Ch2.4 魔都アンダイン(1)
――ネオン都市だ。複数の高いビルのような建物から漏れ出る都市の光は、鈍くもしっかりと僕らを照らす。
……世界観、ぶっ壊れてないか。前回は開拓もままならないジャングルの孤島での冒険で、今回からいきなり現代の様相に一気に近づいてしまっている。
「――すみません、勇者様。案内はここまでです。別の任務があるため一旦離れます」
え? ま? ゲストキャラ離れるの早くない? 一個もイベントらしいことしてないよ。
この三日間でそこそこ仲良くはなったかと思っていたのだが、NPCとの協力プレイは一旦お預けらしい。
「一週間後にお会いしましょう。私から勇者様方にコンタクトを取ります。では――」
「いやちょいちょいちょい。待って待って。えーっと、まず僕らなにしたらいいの」
指示待ち人間は怒られるともいうが、クリアな指示がないと人間そうは動けない。――最終目標的には女神をぶっ飛ばすということははっきりしてるけど、さすがに投げやりすぎないか?
「……そうです、よね。ごめんなさい。……勇者様方にはまず、この都市の様相を見ていただきたく。そこから後、作戦を立てましょう」
――おいおい開発陣さま、攻略のための導線意識しようよ。今の会話からも全くヒントを得られなかった。
……このチャプター2もまた調整不足か?
「うん。一週間後ね。わかった。それで、そうだな。……まずどうやって侵入したらいい?」
魔王の城、もとい女神の統治する都市だ。跋扈する魔物たちもものすごく強いに違いない。様子を見るにもなにか戦略は必要だ。
「いえ瞬入、というか門から入るのに特に問題なんてありません。彼らは旅人を歓迎します」
……? えここラストダンジョン的なおどろおどろしい場所なんじゃないの? どういうこと?
――――――――――――――――――
門に向かうと、普通に入れた。なんなら太った門番に気さくにあいさつもされた。
「……」
見るからにネオン街の雰囲気を醸し出す都市。しかしネオン街だからといってダークで汚いという印象は無さすぎる。ごみ箱は至る所に設置されており、あふれかえってもいない。
ガタイのやたらいい悪漢やらガラの悪い商人などもいなく、歩いている人(?)たちは普通に道端で会話をしては通り過ぎていく。
簡単に言うと清潔でいて、夜でも明るい平和な都市だ。
悪の巣窟の都、には遠くからはネオンの明かりのせいでそう見えたが、中を見るとまるで違った印象を受ける。
いやでも女神がここを統治してるんだろ? …………まさか住民全員が操られてるとか?
邪推も邪推、というか暴論の域の推理考察しか出てこない。一体何がどうなっているんだ。
「おうおう兄ちゃん。見ねえ顔だな」 ズンズンと重い足音が後ろから聞こえてくる。
……来た。 間違いなくこれはゲームでよくあるからまれイベント……!
後ろを振り返る。これは……見たら分かる、悪い奴やん。明らかに悪人面してやがるぜ。
ピグモン族、とエルフたちが言っていたか。この都市の住人は、見た限り全てそのピグモン族だろう。
体格がひと回り、いやふた回りほど僕より大きく、顔は人間と豚を混ぜたような風貌をしている。見るからにシブリ映画の紅い豚だ。それも全員が。
エルフたちを直視した後だと、正直、見ていて目に悪い。というのはとても失礼か。思いなおそう。
しかしこの近づいてきた男は特に違う意味で悪い面構えをしている。男らしくダンディで、変なカリスマ性も感じられるのだ。
ニヒルな笑みを浮かべて僕たちを見下ろすこの1人のピグモン族の男。
「なんだ? 迷子か? 見たことねえ士族だが……。美味くはなさそうだな」
……っ! コイツ、やはり女神の手先――。
「――なんてな! ハハハ! 冗談だ。……見たところこの土地についてなにも知らねえ様子。どれ、俺さまについてこい。少し案内してやる」
そのどこか気を許してしまうような笑い声にあてられたのか、僕とケイは構えを解いて互いに見合わせてしまう。……あれ?
「……ついて、いってみる?」 「……う、ん」
ケイが提案し、僕がそれを飲み込む。一旦、流れに身を任せてみるべきか。
ズンズンと前を進んでいく彼は初対面なのに、話すとなぜか安心させてくれる変なカリスマ性を持っている。
まだ警戒心を全て解くべきでないのは分かるが、情報収集のために一度付いて行ってもいいかもしれない。
いざとなれば、逃げるスキルもあるしね。




