Ch2.9 それぞれの願い事(2)
気づけば夜空が白んできた。もうすぐにでも朝日が差し込み始めるのかもしれない。
「――?」
そんなやくたいのない景色の変化に気付くと同時に、闇の隙間からなにかが転がり落ちたことにも気づく。
それはこぶし大のサイズで、筒に入れるような円柱状の――なんだろう?
――カッ、とあたりがいきなり昼間になったかのような眩い光に包まれた。
視界が、灼かれる――?!
「――よぉーし兄弟。手早く済ませるぞ」
慌てて自分の周囲に障壁を展開するなか、ドンドン、と聞いたことのない野太い音と、同胞たちの悲鳴が聞こえてくる。
突然の、冷水を浴びせるような敵襲。
――目を灼いてくるとは。
……ふざけるなよ。
灼くのは、我の専売特許だ。
「――消命火!!!」
自身の周りを無差別に焼き尽くす。
この方法なら見えずとも、展開できる。
魔法の常時展開ほどではないが、2つの同時展開もなかなかの高等技術。
相手も、……味方もこの攻撃は予想出来なかったに違いない。
目の灼けは収まってきた。
さあ、代わりに灼熱に焦げつくされた姿を見せろ! ッアハハハハ!
「……ハ?」
自分のバリアの周囲に周り全てを守るかのように、水の障壁が覆われている。
――知っている限り水の魔法をこんな風に使うやつは、一人しかいない。
「……愚妹。生意気にも裏切ったのか」
視界の端に、涙を浮かべながら我を売り渡した裏切り者の姿を捉える。
それに加えて勇者たちに、ピグモン族の男性が一人。
周りの同胞たちはすでに半分以上が戦闘不能か。
……些事だな。どうでもいい。
今 なのは、あのビクビクしている妹だ。
目にもう迷いはない様子、か。
……ッハ。いつのまに、……あんなに大きくなっていたんだ。
太く、たくましく我を売り渡したのか。
そうか、……そうか。
ならば、こうしようか。
視線を誰からも外す。
「勇者、サマ。我と一対一で決着をつけさせませんか? もし我が負ければ、我らを全面降伏させましょう。
……そちらもあまり血を流すのは好まないのでは?」




