Ch2.04 それぞれの通話
「――私も行く。どこいこうかしらやっぱり遊園地とかは外せないわよねでも彼女アニメ好きって言ってたし意外とコンカフェとかもあるかもしれないそれに好きなアニメの聖地巡礼とかも喜ぶかもしれないわねあとは――」
先ほどの転入生からのお誘いのことを報告したら、エミリが止まらない勢いで計画を立て始めた。
「ストップストップ! ちょっと落ち着いてくれよエっちゃん。もうお寿司屋さんに行くことは決定してるから、食後にその近くの遊園地かなんかに行こうかと思ってるんよ」
だからその他の候補地はまたの機会に、ということで。どー、どー、エミリさん。
「でも流石にいきなり二人っきりで遊びに行きたくないから、カケルとエっちゃんもどうかなって思って」
「そんなの行くに決まってるじゃない!」
このエっちゃん、ノリノリである。「うわー! どんな服で行こうかなあ!」 などど絶対に普段では聞かない声音で服を物色し始めている音を電話が拾ってくれる。
「……ちなみに明日なんだけど」
「……明日の予定、今キャンセルしたわ!」 即決即断だ。マジか。ありがたいけども。
「……あ、カケルも行けるって」 メッセージが届いた。彼も予定を開けてくれたらしい。
持つべきものは親友だなあ、と心から思う。
これで備えはできた。「ゴスロリで行ってもいいかしらー」「なんでもいいよー」「なんでもいいってなによ、おい」 いやもう勘弁してください。なんでも可愛いよ!
さて、明日はどうなることやら。
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「手筈通り、偵察のためのセッティングを完了しました。指定の寿司屋と遊園地の最終調整に入ります」
『了解。……ていうかけっこうギリギリだったわね。一体いままでなにしてたの? いつも仕事が早いあなたにしてはめずらしいわね』
「……初めての日本、でしたから。色々と」 聖地巡礼とかコンカフェとかグッズの買いあさりとか。しかし言わぬが華。黙っとこ。
『……そ。ともかく任務遂行できるのなら文句なしよ。対象Aの現実改変能力の有無の確認と、その脅威度の測定の任務、改めて指令するわ』
じゃあよろしくね、K。ばーい。……ふぁー眠い。なんでこんな朝っぱらから仕事しないといけな――プツン。
そんな言葉を最後にアデルバード所長との通話が切られた。
……アデルバード所長に対してはともかく、先ほど会ったあの少年の能力の確認という、普段とは毛色の違うこの任務に対する文句はない。そんなものを軍人が持ってしまったら本末転倒だ。
むしろ長年の夢であった日本での滞在が可能になったのはとてもうれしい。だから――。
「……もし能力の確認ができなくても、適当にでっちあげよう」 長い間、あの所長に仕えてきたのだ。なら少しくらい許されるだろう。
人類初、あちら側の能力に目覚めたかもしれない少年と、その能力の確認が今回の任務。だが、彼にそんな秘められたポテンシャルは正直感じない。見た限りただのオドオドとした普通の少年だ。
ありのままを伝えたら、すぐにほかの任務にまわされてしまうだろう。
「……だから少しは、でっちあげるための材料を見せてね、少年Aくん」
そういってケイは人形のような自身の顔に、久しく浮かべてなかった微笑のしわを刻むのであった。




