Ch2.9 それぞれの願い事(4)
盗賊の言葉に耳を貸す、善人どもめ。
周囲が朝日で照らされ始める。朝焼けの光が残った炎と同化していて、まるで一種のオーロラのようだ。
『……フン。骨も残らなかったか』
炎の直撃を受けた彼らは、姿かたちすべてが灰となったようだ。必要以上に、魔法に威力が乗ったか。
しかしここは荒野。燃え移るものが少ないため、炎の残滓もどうせすぐに消える。
ただ同胞の仲間たちも、直撃ではなかったためか形は残っているが、やはり全滅していた。
『――ハ』
あらん限りの怒りを発露しつくしたのだ。当然だ。
虚無感が心に訪れる。
……唯一の肉親も、仲間たちまでその怒りで燃やし尽くしてしまった、か。
後悔はしない。いや、するな。
頭を働かせるな。
心は鈍らせろ。
……そうだ。あの魔薬の原料を食べよう。自我を失うが、要らない感情も捨てられる。
『ッハハ。どうして、こうなったんだ』 違うやめろ意識するな。自意識を燃やし尽くせ。
私は悪くない。――そうだ、本国のやつらが悪い。あいつらが私の実力を認めてくれなかったからだ。あいつらの憎たらしい顔も、全身も燃やし尽くしてやりたい。
……でも嫌がるマロンを、私が寂しくないように連れてきてしまった。
それだけは、認めよう。私の罪だ。
そしてその妹もこの手で燃やし尽くしてしまった。
――せめて大人になるまでは責任もって育てようと思っていたのに。
待て。思い出すな。止めろ。
「……ああそうだった。私の、せめてもの***は、あの子を――」
怒りが強すぎて、炉が、決壊してしまう。
「――うる、さいなあ。そんなに言い訳がましくベラベラと。……自分を見ているようで嫌になる」
槍が 突然 視界の端から――。
――飛んでくる?
「……ッ!」
――反射で障壁を展開するが、間に合わない!
ヒュン、私の耳の横をかすめ、槍はそのまま私の後方へと突き刺さった。
「――くっそ、トッツォのようにはいかないか。いやアイツも外してたな。……僕とは違う理由で、だけど」
……なぜ、生きている。
いや、なぜそこにいる?
炎の届かない、私の視界から一寸外れた遠い位置に、さきほどバカみたいに前に出てきた勇者が立っている。
「おいコロン。一対一での決着をご所望だろう。僕だけは、……また、生き残ってるぞ」
しかも無傷……だと? 一体、どうやって――。
『――アンタのモノローグは終わりだ。そんなしみったれたもの、……自分のだけでとうに聞き飽きた』
外れた槍の代わりに、彼の心の声がなぜか心に突き刺さるように聞こえた。




