Ch3.08 ラブリーなコンフェッション
見るも鮮やかに夜空に咲き誇る花火は、僕の心と体を震わせ揺らしてくる。
しかしその華麗な響きも、僕の心臓の早鐘にかき消されていく。
「――さん! 好きです! ちゅき合ってください!」
僕は悪くない。花火だとか、周りのカップルだとかを見て気持ちが昂ってしまった。
これはもうまぎれもない事故だ。僕の意思なんて介入していない。
他の二人と夜道ではぐれて、花火が上がりはじめ、素敵な横顔を見つめていたら……気づいたら、告白してしまっていた。
「――そう、なんだ。……てっきりキミはあの子のことが好きなんだと思ってた」
びっくりしたような、初めて見る表情がそこにある。
その変化が見えるのは、とてもうれしい。
彼女の色んな表情を見るのが好きだ。
これは……もしかして、もしかすると、好感触なのでは――。
――こういうのは、……はっきり言うようにしてるの。
……ごめんね。私、好きな人がいるの。だからアナタの気持ちには答えられない。
アナタは悪くないわ。悪いのは私。あなたの良さに十分に気づいていない私が悪いの。
ありがとう。好きだって、言ってもらえて嬉しかった。
花火のようにはかなげな姿は、いやに美しかった。
――――――――――
――――――
――ああ。そうなのだ。そういう正直で、きちんと誠実にはっきりとモノを言える性格を好きになったのだ。
まっすぐと綺麗な目で僕の目を見つめて話すその凛とした姿に、僕は惹かれたのだ。
……僕の恋は、もう終わってしまったのか。
ああ。
心が砕けそうになるのを必死にこらえる。
自分を自虐した発言をしたいようにかられるが、もうすでにお礼を伝えてもらってしまった。先手を取られてしまった。
それではもうしみったれた、慰めも効かないセリフは吐けないじゃないか。
彼女は彼女自身が悪いのだと僕に伝えてくれた。ありがとうと、他人の好意に対してはっきりと感謝を述べてくれた。
そんな風に思える人、伝えてくれる人など他にはどこにいようか。
こんな立派な人を好きになれたのだ。
それを誇ろう。
ああ。そうだ。
……そう思いたい、のに。
無理だ。
――なんで告白なんてしてしまったんだ違う機会があったんじゃないか僕は変な顔をしていたんじゃないかもっといいタイミングがあったんじゃそうだあと半年は温めておこうと思ってたのにていうか好きな人って誰だアイツかアイツなのかそうだ今日も誘ってくれたのはアイツだった憎たらしいもうすでに付き合っているのだろうかじゃあなんでアイツは恋愛相談なんて乗ってくれたんだちくしょうふざけんなチクショウあの野郎ちくしょうチクショウ――。
僕はなんで、僕なんだ。
彼女に見合うような僕となってから、伝えればよかった。
電車が揺れるなか、心の揺れは徐々に収まっていく。
気づけばすでに友人たちの姿は無く、僕一人違う駅へと帰路に向かっている。
みんなやりたいこと、望むことは違う。
僕だけの現実、僕だけの世界ではないのだ。そんなことは当たり前だろう。
だけどそんな現実も、他人も、すべてがもっと嫌いになりそうだ。




