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もっとも近くて遠い場所  作者: 阿久津ゆう
第一章 故郷へ
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1話 「ジーランディア」

 南極大陸の近くに存在する国ジーランディアその場所がルベドの故郷である。


 南極大陸の近くに存在する国ジーランディアその場所がルベドの故郷である。その国は昔はキエフ大公国や琉球王国と交流を持っていたが突如として起きた氷河期により国の周りに広がる海が全て凍ってしまいさらには世界規模の異常気象その影響で他国との交易を完全に断ち切れてしまい今に至る


 「エリシア、調子はどうだ?」

 洞窟の入り口から吹き込む冷風が彼女の金糸を撫でるように流れる。数日前とは別人のような活力を取り戻した少女は、火の番をしながら振り返った。


 「だいぶ良くなりました。熱も下がって……」

そこまで言って口ごもり、「あの」と続ける。


 「私にも手伝わせてください。看病してもらった恩を少しでも返したいんです」


 ルベドは焚き火越しに頬杖をつき苦笑する。「病人が動き回るのは治らない病気の第一症状だぞ」


 「もう私は病人じゃありません」

彼女は胸を張ってみせたが、すぐ咳き込み膝をついた。


 我に返ったエリシアが慌てて飛び退く。頬が真っ赤になっていた。


「す、すいません!助けていただいてありがとうございます!」

勢いよく頭を下げる。ルベドは微笑みつつ埃を払った。


「怪我がなくてよかった」

立ち上がると、周囲を見回して指示を出す。


「ここには薬草だけじゃなく食料になる根菜もある。探してみよう」


二人は慎重に歩み始めた。時折吹き付ける風が彼らの頬を切るように通り過ぎるが、互いに気遣いながら進む様子は不思議と温かかった。



 「ほら見ろ」

駆け寄ろうとするルベドを制し、エリシアは懐から薬草を差し出した。


 洞窟に生える防寒草を使った自作のものだ。


 「昨日の夜、こっそり摘んできたんです」

 照れくさそうな笑顔。


 「……いつの間に」


 「私だって役に立ちたいんですよ」

強い意志の宿る青い瞳。ルベドは諦めたように眉尻を下げた。


 「仕方ない。明日からは簡単な仕事を任せよう」


 「本当ですか?」


 「ただし条件がある」

人差し指を立て、


 「まず第一に、毎晩体温測定」


 「えぇ?」

抗議の声を遮り、


 「第二に、無茶な採取は禁止」


 「でもそれは……」


 「第三にして最大の条件だ」

ルベドは立ち上がり、エリシアの前に膝をついた。


 「君自身をもっと大事にすること」


風が止んだ。彼女の金髪がゆっくりと肩に流れ落ちる。


 「……わかりました」

小さな頷きと同時に洞窟内に淡い光が射し込んだ。薄明かりの中に、二人の影が長く伸びていく。


 ルベドはエリシア体調が万全になり次第故郷に向けて出発するという、それに同意するエリシア。

準備のために二人は色々なものを採集したり探すために行動する


 薄曇りの空の下、凍てついた大地が延々と広がる。ルベドとエリシアは肩を寄せ合い歩いていた。


 「この辺りき貴重な薬草が自生してるんだ」

ルベドが指さす方向には、灰色の雪原に紛れるように鮮やかな緑がちらほら見える。


 「まるで宝石みたいですね」

エリシアが目を輝かせた。


 幼く背が低くまるでお人形のような姿をしている彼女の金髪は陽光を受けて黄金のように輝いておりまるで妖精のような美しさだ


 氷柱のように尖った息が空気に溶ける中、エリシアが嬉しそうに駆け出す。


 「待て、滑りやすいぞ!」

ルベドの警告も虚しく、少女は足を滑らせた。


 「うわぁっ!」


 短い悲鳴と共にエリシアの体が宙に浮いた。ルベドは反射的に身を投げ出し、柔らかい雪面へ飛び込むような体勢で少女を受け止めた。衝撃で二人は雪の上をごろごろと転がり、やがて止まった。


