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何かありましたら感想欄のほうへご一報下さい。

 とりあえずマテリアル各種を使いやすい様に整頓しながら、この世界のアイテムは携帯用解体炉で解体できるのか、という疑問が頭に浮かぶ。その辺の土塊や石ころ、木の枝でも解体炉でマテリアル変換出来るのなら、生産だけで生きていけるんじゃないか?


 土や石から金を稼ぐ、まさに錬金術の様相を呈する感じになると思うんだが、どうなるか。

 まずは手持ちのアイテムがどういった変化を起こすのかを確認するか。


 俺はストレージに収納しっぱなしにしていた、空のジュースビンを取り出して小さいテーブルの上に設置された幾何学模様が細かく刻まれた携帯用解体炉の上へと置く。

 フワリと何かしらの力で浮かび上がったビンは光の破片となって瞬時に消え去り、解体炉の放出口から白く四角い小さな金属の塊が一つ転がり出てくる。


 それを摘み上げて指先で転がしながら見た目を再度確認する。

 えーっと? これはゲーム内のグラフィック準拠で考えると、無属性の物理マテリアルだろうな。


 まぁこれは、俺が所持していたアイテムの残りだからマテリアル変換が可能なのは当たり前、なのかな。次はこの世界の物質を変換した場合、だな。


 丁度ヴィルの鎧の切れ端が雑に床に転がしてあるので、それを拝借して確かめてみよう。

 シュネーさんはゴミっぽいものはちゃんと処分しているんだが、あの犬っころはこういった所も雑なんだな。


 まぁ俺としては実験材料を確保できて助かるのだが。


 ヴィルが身につけていた獣の皮っぽい素材で出来た革鎧の切れ端を、携帯用解体炉の上に置いてみる。

 先ほどと同じようにフワリと浮き上がった切れ端は、ビンと全く同じように光の破片になって消え去り、放出口からは茶色くて丸い物体が一つ転がり出てきた。


 んー? 丸くて茶色の解体アイテムと云うと……コレは土属性の触媒か。

 恐らくは防具の素材になった皮の素材属性的な問題かな? それにしてもマテリアル0とは結構変換レート厳しいのか?


 これじゃ、その辺の石や木の枝解体で得られるアイテムは期待薄って所か……

 そうそう上手い話は転がっていないと言う事だな。


 装備の切れ端じゃこんな物なのかもしれないが、流石にさっきシュネーさんから頂いた剣を即解体する訳にもいかんだろうしな。本格的な実験は後にしよう。


 それよりも、二人が戻ってきたらアイテム作成の実験ついでに装備を新調してあげようかな。

 イベント時にドロップしていたアイテムが防具ばかりだったお陰で、ストレージ内に防具用マテリアルばっかり溜まってて武器が作れないのが難点だが……まぁ本格的な施設がないと最上位クラスの武器防具なんて作れないし、今は仕方が無いという話ではある。


 ああークラン拠点にある俺の工房が恋しいぜ……工房さえあれば剣だって新調出来るんだが。


 この世界にもそれっぽい施設があるのかどうか。ファンタジーの定番で考えると、この世界にもドワーフとかそれっぽい種族がやっぱり鍛冶のプロとして存在するのかね。

 まぁ俺の工房並みの施設があるかと言われると、恐らくは期待薄だろう。


 とりあえず手持ちの合成炉で作成できるアイテム群で、現状を凌いで行くしかない。

 救いなのは薬品系統のアイテムはこの最上位携帯合成炉で全種類作れるっていう点だな。


 流れの薬売りとして生きていくのもありだろう。そういう職業があればの話だが。


 試しに下位と中位のポーションを各一つ、携帯用解体炉で変換してみたが、出てきたマテリアルと触媒はゲーム内で手に入る数と変わっていないように見える。

 いざとなればポーションを幾つか解体して素材を作り、そこから上位や最上位の薬品群を作ることも可能だろう。即時蘇生薬を作るとなるとちょっと素材が心もとないが。


 あれは自分に使用することが出来ないアイテムだし無理に作らなくても良いか。

 もしかしたら……あの二人に何かあった場合、作ってしまうかもしれないが。


 なんだかんだであの二人には大分救われている気がする。あの駄目っぽさ満点の犬っころは、俺が住んでいた家の向かいで飼ってる犬にソックリなんだよな。いじった時の反応とかが。

