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Ch1.6 目覚めるとそこは(2)

 戻ってきましたVR集会所。前回初期スキルを取得し、ゲームを開始した場所だ。そこで僕は難しい顔をしながら、目の前の空中に表示されている文章の意図を図りかねている。


『前回の続きからコンテニューしますか? それとも習得したスキルをそのままに最初からリスタートしますか?』


 なんとも不思議な文章が目の前に表示されている。現在僕はログイン制限が取り払われた、前回のアクセスから一週間経った今日、気持ちを新たに先ほどIFワールドを起動した。そうしてこの集会所にログインしさっそくゲームへアクセスしようとしたらこれが表示されたのだ。


 前回の続きからコンテニューをしますか、だって? 僕は一日目に脱落したはずでは?


 ……バグ、であろうか。このゲームもまだ早期アクセスであるから、こういった予期していないバグやトラブルが発生しているのかな?


「ちなみにそれはバグじゃないから。安心しなさい」


 うっわ。ビビった。いきなり横から声をかけられた。見やると金髪碧眼赤メガネの美人がそこに立っている。


「って所長じゃないですか! え、ありがとうございますはなしかけてくださって光栄です」


 心臓がバクバクだ。僕らプレイヤーの一押し、あるいは推しの美人所長が目の前のいる。興奮して早口になってしまった。

 

 本日は赤シャツに赤デニムパンツと、上に青いメンズジャケットを羽織ったなんともアメリカンな色合いに身を包まれているご様子。


「相変わらず、お綺麗ですね」


「あら、ありがとう。嬉しいわ」


 ニコリ、と僕の言葉を社交辞令として受け取ってくれた。笑顔がまぶしい。優しいお姉さんのアイドルスマイルを僕に向けてくれている。やめてくれ所長、その(えがお)は僕に効く。


 閑話休題。


「それで、えーっと。……|コンテニューできる状況これはバグじゃないんですか?」

 

 もしバグじゃないとしたら、とても信じられないことだ。あの状況から、計六日間ずーっと存命していたというのだろうか?


「そうね。とっても信じがたい状態だけど、まだあなたは存命中よ。私が確認したから間違いないわ」


 とっても興味深い状況に陥っているわよ、と含み笑いもしながらも、僕のこのコンテニューできる状態が正常だと教えてくれる所長。一体なにが起きているって言うのだろうか? ……アキーニャ、わくわく!


「本当ですか?!  それはご親切に。どうもありがとうございます」


「ノープロブレム。……それと、ユニークスキルも習得したらしいじゃない。使い心地はどう?」


「どう、と聞かれても……。習得してすぐに意識がなくなってしまったので。あ、でも頭がめちゃくちゃ痛かったです。あれは仕様なんですか?」 あの頭痛にはペインキラーも効かなかったし、なんだったのだろう。常人だったら裁判物だったかもしれない。僕は長男だから我慢できたけど。


「いいえ。そんな仕様はないはずよ。それこそ、それが一時的なバグだったのかもしれないわね。……ちなみに、その偏頭痛は日常生活でもあったかしら」


「いえ、特には」 所長が心配してくれている。優しい! 感無量だ。


「そう。……ゲーム中でももう痛みはなくなっているはずよ。状態を見た感じ、もうそのバグは残っていないと思うから、安心してね」


「そうなんですか! それは良かった」

 

 あんな脳が割れるような痛みは味わいたくないし、そんな痛みに耐えなければいけないような状況にまた陥るのももうごめんだ。なのでコンテニューできるというのは本当に朗報だ。ありがとう所長! 一生のファンであり続けます!


「じゃあ、さっそくIFワールドに戻りますね。わざわざありがとうございました!」


「いいのよ。ぜひこれからも楽しんでね」


 お世話になりました、と挨拶をしてコンテニューを選択する。


『コンテニュー選択、確認しました。時間軸、移転先の安定を確認。転送開始』

 

 暗転する間際、目を伏せて考え込んでいる所長の姿が僕の眼に映りこんだ。


 いやぁなんていい人なのだろう。わざわざ僕の様子を見に来てくれるなんて。おかげで、やり直さなければいけないのかと気落ちしていた気持ちは、とうの昔に吹き飛んだ。感謝するぜ所長に出会えたこれまでのすべてに!


 そんなことを軽い気持ちで考えていると、徐々に視界の暗闇が晴れてゆく。


 それと同時に体が妙な姿勢になり始めた。手と足が同時に浮きはじめ、体はどんどん地面と平行になっていく。

 手足に引っ張られるかのように、全身も1メートル程度地面から仰向けに浮いた状態となっていく。……もはや体は地面と完全に平行だ。手足も動かせないし、なぜか体が前後に揺れ始める。


 アレ? どこか既視感(デジャブ)が……。


 そうして、目覚めるとそこは――。


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