 「……痛たた」

ルベドが片腕で頭を支えながら起き上がる。その腕の中には、目を閉じて小さく丸くなったエリシアがいた。

 「おい、大丈夫か?」


 「……へ? ……はっ!」


 我に返ったエリシアが慌てて飛び退く。頬が真っ赤になっていた。


 「す、すいません!助けていただいてありがとうございます!」

勢いよく頭を下げる。ルベドは微笑みつつ埃を払った。


 「怪我がなくてよかった」

立ち上がると、周囲を見回して指示を出す。


 「ここには薬草だけじゃなく食料になる根菜もある。探してみよう」


 二人は慎重に歩み始めた。時折吹き付ける風が彼らの頬を切るように通り過ぎるが、互いに気遣いながら進む様子は不思議と温かかった。


 「なぁエリシア」

ルベドが突然立ち止まり、振り向いた。

「そろそろ敬語はやめにしないか?」


 エリシアはびっくりしたように目を見開いた。

「え……でも、それは失礼ではないでしょうか」

小さな声が震えている。


 「俺たち、もう友達じゃないのか?」

ルベドは腰に手を当て、ちょっといたずらっぽく笑った。


 「とも……だち?」

言葉を噛みしめるように繰り返すエリシア。

「そんな……わたしなんかが」

俯いてしまいそうになる彼女の視線を、ルベドが優しく持ち上げる。


 「……でも私たち、歳の差がありすぎますよね?」

エリシアの声が冷えた空気に吸い込まれる。頬がほんのり桜色に染まっているのは寒さのせいだけではないだろう。

「ルベドさん、二十歳くらいですよね? それなのに私はまだ10歳程度……」


 「俺は28だ.....」


 「28……?」

エリシアの目が点になった。

「私の三倍くらい!?」


 「まぁ正確には倍以上か」

ルベドが苦笑する。白い息が二人の間を漂った。


 「嘘です!どう見ても二十歳前後じゃないですか!」


 「老け顔なんだよ」

少年のような笑みを浮かべながら、ルベドが地面に屈み込んで何かを指さす。


 「ほら、この根菜だ。甘くて栄養価が高い」

話題を変えられたことに気づいたエリシアがぷくっと膨れた。


 「絶対若作りですよ」


 「そう言うエリシアこそ……」

ルベドが一瞬言葉を選ぶように目を泳がせる。

「……随分しっかりしてるな」


 沈黙が落ちた。風の音だけが二人の間を通り過ぎる。


 「あのね、ルベドさん」

突然の呼びかけにルベドが顔を上げる。エリシアが真剣な眼差しで立っていた。

「私ね、ずっと一人ぼっちだったの」

小さな手が雪に触れ、指先がすぐに赤くなる。

「だから『友達』って……どうしたらいいのかわからない」

細い肩が小刻みに震えているのが見て取れた。寒さか、それとも別の理由か。


 ルベドは静かに近づき、自分のマントを外して少女の肩に掛けた。

「簡単なことだよ」


 「本当に?」

不安げな瞳が問いかける。


 「一緒にいれば自然とわかる。焦ることはない」


 「でも、いつまでも他人行儀でいるのも変ですよね」

エリシアが少し考えて言った。


 「なら試しに一つお願いがあります」

彼女が両手を合わせる。

「これからは『ルベドくん』って呼んでみてもいいですか?」


 予想外の提案にルベドが一瞬固まった。だがすぐに口元が緩み、頷く。

「ああ、構わない」


 「ル……ルベドくん」

照れくさそうに呟くエリシア。頬の赤みが濃くなった。

「うぅ〜やっぱり慣れないかも……」

マントの中で縮こまる少女を見て、ルベドは思わず噴き出した。


 「慣れなくていいさ。ゆっくりで」


 「……はい」

小さく頷くエリシア。その顔には初めて見る自然な笑顔が浮かんでいた。


 「さぁ、採集に戻ろう」

ルベドが促すと、エリシアは意を決したように前に出た。


 「わたし、頑張ってたくさん探します! ルベドくん

 

 この日二人の関係は少しだが確実に変わった。敬語はまだ残るものの、その響きには以前より親しみが感じられるようになった。そして何よりも、お互いを見る目がほんの少しだけ、温かくなっていた。


 凍てつく大地の上で、二人の影が並んで伸びていく。



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