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Ch2.03 ケイ

おかげさまで3000pv突破しました!

 週末の大通りを僕はひとりでに歩く。あたりはもうすっかり暗くなってしまった。


 先週のこの時間は、たしかI.F.ワールドにログインしていた時間だ。思い出したくもないのに、一人でいると脳が勝手に記憶を遡りそんなことを意識してしまう。


 もう一生、あのゲームに触ることはないだろう。僕はもうギブアップだ。


 今現在も、最短でクリアした僕や他の15人以外のプレイヤーは、あのチャプター1に挑戦しているはずだ。なにしろあとたった2週間で次のチャプターが解禁される。しかも他のプレイヤーが参加できるようになる発売日と同時にだ。それまでになんとか間に合わせようと、多くの先行プレイヤーが情報を見つめなおし、攻略しようとしていたのをネット掲示板で時折見た。


 彼らも先行プレイヤーとして攻略組であり続けようと必死なのだろう。その必死さは泥臭いがどこか清々しいし、そんな彼らを見ていると最近では暗い気持ちも薄れてきた。


 もう一度自分で攻略するのは嫌だが、彼らの努力は陰ながら応援したいという気持ちにはなる。カケルやエミリもすでにクリアしているし、その友人たちを応援するために、多分僕はこのゲームの1ファンとしてはあり続けるだろう。


 つい先日も、クリア者の一人が攻略動画兼実況動画をアップロードし始め、反響を呼んでいた。これからどんどん社会現象となっていくのだろうと、ひしひしと感じる。それを最初の数週間だけだが、プレイヤーとして体験できたのは悪い思い出ではない、と思いたい。


 いつの日か色々と完全に忘れられる日もくるだろう。



「――あれ、あの人はまさか」


 そんなことを考えていたら、その数少ないクリア者の一人だと自ら先日名乗った、銀髪の高身長な女性が、遠くでフードトラックからたい焼きを買っているのが見えた。


 30メートルくらい離れているのに、とても目を引く。あの容姿だけでも異彩を放っているのに、休日なのに先日と同じ制服姿なのだ。このタイミングでは部活もまだ入ってないだろうし、単にその格好が気に入っているのだろうか。


 と、そんな風に遠くで見ていたら、視線に気づいたかのように、こちらを振り返る彼女。そして迷いなくトコトコとこちらに向かって歩き始めた。


 あれ。僕まだ彼女と話したことないよね。意識的に避けてたし。顔も覚えられていないはずだし、こちらに用があるのかな?


 トコトコ、と近づいてきていると思えば、徐々にズンズンといった風に、こちらに近づくたび迫力を増していく彼女。身長がやっぱり高いなあ。綺麗なご尊顔もどんどん鮮明になっていく。


 そろそろ、お互い通り過ぎる間際だ、視線を外そう。すると突然、僕の手前で彼女は歩みを止めた。そしてエメラルドのような綺麗な瞳でこちらをまっすぐ見つめてくる。


「あなた、アキヒト君、だよね? 初めまして、よね。学校じゃ話せなかったから」


「――え、あ、ああうん。初め、まして」 びっくりした。まさか話しかけられるとは。


「……お互い、暇だよね。クリアしちゃったし。あと2週間、なにしよっかなって考えてたの」


「……うん。そうなんだ、暇だよね」 驚きで適当に返事してしまう僕。


「――そうだ。せっかくだし、今度どこか、遊びにいこうよ」


 日本のこと、あんまり知らないから、教えてくれない? なんて、本当に小さい顔で小首をかしげながら、転入生はそんなお誘いをしてきた。

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