Ch2.08 励まし
――VR集会所の一室。
「――よお。……おお。なんだもうけっこう立ち直ってるのか。つまんねえの」
……。
「落ち込んでる思春期の息子を叱咤激励するってのは、俺の1つの夢だったんだよ。勝手に治りやがって。あーあ」
…………ええ? ひどくない? それがひさしぶりに会う息子への第一声かよ。
「まあこれからなんども落ち込むか。チャンスはいくらでもあるわな。次に期待しとくぜ」
ガハハとマイペースに気持ちよく笑う僕の親父がそこにいる。人の気も知らないくせにこの人は……。
なぜ僕がここにいるかというと、親父に呼び出されたからだ。もうこのゲームには触る気はなかったが、随分とごねられて仕方なくログインした。
ログインすると時間が引き延ばされるので、忙しい時に時間をつくるのには最適だ。ただそんな私用のログインもログアウト時にはペナルティが付くため、チャプター攻略中はそのためだけに使用するプレイヤーは少ない。
「すまんな、あまりかまってやれなくて。一斉ログアウト時はなにかと色々作業が残ってるんだ。だからようやく時間の余裕を作れた」
……別に、だいじょーぶよ。
「おいおい。いじけんなよ。悪かったって」
全くこの人は。人使いとか人付き合いは色々荒いくせに、必要な時にはちゃんと真摯に対応するせいか、どこか憎めない。
「はぁ。わかったよ。……親父もお疲れさま」
「おう。……まあしかし、最後は災難だったな」
「――いや本当だよ。あんな奴がいるなんて。一言言ってくれればいいのに」
「そりゃあ、難しいだろ。俺にだって守秘義務がある」
……それもそうか。あくまでも仕事だしね。
なんて、簡単に受け入れられる程度には僕も精神的に回復したらしい。人間の回復力とはすさまじいね。
「で、どうするんだ。アキヒト。まだ続けるか?」
……この人は、相変わらず話の核心を突くのが早い。
「……わかんない」 正直な意見だ。このゲームに対して向き直ることはできるようになったが、それでも別に続ける理由はない。
「……そうか」
言葉を選んでいるのか、言いよどむ親父。なんだよ。
「……まあ今のオマエになら言えるか。あの女神は次のチャプターにも出るぞ」
……。
「違う大陸だし、姿形も多少変わっているけどな。同一存在だ。前回とおんなじように、というと語弊があるが、ある士族の上に君臨している」
……へえ。――ふつふつと。
「だからもう一度、会うことは可能だぞ、アキヒト。さあ、どうする」
……そんなの分かりきってることだろ。――怒りがこみ上げてくる。
「……一発、ぶん殴ってやる……!!」
この積年(2週間)の恨みを存分にはらしてやるぁあ! うおおおあああああ!
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「――ていうことがあったんだ。イマイさん。だから落ち込んでたんだ。心配かけて悪かったよ」
『そうなのかい。それは大変だったね。辛かったろう。…………よく一人で乗り越えたもんだ!』
偉いよアキくん! もう超天才! 最高! よっおとこまえ!
……本当に、うれしいことしか言わないなあイマイさんは。
彼女がイマジナリーフレンドか、現実に存在するかなんて関係ないと、最近は感じる。
だって彼女は勇気も元気も愛情も、僕にもたらしてくれる。そんな存在は本当にありがたい。
僕もこういうヒトでありたいと思わせてくれる。
「だからね、イマイさん。色々あったけど、僕はこのゲームを続けようと思ってるんだ」
『うん。それがいいよアキくん。自分が、やりたいことをやるんだ。応援してるよ、アキくん』
そうやって、僕の選択を力強く励ましてくれるイマイさんであった。