 シュネーさんにも色々知識を授けてもらっているしな。正直二人に出会わずに、一人であの森の中を延々と移動するとか、今思うとゾッとするよ。


 ……うん、作るか蘇生薬。俺の心の平穏を脅かす可能性は潰しておきたい。


 残ってる俺お手製の下位ポーションを、全部携帯用解体炉で潰せば2個分素材量には届くだろう。


 それに俺がもし何かしらの理由でやられたとしても『保険』はあるからな。

 まぁあのふざけた痩身の男がそこまでしっかりと再現していてくれれば、だが……まぁこの調子なら確実に再現しているだろう。

 嫌になるほど再現度高いからな。一度文句を言ってやりたい位にはな。


 そうと決まったらさっさと作業を開始しよう。

 あの二人が戻ってくると色々説明しないといけないし面倒だからな。


 そこで俺は友好PCの座標をマップに表示する探査魔法の存在を思い出す。多分これであの二人が何処にいるかマップに表示されるんじゃないかな?

 こんな微妙魔法、熟練度の関係で覚えたのは良いけれどゲームじゃ全く使わなかったんだがなぁ

 ……PT組んでいればマップに表示されるからな。


 この魔法は、主に友軍NPCや同盟ギルドのプレイヤー表示に使う、レイドモンスター専用魔法だし。


 とりあえず【友軍探知】を詠唱、マップ表示を限界まで引き上げて村全体を確認する。

 村の外周をぐるりと回る感じで移動する緑色の点が二つ。あの二人だな。


 今あそこを移動してるなら暫くは戻ってこないだろう。さっさと作業を済ませてしまおう。

 おっとその前にこの村に【警報】と【探査障壁】いっとくか。


 この二つの魔法は俺が愛用していた魔法だ。効果は敵対NPCの進入察知と進入阻害、あと障壁のHP分の攻撃を遮断する効果だな。


 この村の範囲を覆うとなると障壁HPが微妙だが……

 範囲的にも魔法ブーストから強化発動してぎりぎり全域保護可能ってところかな。

 とりあえず試しに魔法の強化発動をこころみてみるが、上手い具合にいかない。


 流石に全開強化発動は脳内イメージだけでは無理っぽいか? っていうかどうやればいいんだろうな? 口に出していけば良いのか?


 誰も見ていないとは言え、魔法の詠唱とかちょっと恥かしいな。いや、ロマンだと思えば良いのか?

 ええい、どうせ詠唱っつったってスキル名だけだ、気にしないでやるか!

 とりあえず独り言を聞かれないように、ドアが閉まっているのを確認して連続詠唱を試みる。


 発動するのは【大幸運】【精神強化】【体力強化】【精密化】【詠唱速度強化】【強固】【二重詠唱】【第二種制限解除】の8種だ。傍から見たら壁に向かってブツブツいってる怪しい奴だな。


 うん、無事魔法の発動を確認。

 【二重詠唱】と【第二種制限解除】は制限時間が短いから、さっさとやることやっちまうか。


「二重詠唱 制限解除 最大拡大 対象確認……うおぉ!? きもちわりぃ!」


 思わず独り言なのに大声が出た。二種制限解除からの拡大発動を試みた時点で、村の上空からまっすぐ下を見下ろすような視点が俺の脳内に飛び込んできたのだ。視界が二重になって気持ち悪い。


 両目を閉じて実際の視界を締め出し、魔法の発動に意識をまわす。魔法発動確認。


 これで何かヤバイやつが村に来たら警告音が鳴る。

 あと物理的にも魔法的にも障壁が時間稼ぎをしてくれるだろう。その間に逃げるなり倒すなりの判断が出来る。

 よし、何だか一仕事終えた気分だぜ。

 その後、下位ポーションをドカンと携帯用解体炉でマテリアルに変換し、蘇生薬を2本用意する。この世界で『蘇生薬』がどの程度価値がある物なのかが判らないし、一応扱いには気をつけよう。


 ストレージに薬を仕舞った俺は、MPを自然回復させつつ二人が戻るのを待つ。

 戻ってきたら装備のリクエストを聞いて、アイテム作成に取り掛かるつもりだ。

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