Ch2.01 空白の時間
一か月後に更新をすると約束しましたが、あれは嘘です。少し早めに投稿を再開します。
意外と筆が乗ったおかげでCh2.4くらいまでは書けたので、問題がなければチャプター2のエピローグまでは毎日更新する予定です。
またよろしくお願いします。
『アキ君。ボクはキミが心配だよ』
出発前、学校の支度を終えた僕は靴を履きながらトントンと床をつま先で叩いていたら、そんなことをイマイさんに言われた。
『なにかボクに出来ることはあるかい』
イマイさん、なぁに、僕なら大丈夫だよ、と空元気なことを言おうとしたけどやめた。
大丈夫じゃない。でも今は学校行かなきゃ。
顔と心を少し整えてから、イマイさんに向き直る。
「なぁに。こういうのは時間が解決するっていうだろう、イマイさん」
『……そうかもしれないね。……そうだ。最近、面白い番組が始まりそうなんだー』
「……そうなんだ?」 明るい話題に変えたいのかな。変に心配してくれるよりも、ありがたい。
「ちょっと過激だけどね。新しくて面白いモノを見るのアキくんは好きだったろう?」
もうすぐ放送するみたいだから一緒に観ようよ。――うん、約束だよ? ……じゃあまたね。学校楽しんできてね。
そういって、別れを惜しみながら、そして心配しながらも、そっとしておいてくれる優しいイマイさんであった。
――――――――
「アキ、大丈夫か」
どこか上の空に時間を過ごしていたらすでに半日が過ぎていた。今や絶賛昼休み中だ。
昼飯をカケル、エミリと一緒に屋上で食べようと地べたに座ったら、開口一番そんなことをカケルから聞かれた。
そんなにだいじょばない顔をしているだろうか。自分でも頑張って取り繕っているのだけどなー。
「うーん、まあなんとか? 別に普通だよ」
正直あの時感じた感覚や思いは、VRから出た途端、実感の大半が薄れた。
自分で体感したVRゲーム内での経験が、さも他人の経験かのように、というよりもまるで自分で操っているゲームのキャラクターの経験かのように、第三者視点で感じられるようになったからだ。
多分、そういう制限を付けているのだろう。チャプター1にてプレイヤーの95%がリアルな臨死体験をした中で、なにも社会問題になっていないのもそういう理由かもしれない。
まるで他人事、喜劇の中の住人を見ているかのように思えるのだ。まあすべてがすべて、喜劇とは言えなかったけど。その記憶もこれから色んな想い出に流されて、形を失っていくのだろう。時間が解決するとは、そういうことなのだろう。
しかしその大半が失われた中、心に残るものはある。
恩人様、と言って慕ってくれた故人の最後の言葉が、僕の心の奥に深く、ふかく――。
「――転入生が、来るらしいわよ」
こちらを真っ直ぐ見ながら、エミリがそんな言葉を僕に投げかけた。
「へ?」
「だから午後に転入生が教室に到着するらしいわよ。朝の連絡聞いてなかったの?」
……ああ。そういえば、そんなことを聞いたような、聞かなかったような。
「しかも白人らしいわ。ドイツ系のブラジル人。……なんか聞いても姿を想像できないわね」
どんな子なのかしら。綺麗な子だろうけど。楽しみだわ! とテンションアゲアゲで話すエミリ。
「……エミリ、イケメンだけじゃなくて、そっちもいけんのかよ」 苦笑いが漏れ出る。
「あら、イケメンのほうが好きよ。でもそっちも大好物よ」
フンス、と意気揚々なエミリを見ていると、楽しい気分になる。カケルもこちらを見て笑っている。
食欲も出てきた。一気に食べてしまおう。




