Ch1.4 犯人はお前だ!
『スキル:テレパシー(以心伝心)を習得しました。なお、テレパシー(受信)のこれまでのスキル能力は保持されますが、これ以上レベルは上昇しません』
目の前がクラクラする。世界への見え方、感じ方が変動しているかのようだ。激しい頭痛にも襲われている。なんにも集中できない。
「…………、なんだよ、特になにも変わっていないじゃないか」
彼らの様子を見るに、頭に入ってくる情報量は一見変わっていないうえに、頭痛が止まらない。徐々に、頭痛が収まってきているが、鈍痛のような痛みが頭に残り続ける。先ほどの喧騒はまだ続いているようだ。世紀末魔女狩り思考の探偵ゴブリンが3人がかりで押さえつけられているようだが。
選択肢を間違えたかもしれない。 いや変質したスキルが、本当に以心伝心だというなら――――。
『うごおおおお!放せえ!俺にヤラセロォォォォ!犯人はおまえらだああああ!』
『おちつけ!』『ヤバいよこいつこんなんだったったけ?』『こいつも犯人でよくないか』
状況は刻々と歯止めが利かないような状態に近づいて行っている。温厚なゴブリンたち全体に怒りや不安が広がっていっているようだ。全てイメージだが、そうなんとなく伝わってくる。
「トッツォ、僕の言っていることはわかるか?」
隣にいた眼帯ゴブリンのトッツォがギョッとしてこちらを見た。
『あ、ああなんとなく。おい、ていうかおまえ。話せるのか?』
もしかしたらこのスキルは、僕のイメージ通りの能力なのかもしれない。
「ちょっと、行ってくる」そう言って、僕は村の中央へと歩き出す。
逸る気持ちもあるが、しかしこういう時こそ慎重に。先ほどのように、容疑者一人一人に意識を集中していく。彼らに近づくにつれ、より明瞭に、彼らの心の不安や無意識な考えが伝わってくるようだ。
………………。これは……。
――――――――――
そいつは悪手だったな所長。3秒でスキルの変質を締め切るなんて、むしろこのスキルを習得してくださいと言っているようなもんだぞ。
所長はFOMOという言葉を理解していないらしいな。Fear of Missing Out の略語で、見逃しの恐怖、だったか。地域限定販売だとか、タイムセールに人は弱い。今しか買えない状況なら、せっかくなら買うかと、人は決断を後押しされてしまうのだ。今のアキヒトのように。
部屋の後ろで、うがー!と所長が地団駄を踏んで怒っている。まったく、予想できないことが起きるなんて、予想できただろう。どんなゲーム体験になるかはプレイヤー次第だって、プロモーションでも言っていたろう?
「ガハハ目論見がはずれたか! 所長! そんなときもあるぞ気にするな!」
とっさのことだったし、ノープランであったのだろうな。しかしこういう有事の際に対して、あらゆる面で計画は進めておくべきだ。ただ俺の役割的にそれは管轄外だし、今回の行動は彼女の個人的な理由から起こしたものだろうから、今後も口出しはしないが。
やはり内外部からこの世界のマネジメントにつけ入る隙などいくらでもあるかもしれない。留意しておこう。だけど今は――。
「ただ、目一杯この世界を楽しもうじゃないか。なあ、アキヒト!」
ガッハッハ、と笑っていたらまた空き瓶を所長から投げられた。
――――――――――
「犯人は、お前だ!」
そう言って僕はこういうミステリー的な状況に対しては、はちゃめちゃな能力を用いて犯人を割り出して指さした。
くそう!犯人は変態、おまえであってほしかった!僕の手でお前を裁きたかったのに! とても残念だ!




