チャプター2 エピローグ 現実回帰
『クリア条件#2の達成を確認。パンパカパーン! おめでとうございます! チャプター2のクリア目標を達成しました! 5分後に現実への帰還を開始します。進行状況のデータ転送のため……』
辺りの白んでいた景色が唐突に暗くなっていく中、アナウンスが脳内で虚ろに響き渡る。
「……心に刻むよ。コロン、さん。僕はあなたのようにはならないよ」
ブゥさんが言っていた言葉の意味を色々と理解した。理解させられたと言っても過言ではない。
そして僕が使っていた先ほどの魔法の仕様も。
あれは例えるなら――。
「――緊急回避魔法」
他人の悪意や攻撃の意識を無意識に読み取り、自分の身をその危険域の外までズラす魔法。
常時展開されている以心伝心の魔法の派生とも言える。それも根性のねじ曲がった方向性のものだ。
実際にその種の本物の転移魔法を使用されたのも大きいのかもしれない。しかしいままでの経験が、特にチャプター1での数ある逃避行もとい回避行動が皮肉にも実を結んだということだろう。
「思い返せば、……逃げてばかりだったしなあ」
今も、あてもなく分析して、仲間を失ったことの切なさから逃げようとしている。
「終わった、みたいだね」 「……うん、なんとか」 「えらく強かったね」 「……いやほんとだよ。ドラゴソボールの住民だろ、アイツ」 「……どっちかっていうと、ワソピースじゃない? 火拳‼って感じの、攻撃だったし」 「あーそうかも。アイツが見聞色の使い手じゃなくてよかった……」 「そうだね。エーなんとかさんも、使えなかったしね」 「そこは最後まで名前言おうよ。えーなんとかさん、だと普通に名前全部忘れてるようにしか聞こえないよ……って――」
――はぁっ!!?
ヤッピーと、無表情で、顔にピースの手をかざしているケイちゃんが、そこにいる。
所詮アイツは敗北者じゃけェ、とかつぶやきながら余裕の表情で。
「……………………………………えーっと。どう、やって?」
「炎、見てから回避余裕だったよ。
……二人も、そこで無事に寝てる。突然の重力加圧だったから、気絶しちゃったけど。君は前に出て行っちゃってたから、首根っこ掴めなかったの」
……二人を掴んで空中まで炎から逃げたってこと?
駆け寄ってみると二人とも意識なくぐったりしてるけど、呼吸はちゃんとしてる。
二人とも傷も全身になく、命に別状はなさそうだ……!
……ん? マロンの頭を押さえて、うーんうーんと、痛そうに寝返りを打ち始めた。
「――そっからは変身魔法で姿を隠しつつ、度々炎を避けながら、試合観戦。途中マロンが起きて、なんか叫びだすから、黙らせたけど」
……おい。ぶん殴って気絶させたんだな? 確かになんか聞こえた気がしたけど、幻聴かと僕も思ったよ!
ちなみに僕は今も絶賛絶句中である。
二人を助けてくれたことを絶賛したいが、驚きで声がでない。
……本当に生きている、のか。
「…………はぁ。良かった……ありがとう。助かったよ」
「……。なんでキミがお礼を言うの?」
「いや、そりゃあ僕の大切な人を助けてくれたからさ。……二人にお別れを伝えたいけど、多分起きないかぁ」
「……」
「あとこのままここで寝てるのは少し心配だけど、あと1時間強あれば、起きてくれるかな。もし起きなくても女神が――」
「――なんでそんなことを気にするの?」
「? なんでって――」
「……アキ。気づいてる? ここは現実とは、違うんだよ」
絶句。
「――キミ、今回1回もステータス画面を、見てないでしょ。……だからだよ」
――――――。
「……ステータス、データ転送し終わる前に、確認しといたら?」
――――――。
………………………………。
………………。
……ステータス、オープン。
HP 21→23 (New!)
MP 39→45 (New!)
ATK E→Dランク (New!)
DEF Eランク
AGI E→Dランク (New!)
