ四方に結界を張る。ぶつかっても衝撃を吸収する優しい仕様の結界だ。これで黄金鳥は死ぬこともなく、結界外にも逃げられなくなった。


『では、お前たちの結界を解除する。あ、言い忘れたが、お前たちの誰か一名でも逃亡を図った場合、お前らは全員魔物のエサになってもらう。それでは・・・解除した。行け』


キョトンとしたドラゴンたちだったが、恐る恐る森の外へと飛び上がっていく。そして、一瞬のうちに紫の結界には黄金鳥が満杯になった。黄金鳥は一瞬キョトンとしていたが、逃げようにも逃げられず、必死で鳴いている。


「キェーッ!!キエエェェェェェェェェェェーッ!キキキェーーーーーーー!」


「おお!懐かしいな!黄金鳥といえば、この鳴き声だな。しかしこれだけいるとうるさくてかなわん」


取りあえず、音が外部に漏れないように効果を追加で付与する。


「黄金鳥のあの鳴き声は、狩人の心が折れると言われているでありますのにー」


ゴンの驚嘆も俺には目に入らない。あっという間に黄金鳥はフェアリードラゴンに狩りつくされた。


『・・・39、40、41。よし、全員揃っているな。優秀だな、お前ら』


『あ、ありがとうございます』


「コイツらは、マジで使えそうだな」


とんでもなく悪い顔をして、微笑む俺がそこに居た。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 朗読で読んでるので、リピートのセリフが酷くつらい。 何度かイヤホンを外してます。
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