Ch3.05 ケース#4567 超人戯画
「ミヤミヤ~、キャット~! 今回はコロン姫を本国のエルフ族に引き合わせたらどうなるかを検証していくよ~」
はるばる海を越えてたどり着いたるは砂漠の中の王宮。
全体的に白とくすんだ赤色の配色の丸みを帯びた多くの建造物が目立つなか、白いタイルが敷き詰められた往来にエルフ族と思われる住民たちがローブを深くかぶって敬虔に出歩いているのが、丘上からだとよく見える。
「姫、ご油断なさるな。ここはすでに敵地ですぞ」
カンカンと日照りが続くている中、見えないが西洋風の甲冑姿であろうじいやが話しかけてくる。
……透明化の魔法を使っているのにこの暑さだ。もし解いたらこの黒い魔女コスでは一気に全身の体力と水気を吸い取られてしまうだろう。
「じいや~。ここの親玉がいるのってどこかな~。てゆうかあっつ~」
「……姫はどうお考えで?」
「わかんなーい」
「……定石通りならば、一番攻めにくい場所にありましょうぞ」
「なるほど~。……じゃああの一番高い建物に、一気に転移しようか~」
「――ハ?」
唐突に景色が一変する。見えるはきらびやかな王宮の一室。装飾に凝っているのか部屋の各所に紅い宝石やタペストリーやらが飾られている。しかしそれでいて上品なのは、所々に観賞用の花々や草木が飾られていて、見事に鮮やかな赤銅色の壁とマッチしているからかな。
どこかで見たような景色だねえ。例にもれずここにも多くのエルフ族が敬虔そうに一列に佇んでいる。
……うーん。少し数が多いなあ。
そして奥には炎を全身にまとった偉丈夫が玉座に座っているじゃないか。
……ピンときた。アイツが親玉だね~。
「――何者ダ?」
「……国王? なにをおっしゃって」
「次元の揺らぎに気づけ阿呆。……それが貴様らの死因ダ」
「……王よ、なにを――」
「爆裂魔法っと」
ゆびをふる。
――瞬間、音が消える。
「――やっぱ魔女コスは便利だねえ」
生き残ったのは3人。親玉と二人の壮年の美人エルフ。
この人数なら、魔法にも対応できるかな。
先ほどまであった王宮のきらびやかな一室などもう見る影もなく、壁もないまま空と一帯になったただの吹き抜けの空間となった。
「姫。お怪我は」 「だいじょーぶい」 前に立っているじいやが上手く先ほどの魔法を防いでくれたみたい。
縦横に広がりながらすべてを破壊する謎の衝撃波を生み出す、という設定の爆裂魔法。
自分たちもまきこんでしまうので、じいやがいないと発動できないのが玉に瑕。
……っとと。集中。集中。
「――炎上」
……透明化が解かれた、だけじゃない。
辺りが熱気に包まれている? というか地面全体がまるでフライパンの上にいるかのように熱い。
「まア、弱火にはしといタ。そんなに急ぐなよヨ。じっくりと場を温めていこうじゃあねえカ」
……火の魔法のフィールドを展開したのかあ。流石に空間に干渉する魔法の押し付けあいでは分が悪い。
それに……、残念。もう少し長く遊びたかったのに。
私たち3人の姿を目視されてしまう。
「オマエらもこれくらいなら耐えられるだろウ。なあカロン、エロン? ……それにオマエも当然耐えるよなア。
――コロン」
トロンととろけた目をした、命令を聞くだけの使い魔にとなったコロンの存在が確認された。
案の定に響く脳内アナウンスを秒で消す。
見るからに動揺しているエルフ族二人と、燃え盛る親玉の一挙一動に集中する。
ここからが勝負だ。
……さてさて、どのコスチュームでいくかな?
やっぱり、ここは先ほどの爆発にちなんで――。
「――じいやのことかあああああああっ!!!!!」
魔女コスは体の表面から溶け落ち、新たに格闘道着を身に着ける。
「……いやわしまだ死んどらんし。魔法で木っ端微塵にしようとしたのも姫――」
「――はああああああッ!」
数瞬で髪を逆立てた金髪のチャンネーに変身して、突撃する!
「……グハハ、面白い魔法だナ。コロン、お前が負けたのも納得ダ。弱火とはいえ我が塵界の内で新たな魔法を発動させるとハ」
「全く――哀れな」「姉様……」
先ほどの変身にかかった数瞬で二人のエルフも落ち着きを取り戻してしまった。
――ならばもっと攻めるまで。
走りながら、気功破を放つ。
射程も長く、レールガンと同程度の威力を即時連射できるのが強みだが――。
「砂塵よ――!」
……やっぱりね。たかが目に見える程の粗い砂風に、たやすく軌道をそらされてしまう。
魔法とはイメージ。この気功破ではいままで妄想してきた描写的に、相手を決めきる威力を想像できない。
だからこそ、このコスチュームでの強みは――。
「――ワタシが受けます! 姉様は反撃を!」
障壁魔法を張ったエルフが飛び出てきた。
「――じゃま」
拳がピトンと相手の胴体に当たった瞬間……文字通り、彼女は吹き飛んだ。
それも下半身だけ残して、木端微塵に。
やっわ。
倒れ落ちていく下半身を飛び越える。
もう一人のエルフは先ほどの拳の威力に驚きを隠せないのか、手が止まっている。
まあ宇宙をも壊せる拳だ。この程度は造作も――。
「……は?」
私の胴体を、今ミンチになったエルフの腕が覆っている――?
「捕えました! ……王よ! この侵入者、只者ではありませぬ! どうか……っ今一度、力をっ!」
しかも障壁魔法を私の周りに覆って、私の動きを止めている……!
これを破るには確実に数瞬はいる。正直、親玉以外を舐めすぎていたかも。
やるね。まあ、これはこれで……。
「……フム。そういうことか。エロン。良い働きであったが、……しかしそれはならん」
「「――ッ?」」
「……へえ」
「これほど破壊を起こした目的が、まさかただの敵情視察とはな。ここで我が力の片鱗を魅せるのは、適切ではなイ。……クハハ。気づかぬと思ったカ。キサマら、急ぎすぎだ」
「……っち」
気づかれてたか。
『――データ転送が完了しました。現実への帰還を開始します。――3,2、1。転送開始』
コロンが大陸で同族に確認された時点にて、1つのクリア条件が達成されてしまっている。
だが取り高は十分。
そろそろ期間限定イベントも始まるし、ここらで満足しとこう。
「……ではでは~、来週もお楽しみに~!」
あとの音声は、編集でごまかそう。
うっふっふ~。リスナーの皆の反応が楽しみだなあ~。




