【欧州で始まった戦争②】
しばらく武蔵野の中島飛行機に入り浸っていた柳生さんは暮れに戻ってくると、ゆっくり休む間もなく旅支度を始め、今度は水冷エンジンの性能強化のため愛知にある航空機メーカーに向かった。
年が開け1939年(昭和14年)になると、前述の通り欧州は戦争という黒い雲に包まれつつあった。
まず3月にはドイツが前年9月に締結していたミュンヘン協定を破り確保したズデーテン地方だけでなくチェコスロバキア西部を併合し、東部もハンガリーにより占領され、これでチェコスロバキアという国が欧州の地図から消滅した。
4月にはイタリアがアルバニアへ侵攻し、これを併合した。
欧州での不穏なニュースに国民の関心事は、翌年に開かれる予定の東京五輪の開催への影響だった。
そして軍部の関心事は、同じく翌年に統治が終了する朝鮮の行く末。
既に犯罪歴のある在日朝鮮人は強制送還され、在日特権であった創氏改名も廃止された事により大多数の朝鮮人は朝鮮に戻り、朝鮮半島に居住していた日本人や企業の殆どが資産を日本に移していて、現地では朝鮮人による新しい政権も誕生した。
一見順調に進んでいるように思える朝鮮国なのだが、問題はまだいくつもあった。
最大の問題は、朝鮮国の自国防衛力。
つまり軍事力だ。
日本政府としては、彼らの防衛力が整うまで日本の陸海軍を駐屯させて支援する旨を新政権に伝えたが、彼らはそれを拒否した。
日本軍が駐留すると言う事は、統治下と何ら変わりなく自治権が犯されると言うのが最大の理由。
確かに彼らの言うことはもっともだが、この時代に貧弱な防衛力しか持たないという事は他国に侵略されるリスクが高まる。
海軍からは何隻かの警備艇、陸軍は軽戦車などを供与する案も先方に提示したが、反日感情の強い新政府はこれを拒み新しい装備や訓練をアメリカに委託することが決まり事実上日本軍は朝鮮半島から完全に手を引くことが決まった。
急きょ朝鮮から戦車等の依頼を受けたアメリカは、中国向けに生産したものの日中友好条約締結の影響もあり輸出が頓挫してしまった7.62mm機関銃1挺を搭載した2人乗りのマーモン・ヘリントン CTLS豆戦車120輌と、旧式で2人乗りのM1917軽戦車37㎜短戦車砲を装備したタイプ350輌、7.62mm機関銃装備タイプ200輌、無線指揮車タイプ30輌とF3F フライングバレル戦闘機30機を輸出した。
いずれも近代的装備とは程遠く、とてもソビエトには対抗できないものの、欧州の不穏な動きをかんがみれば、そのソビエトも早々アジアに侵略することは出来ないはずだから軍の初期段階における装備としてはまずまずと言ったところなのかもしれない。
8月23日ナチスドイツとソビエト連邦が不可侵協定および秘密議定書に調印し、9月1日にはドイツがポーランド西部に侵攻した。
この動きに対して9月3日にはイギリスとフランスがドイツに宣戦布告をして、ヨーロッパにおける第二次世界大戦が始まり、9月17日にはソビエトがポーランド東部に侵攻しドイツとソビエトは秘密議定書通り両国間でポーランドを分割支配した。
このことで私は自らの無能さを思い知らされたようでひどく落胆した。
未来を知りながら、日本の平和を願うあまり世界情勢に目を向けなかったこと。
自分がもっと広い視野を持って何かをしていれば、もしかしたら欧州での戦争も回避できる手立てがあったかもしれない。
悩んでいる私に薫さんが言った。
「人は決して神さまにはなれないのよ」と。
人一人の力は、か細い。
もし柏原くんが日本の国主となっていたとして、欧州での戦争を止めようとして努力したとしても決して止められなかったであろうと。
特に欧州の歴史は、日本人が考えるほど甘いモノではない。
ドイツはかつてフランク王国(843年-962年)の時代には中央ヨーロッパを支配していたし、フランスのナポレオンは一時的に更にそれより広いスペインからポーランドまでのヨーロッパを支配した。
ヒトラーの言う第三帝国とはキリスト教神学において「来るべき理想の国家」を意味するが、彼がやろうとしていることはフランク王国の再現に過ぎないが、今は軍事力で他国を支配する時代ではない。
そのことに気付かない愚かな国は、必ず世界から孤立するはず。
いや孤立して立ち行かなくなり国民からソッポを向かれる世の中にしなくてはならない。
そのためには貴方がそうしたように、国民の意識を平和へと導く努力が必要なのだ。
そして、その先陣をきるのがアナタの改革した日本だと薫さんは優しく言ってくれた。
みなさま、おはようございます(^▽^)/
明日より週末にかけて全国的にお天気は崩れるそうです。
雨が降るにつれて、気候も穏やかになるのは良いのですが、チョッと週末は止めて欲しいです(;^_^A
(ちなみに私の家に近くにある山では、昨日もまだツクツクボウシが鳴いていました)
作中にある朝鮮からいらした人たちの帰国については、戦後最初の首相である吉田茂さんがGHQに掛け合った内容を記載しております。
戦時中、兵器の製造や炭鉱での労働で多くの方にお世話になり、帰国費用と帰国後の家屋なども保証するというのもそのまま同じです。
ただ、これは何処の国でも同じなのですが、移民の方々は頼る家族や親族・友人も少なく、文化や宗教の違いもあり孤立感から犯罪に走る傾向が強くあるようなので、犯罪者の方は選択の余地なく強制送還としました。
最近は日本人も「死刑になるために人を殺した。誰でもよかった」とか、「子供を殺して、自分も死ぬつもりだった」などと戯けたことを言って犯罪に走る人が居ますが、人を巻き込むのは止めて欲しいと切に願います。
戦争だって同じです。
ロシアが良く言っている「○○地区に住むロシア人の人権が侵されている」とか「自国の安全が保障できない」と言って戦争をしたのでは○○地区の人権どころか生命さえも脅かされ、安全なんて保障どころか戦争によってもう崩壊していますよね(;^_^A




