Ch3.07 ワンダーなイベント(4)
「――なん……だと……? ホラーエリアの霊圧が……消えた……?」
嘘……だろ……? ホラーエリアへとついた矢先に、またもやクリアされてしまったという通知が届いてしまった。
終わりだ……。
そもそもこの世紀の恐怖エリアにて心拍数を上げないでクリアするには、相当の強心臓が必要だ。
ここでは物陰から脅かす系はもちろん、いきなり暗闇になって別にエリアに連れ去られてしまったり、チェンソー男子 (イケメン)に追いかけられるなど、ホラーな予測できないランダムハプニングに巻き込まれるエリアである。
紛争帰りの兵士にはそれを児戯と捉えられるかもしれないけどさあ……。
それもたかが1時間半程度でクリア者が出てきてしまうなんて。
しかし単にクリアするだけでなく、最速クリア記録の更新をどんどん更新されるとは、周りの一般人たちからしたらたまったもんじゃない。
「……しゃーない。切り替えていけ。次いくべ」
「……正直、ラッキー、ね」 「そうね。これで入らなくて済むわ」
友人たちは気持ちを切り替えられている様子。
……チクショー。でもいいとこ、見せたかったなあ。
……でもまあもしかしたらオサレではない自分を、ビビッて見せることになってしまったかもしれない。
リスクを避けられたと喜ぼうか。
今日告白する気なんかさらさらないが、少しでも好感度は高めておきたかったのだが……!
なんて考え事をしていたら、二人の僕と年の近い男女ペアが会場から出てくる。
少し足早な様子。道を開けよう。
「――すごかったわね。 映像見てたけど、まるでお化けが出る場所をあらかじめわかっていたような動きだったわよ」
「あー、うん。なんとなーくだけど、脅かしてやるぞ! ていう意思をぼわーっと感じられたから、避けて通ってたらなんか早めにクリアできたよ」
「それは不思議ね。……それでも全部は避けられないでしょうに。 幽霊役がかわいそうになるほど真顔だったのも不気味だったわ」
「……誉め言葉アリガト。いやいやでもそっちこそ。もう探し人を見つけてんじゃん。幽霊よりもその早さに驚いたよ」
「ワタシのプロファイリングにかかればそんなのお茶の子さいさいよ。ほら、急ぎましょ。多分、もう終わるころよ」
他の二人も達成してるといいけど、なんて会話をしながら彼らは僕の横を通り抜けていく。
…………。
……。
……え?
まさか彼らがクリア者なのか?
先ほどの彼らの会話の内容を遅れて脳が理解したがもう遅い。振り返ってみても、彼らの姿は消えてしまっている。
「というか、どっかで見た顔ぶれだったような……」
それもつい最近見た記憶がある。どこだったかな。
「おーい! 行くぞ!」
僕たちも出発するようだ。今からどこに向かうか分からないが、進行方向は彼らが消えた先と一緒みたいだ。
もう一度会えば思い出せるかな。
ていうか、なんでこんなに気になっているんだ?
ただの、赤の他人じゃないか。僕らしくない。
「――どうしたの? 考え事? ……今日はいつもよりこころなしか静か、よね」
……うお! 油断した。気づけば可憐な顔が隣に。
「そ、そうかな。タハハー。なんか緊張してるのかも」 ――あ。やばい。口がツルツルと滑りそうな感覚の前触れが。
「緊張? なんで? いつものメンツじゃない」 ――確かに。やばいやばいなんか言い訳を。
「えーっと、あれだ! ほら今日はレアなイベントに巻き込まれてるから」 ――セーフ! ……セーフ、なのか?
「……ふふ。変だねキミは。ほら急ごう。おいてかれちゃうよ」
そう言って彼女は、不思議な魅力に満ちた笑顔を僕に向けてくれるのであった。
……いつからだろうか。たぶん、ここ最近の話だ。
彼女に不思議と好意を寄せるようになってしまったのは。




