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騎士サマ親衛隊隊長な姫君  作者: 萩之まろあ
親衛隊結成後のこと
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修羅場と彼と②

 …………と、そんなことがあったので。現在ミカは無事に親衛隊の編集長として活躍し、その実績を隊員たちに認められているというわけです。うん、良いよね。こうして親衛隊を盛り上げる人材が沢山いることってさ。



「私も原稿、出来ましたー!」

「こっちも完了ですー!!」



 あら、今日は皆さん筆が乗っていますね。じゃあ、これで本日の作業は終了かな?



「では、私が皆さんの原稿を印刷所に持っていきますから」

言って、フラフラしながらミカが立ち上がる。

「いやいや、そんなに疲れているのに出歩くのは止めなさい! どうせ連日徹夜で書いてたんでしょ。早く帰って寝なさい。これは私が持って行くわ」


「でも、印刷所に細かい注文とか付けたいし、表紙の印刷は出来てるはずだから色の確認もしたいし」


 他の隊員の好意に渋るミカ。彼女、言い出したら聞かないんだよね。困ったなぁ。

 しかし、そこに天の声が降り注ぎました。

「僭越ながら、私も体調の優れない女性が無理をするのは賛成できませんね。

 こんにちは、皆さん。立て込んでいるようだったので、勝手に入らせてもらいました」


 イヴァン様ーー!! いつもながらベスト・タイミングです!



「はっ、はい。印刷所へは他の人に行ってもらいますっ」


 おおぅ、ミカの変わり身の早いこと。素直に従った彼女にイヴァン様が微笑まれ、皆が勢いよく鼻血をく。ミカは寝不足と鼻血大放出のダブルパンチで失神し、イヴァン様が抱き上げて別室に運んでくれた。……寝てる間にイヴァン様に抱き上げられたと知ったら、また失神するだろうな。ミカには元気になったら伝えるよう、皆に言い含めなきゃ。



 やっと騒動が収まり、イヴァン様が私に声をかけてくる。


「エリザ殿。そろそろ参りましょうか」

「はい。皆様、お先に失礼しますね」


「隊長、お疲れ様でした!

 イヴァン様、ごきげんよう!!」


 隊員たちに見送られ、イヴァン様と私は庭に出た。彼は高い樹の幹にくくり付けられていた手綱を解き、ご自分の愛馬にまたがる。



「エリザ殿、お手をどうぞ」

 

 馬上から差し出された手を取るのは常に勇気がいることだけど、何とか耐えて取る。力強く引き上げられ、私はイヴァン様の前に座った。ドキドキ。私の背中は彼の胸に密着しているから、イヴァン様の熱が伝わってくる。それに手綱を操る彼の腕も時々、私の腕と触れ合うし。……心臓さん、良い子だから大人しくしていて下さいまし。



「行きますよ」

「はい。宜しくお願い致します」

 イヴァン様が手綱を引き、馬が歩き出す。



「イヴァン様。隊長。

 いってらっしゃいませ」

 家の門を開けてくれたラプネーに私は手を振り、出発した。





**


 馬なので時間をかけずにたどり着いた先は、町の端にある小さな修道院。門の手前で二人して背に外套のフードを下ろして、顔をさらす。不審者でないことは見て分かったと思うので、中に入れて下さいな。



「いらっしゃいませ!」

 イヴァン様をキラキラした瞳で見つめ、頬を上気させた若い修道女に出迎えられ、私達は門をくぐった。


「さあ、エリザ殿」

 またしても庭で、馬から先に降りたイヴァン様に手を差し出される。

「はい」

 お返事をして私はイヴァン様の手をお借りし、トンと彼の胸に飛び込むようになってしまいながら降り立つ。はぅーーん。何て鍛えられた固くて広い胸なのかしら。

 ……………………ハッ。いけないわ、イヴァン様は善意でしてくれているのに、こんなハシタナイことを考えるなんて!



 気を引き締めた私は修道女のほうに身体を向けて、尋ねた。

「院長はいらっしゃいますか? 約束をしているのですが」

「伺っております。こちらへどうぞ」

「私は、ここで待っています。エリザ殿」

「分かりました。すぐに戻りますね」



 いつもイヴァン様は付いていらっしゃらないので、頷いて別れる。今日も私を待つ間、庭で適当に時間を潰されるのだろうと思った。

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