Ch2.7 誰が宿敵か(5)
――そして残るは静けさのみ。
人の子らの、夢や希望、そして執念は無為に潰えるのだろうか。
――否!
「――ッおいおい女神ちゃん! 少しは加減っつうものを――?」
なぜか女神の真後ろに立っている僕の姿を、ブゥさんに見られた。
……気づかれる前に、このままっ!
――このままっっ 振 り 抜 け っええええええええええええっ!
――ド、ゴボォン、とハンマーを振り抜いたような音が目の前で響く。
きょとんと、今まさに振り返ろうとした女神のほっぺたを、僕のおもいを込めた拳を振り抜いた音が、空間いっぱいに響き渡った――!
「ぅぼげえっっ!」 顔がひんまがったまま、白目を向いて前方に吹っ飛んでいくスライム女。
そして壁に背中から激突し、そのまま動かなくなる。
なんか知らんが、うまくいった! よし、このまま、気が晴れるまでボコボコに……!
「――動くな」 ガチャンと、いつのまに出したのか、最初に出していた筒の短い銃をこちらに向けるブゥさん。
「……兄貴」
「しらじらしい事をいうな、坊主。……なるほど、オゥルともグルだったのか。騒動により女神を呼びだし、そしていざ解決した拍子に油断させての不意打ちとはな……敵ながらあっぱれな作戦と決行力だ」
あの女神ちゃんまでのびさせちまうとは……。初めて見たぜ、あんな無様に崩れ落ちてる女神ちゃんは、などと言い、戦々恐々とした顔でこちらを油断なく見つめるブゥさん。
女神のほうをちらりと見ると、尻を空につきだして突っ伏した姿勢で、ピクピクと気絶している。
「そうだな、この街に入って以来ずっと泳がせてきたが、ここらでオマエを現行犯逮捕させて――」
――途端に、とん、僕たちの真横で銀髪の少女が降り立った。そして追随するように、ドンと、鈍いなにかの着地音が響く。
「――なに、どういう状況? ……なんかコソコソしてた、いかにも怪しいやつを捕まえたけど、知り合い?」
先ほど逃げたオゥルの首根っこをつかみながら、僕のパートナーがこの極限な状況に降り立った。
それを見たブゥさんは銃を掲げたまま、目を白黒させ、事態の把握のためにせわしなく動かす。
その巡る視線の先は、こぶしを振り抜いた姿のままの僕と、オゥルを取り押さえているケイと、静かに失神しているクソ女神。
――緊急クエストを発端としたこれら全ての混迷としてきた状況は、こうして再び束の間の静けさを取り戻すのであった。




