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Ch2.02 転入生

「名前はケートレン ラング。コードネームはK――じゃなかった。ケイ、って呼んで」


 よろしくねヤッピー、と無表情で、顔にピースの手をかざしながら自己紹介を終える長身の転校生。その身長は優に180㎝を超えている。しかしなにより目立つのはその人形のように綺麗な目鼻立ちと、透き通るような銀髪、そして緑色の瞳。まるでアニメやゲームのようなファンタジー世界の住人のようだ。

 エミリの様子はもう言わずもがなだ。例えるなら、ポ〇モンで色違いの伝説ポケ〇ンを初めて見つけたときのような、今にも叫びだしそうなほど興奮している。目もかっぴらいていて、鼻息が荒い。要するに変態一歩手前だ。


 肩に届く程度の長さに切り揃えられた銀の髪を持つ高身長の美形女子。無気力そうな表情を崩さないが、その美形さのおかげでほとんどの人がそれを見てクールビューティだと捉えるだろう。クラスの何人かはもうファンとして取り込まれてしまっている。


 ……コードネームはK? ヤッピー? もうその特異な言動やら容姿やらどこからつっこめばいいのかわからないが、なぜか見ていると不思議な感覚に陥る。日本語が達者ですごいなあ、と感心する感覚もあるが、それよりも――。


 あれ? どっかで見たことあるような、という既視感のような感覚のほうが強い。


 ……お忍びの有名モデルなのだろうか。それともインフルエンサー? ネットでちらっとみたことがあるような……。でも僕そういうの詳しくないしなあ。


 うーん、うーんと、思い出そうとしていると、同じように首をかしげているカケルの様子が目に入った。あれ? キミもかい、カケルくん。


「得意なことは運動。好きなことは絵を描くことと、日本のアニメを見ること、です。……なにか質問ある?」

 

「……まず推しになってもいいですかお金ならあります」

「日本語が上手ですね! どうやってそんな上手く話せるんですか!」

「その銀髪、超綺麗!! え、地毛じゃないよね?」

「結婚してください挙式はいつにしましょうか」

「運動が得意って、なんのスポーツのこと? ぜひうちのバレー部に!」

「子供は何人ほしいですか私は三人くらいほしいです」

 

 濁流のように質問が飛び交う。なんか気持ち悪い質問が見え隠れしているが、聞かなかったことにしよう。


「……。ええっと」


 一気に質問がきたためか、困っている転入生。見かねたカケルが手を挙げる。


「どんなアニメが好きなんですか?」


「……シブリとか。ボニョが好き。あとはアクションとかファンタジー」


「ファンタジー! 良い趣味してる! あとはそうだな……じゃあ最後に、最近あった楽しかったことは? 他の質問はみんな後で各自聞けばいいだろ?」


 それを聞いて皆もしぶしぶ納得した様子。さすがカケル委員長。場をちゃんと平和に抑え込んだ。


 最近あった楽しかったこと……。反芻して考え込む転入生。



「……多分、I.F.ワールドの、チャプター1をクリアできたことかな」


 え! すごーい! と我々のクラスは大いに盛り上がる。

 ……いや本当にゲームのこと知ってるのか? 僕たちがクリアしたこと、誰一人知らなかったじゃないか。日本人が3人もクリアしてるって、結構ネットでは盛り上がってたから、少しは褒められると期待してたのに、誰も祝わなかったよね! 「え? そうなんだフーン」って感じだったじゃん! このルッキズムの権化どもめ!


 ――――――――――――


「……あ! 思い出した。今日の転入生、I.F.ワールドのプロモーション動画に出てた人だ」


 学校の帰り道、一人で唐突に思い出す。誰一人僕たちのことを褒めてくれなかったのに、あの美人転入生がそのゲームをクリアしたと知るとこぞって褒めだし始めたから、なんか悔しくて彼女の姿が脳から離れなかったのだ。


 彼女はまるでゲームに出てくるような綺麗な顔立ちだった。それが()()()()()()()()。現に彼女は、I.F.ワールドのプロモーション動画に出演していた。


 スキル紹介のために、ある一人の男性が黒づくめの格好で、迫りくる弾丸をブォンブォンと光る刀を振り回し、難なく切り払っていた紹介動画。そしてその()()が、変身魔法を唱え、超ボンキュッボン美人のエルフに変身した動画を思い出す。


 その変身後の美人エルフに顔や身体特徴がまるっきりそっくりなのだ。いや耳は長くないし、髪色も金色だったし、制服だからあの動画ほどぱっつりした服装ではなかったので、その……ボンキュッボンだとははっきりとは言えないのだけど。しかし顔と身長は僕の記憶の中では一致している。


「……耳は特殊メイクで加工できるし。まさか、変身した姿が黒づくめの男性だったのかな」


 マジか。あの変身動画、()()()だったのか。……色々と疑念は尽きないが、I.F.ワールドの関係者の可能性は高い。


 ならば近寄らないほうが吉かもしれない。


「あんまり今は、あのゲームのことは思い出したくないしね」


 そんな言葉が、僕の口からぽろっとこぼれ出た。

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