Ch3.1 イッツァファンタジーワールド(3)
虚空からドデカイ闇の奔流が流れ出す。
それに紛れて10メートルは超えた石造りのゴーレムが草原に現れ出たぞい。
まるで小城を凝縮したかのような存在感を放っている。
その造形を見てみると、脚部分と頭に比べて腕全体が魔法の力で浮いているのかバカでかい上にバカ長い。そしてそれを支える肩部分も本当に冷蔵庫のような大きさでとてもマッチョだ。……どんな構造だこりゃ。
例えるなら、腕をもっと大鐘のように太くゴツくしたような岩のゴリラだろうか。
完成度高けーなオイ。ネオにアームが破壊力あるなゴーレムとでも言おうか。
「――じゃあ3人全員で挑戦する? それとも――」
「カケル、いきまーす!」 「えまじか」 「いってらっしゃい」
カケルが一人で飛び出していく。……おいおい。ガ〇ダムにも乗ってないのにそんな無茶な。
相手は10メートルを超えた巨体な石の筋肉の塊のバケモノだぞ。そんな陽気に行くようなもんかよ……。
――って。あれれー?
カケル……オマエが、ガン〇ムだったのか。
カケルという旋風が、その巨体を触れた端から細切れにしていく(不)自然現象が、僕の目の前に起きている。
まるで刃の竜巻に巻き込まれたかのように、ゴーレムの全身が切り刻まれていく。
しかしゴーレムも幻想の化物として負けてられない。
『――GAAAAAAAAAAAAAA‼』
ゴーレムがカケルの攻撃の意趣返しとして、突風を生むかのようなスピードと重さで腕を鞭のように縦横無尽に振り回す!
……質量の法則を見ていて疑いたくなる。まるで巨大なハリケーンが目の前にあるかのような迫力ある反撃だ。
しかも予備動作がまるでなかった。その鈍重な見た目に反して速すぎる反撃が地表を覆い隠している。
しかしその攻撃もカケルの影のみを掠めただけ。
気づけばその姿は見えなくなってしまっている。
……あーそうか。地表にいないとするなら――。
――黒の斬撃が空から流星のように降る。
気づけば肩口から股下まで、ひときわ大きく深い傷が浮かび上がった。
たまらずひるみあがるゴーレムの足元には、姿を消していたカケルの姿。
そしてカケルはそのまま、上を向いて身をかがめ、ゴーレムの足元の地面の蹴り、――また姿を消しさる。
まるで動きを追えない。
……あ。見つけた、と思ったら。
――おいおい。
縦横、無尽で、目が、回る。
よく、こんな、スピードで――。
残像が見えるかのような速さで動き回りつつ巨人を切り裂いていくカケル。
……あ。肩から腕が落ちた。細めの脚も度重なるダメージから崩れて……ああ、無情。
モノを言えぬ石像は断末魔の代わりに、地面に倒れ落ちドォンと鈍い音を響かせる。
トン、と仰向けに倒れたゴーレムの広い胸にカケルが乗った。
……パワースーツってあんなに流動的に動けるもんなのか。素直に関心する。同じスキルを持っていても僕には直線的な動きしかできないがな。
そして気づけば首を斬り落とされ、胸を十字に切り開かれたるは見るも無残な岩石の巨人、だったもの。その大部分は空間に溶けて消えてなくなっていく。
残されたのはカケルによって切り出されたゴーレムの一部のがれきだけ。とてもスピード感のある諸行無常であった。
「――流石ね。……ま、このくらいはできて当たり前、か」
……アレが当たり前ぇ?
あんなゴーレムを倒すビジョンなんてわかないんだけど。
……うーん、どう攻略したもんか。
――幸い相手は無機物らしく、意思は感じ取れない。
だったらやりようは……あるのか?
「……はい、じゃあ次ね。サモン/コール:――ゴーレム」
またもや瞬時に虚空から闇に紛れてゴーレムが現れる。
いや早いって。そんな流れ作業的に召喚しないでくれませんか?
僕はまだ心の準備も、対策も終わっていない。流し目で横のエミリに助けを求めようとすると――。
「核の位置が分かっちゃったら、……もうイージーね」
エミリの手がおもむろに召喚されたばかりのゴーレムを指さすのが横目に見えてしまった。
何かが、僕の耳の横を轟音だけ残して、豪! と飛んで行く。
……豪快な粉砕音が響きわたる。
……ゴーレムの胸の中心に風穴があいている。
……人一人入るようなドデケェ穴があいている。
「はい、おしまい。アキ、……じゃあシメをお願いね」
ギギギ、とゴーレムのように顔を隣に向ける。
……は?
どこからか瓦礫の塊を、結構な早さで回転させながら身体の周りに纏わせているエっちゃんがそこにいるではないか。




