Ch2.06 リアリティーショー
そして唐突に店のドアが開く。
「――えー、というドッキリでしたあ。パンパカパーン!」
なぜか見知った顔が複数人のカメラマンやスタッフと共に店内に入ってくる。
「……は。はは。なにしてるんですか、所長」
まさかのアデルバード所長の登場だ。
「だから言ったでしょう。ドッキリよ。私、新番組のメインキャストになったの」
フフン、と場違いだが勝気な表情でそんなことを彼女は言い放ったのだった。
――――――――――――――――
「――ということで、まさかの偶然ドッキリに参加した一般人が事態を解決することになってしまいました。そのことをどうお考えですか? ヒーロー役のケイさん?」
「誠に、遺憾です」 所長にそう聞かれ、ちゅー、と食後のドリンクを飲みながら答える転入生。
「……その言葉の使い方もどうかと思うけど。――本来ならあなたがライト正宗(偽物)を片手に強盗役をギッタンギッタンにするのを、一般人がそれを見てどう反応するのか見るコンセプトの番組だったから、まあ間違ってはないか」
それをよこせ、と所長にドリンクをひったくられる転入生。ああ……! と悲痛な声が漏れる。食い意地が悪い。
コイツ、食べ放題日とはそういうことか。だからあんなに値段を気にせずバンバン皿を頼んでたのか。しかもドッキリが始まる前に急いでこのお店のメニューを食い尽くす勢いで食べていた。やはり食い意地が悪い。
しかしなるほど、このルックスだ。メディアに起用されるのも納得できるし、ヒーロー役とかもこの身長ではぴったりだ。おおかた、この番組を通してこれからどんどん売り出していくのかもしれない。
しかしそんな彼女を差し置いて、妙なやつがこの番組の企画倒しをしてしまった。
「――さて、その本来のヒーロー役を差し置いて、この事態の速やかに解決したそこの一般人の方。お名前をうかがっても?」
「……モリ アキヒトです」
「モリ アキヒトくん! いいお名前ですねえ。……アレ? そういえばあの最近世に出た話題の新VRゲーム、I.F.ワールドの開発者のお名前も確か森さんでしたよねえ。もしかしてその親戚とか?」
「……。それは僕の父ですね」
「まあ! そんな偶然が! そうなんです。この番組:What if……? の大本のスポンサーはそのI.F.ワールドの開発局なんですよね。……もしかして、今日のこのドッキリのこと、御父上からなにか聞いていました?」
なんちゅーわざとらしい演技だ、この人。……そのほうが設定として良かったのかもしれないけど。
「――いえ。今日の事はなにも聞いていないです。父はアメリカで仕事を頑張ってくれているので、月に数回程度しか話しませんから」
「…………。え。マ? ……よくあんだけ動けたわねアンタ」
おいおい素に戻ってるよ所長さん。メディア意識。メディア意識よ。先ほどのニッコニコのレポーター側から一転、ドン引きした顔をしている。その顔はあんま可愛くないし、よろしくないんじゃないか。
「……は! えー、ということで、新たなヒーロー、アキヒト君に盛大な拍手を!」
まばらな拍手が、パチパチパチと巻き起こる。……そこは編集で付け足すのであろう。
あれ。ていうか撃たれた店長も血にまみれながらも笑顔で両手を使って拍手をしている。
……もう一本の腕はまだ地面に転がっているぞ。フェイクの腕と血糊だったのか。
ヘイワダナー。
――――――――――――――
「ちょっと、所長。これは、少し趣味が悪すぎます」
カットォ! と声が鳴り響き、番組の撮影は終了した。そこですかさず僕の口から文句がこぼれ出る。
「……。文句は、ケイに言いなさい。あの子が勝手にあなたたちを連れてきたのよ。おおかた、新しい土地で友達を作るためにカッコイイ姿を見せたかったんじゃない?」
私たちだってこんなの予定外よ。……まあ良い画は撮れたらしいから、いいけど。疲れた様子で僕をあしらう所長。
……まるで他人事のようにいうじゃないか。
「……所長っ」
「――ボス。コイツは男気を見せてくれやしたぜ。それに誠意を示すってのは、いかんでしょうか」 ……まさかの親分強盗からの援護射撃だ。強面な演技派だったが、根はやさしい人なのかもしれない。
「――。……はあ。分かったわよ。悪かったわね」
僕たちの意思を感じ取ってくれたのか、詫びてくれる所長。
「じゃあ、お詫びとしてけじめに、そうね。……うーん。そうだ。じゃあまたこれにしましょ。なんでも質問に答えてあげるわ。それも3人共全員の」
そういって、この騒動の落としどころを提案してくる所長であった。