DEX D→D+ランク (New!)
LUK E→Dランク (New!)
所持スキル:テレパシー(以心伝心) 戦闘能力向上_Lv. I→III(New!) 走力向上(E→D)(New!)恐怖耐性(E→D)(New!)魔法耐性(D→C)(New!)
転移魔法(偽)(New!)
踏み込み強化(E)(New!)
称号:ファーストサバイバー(Ch.1)
――ステータス更新内容がたまりにたまっている。
どうでもいい。
「……じゃあなんでこの人たちを助けたんだよ」
なんて悲しみというか、苛立ちというか、怒りというか……複雑な感情を込めてそうつぶやいた途端、データ転送は完了した。
僕たちは白い粒子となって飛ばされていく。
この世界が作り物かのように、途端に意識してしまい、返って冷静になる僕。
……自分の薄っぺらさを自覚してしまい、嫌になる。
――でもこの気持ちは、作り物ではないと思いたい。
「ありがとう、ブゥさん。マロン。……みんなのおかげでとっても楽しかったよ」
――また、会えるといいなあ。
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――――――――――――
――――――
「……ッハ」
目の前にはレトロなゲーム画面。手には古い、新品のゲームコントローラー。
ここは……、フフ。……電池切れの無い都市ではないか。
なるほど。彼奴ら数百年おきにこの世界へと降り立つのか。
となると次は……、戦争の真っ只中ではないかのう?
……ふむ。知恵でも授けに、あやつのもとへ疾く向かおうか?
……。
いや、それは些事じゃな。
――ここは酒場の奥の秘密のゲーム部屋。
おーい、スゥ! ミルクじゃ! ミルクを持ってこい!
――ならば、厨房まで届くように声をひと際大きく響かせよう。
あら女神ちゃん。機嫌はなおったのかい。ゲームを取り上げてから ずぅっと私と話さなかったじゃないか。
おぅ? そんなこともあったかのう。ふははは。
今はこの、ひと時の幸せな夢に浸っていよう。温かいミルクの味に囚われよう。
スゥや。ありがとうのう。ワシはお前のおかげでヒトとなれた。
目をぱちくりするスゥの様子が見て取れる。ああそういう反応をするのか。面白いのぅ。
――……しいのぅ。
どうしたんだい、女神ちゃん。なにか悪いものでも食ったのかい。
あれ、……ちょっとアンタ! どんどん薄れて――?!
ふっ。おぬしもじゃぞ。……さらばじゃ、我が――。
――***よ。
声がかすれていく。あたりの景色が一瞬で吹き飛んでいく。前回と同じだ。
もう届かない。情報だけが今のワシへと引き寄せられていく。
しかし、悪くない夢だった。記憶を思い起こせるのも悪くない。
……さて。
異邦人よ、いや今は旅人か? それともなんじゃ、勇者にでもなるか?
ふふ。
さて次会えるときは――。
どんなキサマになっているのだろうな。
チャプター2はこれでお終いでっす。ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
評価やブックマーク登録もどんどん増えてきていて、本当に感謝感激です!
おかげさまで文字数もちょうどラノベ一巻分程度となりました。去年の9月からプロットやらなにやら勉強して書き溜め始めたので、初めてにしては自分でも上出来だと思います(誉)
主人公のアキヒト君もまだ色々とてんやわんやなですが、これからも成長し続けてくれるでしょう。温かく見守ってやってください。
あとコロンさん怖すぎ。本当は1、2回更新で最終戦は終わるだろうと高を括っていたら、閃光弾食らったラージャンばりに暴れまくったので(まあ実際に食らってましたが)、戦闘描写が自分でも予想以上の展開に。書いててこんな人とは結婚したくないと思いました。
それはさておき、次章はバトロワ編です。フォートなナイトとかエペでおなじみのアレですね。
まだプロットの段階なので、1か月か2か月はお待たせしてしまうと思います。
また遅ればせながら新年のご挨拶を。皆さまの一年がより温かいものになりますよう願っております。




