第18話 戦略会議
「リリスが転移された場所は魔界の帝都の中心に聳え立つ塔。そして、そこはその絶望王とかいう輩の居城ってわけか」
「そうだ。バベル祭儀場は、帝都の中心に存在する摩天楼。ゲートの入り口は、帝都の南の死の平原にある。だから――」
自称リリスの執事セバスは顔に憂鬱な影を漂わせながらも、口ごもる。
「その死の平原って場所から北にある帝都に攻め込み、バベルを攻略しなければならない。そういうことだな?」
「おまけに、リリス様をゲートから分離する必要がある。その方法が見当もつかんのだ」
「あーそれなら心配いらんよ。俺多分できるし」
分離自体は俺の【神眼】と【チュウチュウドレイン】のスキルなら可能だ。実際にこの手の精密な分離はこれらのコンボスキルの専売特許のようなものだしな。
「……」
絶句するセバスを尻目に、
「最強クラスの悪魔どもを滅して塔の最上階へ行く? そんなの不可能にきまっておる! どうにか争わず済ます方法を検討すべきじゃ!」
クロノは血相を変えて異論を口にする。
「無駄だよ、クロノ、もうそういう次元の話じゃないんだ。奴は色々やり過ぎた。ここで確実に潰しておく必要がある。それに、その絶望王とかいう奴、俺達人間相手に、話し合いのテーブルに着くような理性的な奴なのか?」
セバスは瞼を閉じて首を左右に振る。
「絶望王は、まごうことなき悪の神。人間との交渉など絶対に受け入れぬ」
「だろうな」
人という種をなめすぎている描写が多すぎる。だからこそ、こんな破滅にも近い一手を選択してしまうんだ。
「ならば、エンジェルの保護をしたらすぐに退避すれば――」
「雨宮をゲートから分離すれば、十中八九、ゲートは閉じ、こちらに戻ってこれなくなる。もし雨宮とともに転移できるとすれば一つのケースだけだ」
「ウォー・ゲームとやらをこちらから仕掛ける場合か……」
十朱が口元の無精髭を摩りながら答えを呟く。この十朱の姿マジでオロチに激似だな。銀二も酒呑、雪乃が小虎にどことなく似ているし、まさかな……。
「その通りだ。俺が絶望王を殺せば、魔界とやらへの人類による管理権が認められる。そうなれば管理者権限かなにかで移動は自在になるはず」
顔を強張らせているセバスに、
「心配するな。俺は統治のおままごとなんぞに興味はない。俺の目的は絶望王の排除のみ。人類にも勝手な侵略はさせねぇよ。まあ、戦争になれば向かってくる悪魔は殺す他ないが、無駄な虐殺はしないと誓うさ」
そう宣言するがセバスは首をゆっくりと左右に振って、
「いや、気遣いは無用だ。言ったはずだ。私は悪魔とリリス様を天秤にかけ、リリス様をとったと。とっくの昔に、煉獄で焼かれる覚悟はできている」
強烈な眼光で睨み据えてくる。そうだな。こいつは自ら悪魔を捨てたといっていた。その覚悟を疑うなど、少々無礼だったか。
「そうだな。悪かった」
俺はセバスに軽く頭を下げると席を立ち上がり、
「ではいくぞ。今度こそ、最後の締めだ」
仲間たちに号令を発する。
「「おう!」」「うん!」「仕方ないのじゃ!」
そして、ビジネスホテルの中央玄関口へ向けて歩きだす。
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