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大好きな義妹が他人になった  作者: 宵月しらせ
第7章 ふたり暮らし

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第6話 恋愛相談1

 授業が終わって帰宅の途につく。

 当然、飾と一緒なのだが……どうも距離が少し遠い気がする。

 いや、明らかに遠い。

 いつも並んで歩いている時より、足半分ほど遠い距離にいる。


「なにか怒ってる?」

「怒っていたら一緒には帰ってない」


 なるほど、たしかにそうだろう。

 すると――


「ちょっと意識してるってこと?」

「………………」


 返事がないところを見るに、図星かな?

 さっきも三島さんから「帰ったら朝の続きするの?」って聞かれてたから、頭の中がそのことでいっぱいになってる――ってところかな。

 なにも恥ずかしがらずに人前でそういう話をする三島もエロいが、思いっきり意識してしまっている飾もエロいと言っていいだろう。

 まぁ今日の分のキスはもう使い切っているから、帰ってもできないんだけど。


 だけど、少し強引に迫ったら断られないような気がする。

 今日の飾の状態だと特に。

 一度ルール違反を認めれば、それが新しいルールになる――という言葉もある。

 キスは一日一回というルールも昨日決まったものだし、案外簡単に崩れるかもしれない。




 家に帰ると、


「ただいま」


 と先に入った飾が誰もいない家に向かって声をかける。

 俺は後ろから、


「おかえり」


 と返事をする。それから俺も同様に「ただいま」と言う。


「おかえり」


 飾がそう返すところまでが、いつものやり取りだ。

 昔からやっていたわけではなく、高校に入ってから加わった新しい習慣。

 洗面所に移動し、手洗いうがい。まぁこれは今までもやっていたことだな。


 ガラガラとうがいをする飾の横顔が視界に入る。

 水で濡れてライトをキラキラと反射させる唇に目を奪われる。

 気が付いた時には、飾の手を取り、抱き寄せていた。


「ちょっ、えっ⁉」


 飾は顔を紅潮させあわてているが、抵抗するそぶりはない。

 このまましてしまっていいのだろうか?

 たぶん、しても怒ったりはしないだろうけど――。

 しかし、一日一回というルールがどうしても頭から離れず、結局キスはしなかった。せっかく握った手は、なにもせずただ話すだけ。


「いや、なにもしないんかいっ!」


 ぺしっ、と飾が手で軽くツッコんでくる。

 笑っているので、なにもしないという選択は、きっと間違いではなかったのだろう。

 だからと言って、あのままキスしてしまうという選択肢が間違いだったとも言い切れない。

 俺の選択は間違いではなかったが、あちらの選択こそが大正解だった――そんなことだってある。

 もうちょっと強引な方がよかったのだろうか?

 でもそれはそれで怒るかもしれないからなぁ……。



 帰宅後、飾は朝にできなかった洗濯をして、俺は夕食の準備にとりかかる。

 ふたり分なので、いつもよりは少し手抜きに。

 洗濯が終わり、飾も料理に合流。パッパッと手際よく作業を進めていく。

 品数が少ないし、父さんを待つこともないので、いつもより少し早いが食事をすることにした。


 食後、それぞれの部屋に戻って宿題をする。

 テスト前で勉強のスイッチが入っている時は一緒にやるが、それ以外は各自でやるのが昔からのうちのスタイルだ。

 理由は単純で、一緒にいるとつい遊んでしまうから。

 難しい問題でつまずいている最中、電話がかかってきた。父さんからだ。


「父さんがいなくてなにか困ったことはないか?」


 という感じのことを聞かれた。

 実際のところ、昨日の今日でそんな困ったことが起きるとは思っていないだろう。

 理由なく電話するのが照れくさいから、そんなことを聞いただけのはずだ。


「特になにもないよ。父さんこそ、久々の泊まりの出張で困ってない?」


 そういう話をしばらくしてから、「飾にかわろうか?」と持ちかけた。


「いや、飾には明日電話をするよ。今日と同じで一時間くらいたっぷり話してもらうつもりだから、この時間を開けておくように言っておいてくれ。ゲームしたいからパス、なんて言わせるなよ」

「わかった」


 さすがそんなこと言わないと思うけど……っていうか、一時間⁉ 意外と長く話していたな。全然中身がない会話しかしてないのに。

 顔が見えないからか、いつもより話しやすい気がしないでもないな。


「どうだ、涙衣。飾とふたりでうまくやってるか? 迷惑はかけてないか?」

「迷惑は……かけてるかな」

「まぁそうだろうな、お前は昔から飾が大好きで、なにかとかまいたがっていたからな。ふたりだけでいたら、ウザがられることもあるだろう」

「うん……」


 父さんの言う通り、俺は昔から――飾のことを異性として意識するより前から、飾に相手してもらいたくて、注意を引けるようにいろいろやっていた。


「あまりやりすぎるなよ。飾は、他の人に対してよりも涙衣に対してより寛大だけど、それでも限度はあるぞ」

「うん」


 水着を着てとはいえ、風呂に乱入したのはやりすぎだったかな?

 やりすぎだよな、さすがに。


「ねぇ、父さん」

「なんだ?」

「もし俺が、飾のことを好きだって言ったら……異性として好きだっていう話をしたら、どう思う?」

「もしじゃなくて、もう言ってるじゃないか。ってツッコミは置いといて――」


 父さんが少し間を開ける。

 なんと言われるだろう。

 そんなのダメだ、と言われるだろうか。


「――まぁ、お前たちの自由じゃないか?」

「……そう」

「なんだ、意外な返答だったか?」

「そういうわけじゃないけど、少しくらい困るかなって。それに、変に思われるかもなって。兄妹だったわけだし」

「実の兄妹だったらさすがに思うところはあるけどな。血の繋がりはないんだから、いいんじゃないか? それに、涙衣なら、飾のことを誰よりも大切にしてくれそうだしな」


 俺の父親目線でなく、飾の父親目線で語ってる?

 それでも合ってると言えば合ってるんだが……父さんも複雑な立ち位置だな。


「そう言ってくれるなら、安心して話せる。実は――」

「なんだ、父さんに恋愛相談か? バツ2だって知ってるのか?」

「二回目も結婚したってことでしょ。恋愛マスターじゃん」

「結婚はした時点で勝ちじゃないぞ。継続してようやく勝ちになるんだ。父さんは二戦二敗だぞ」

「あ、そっか。じゃあ話さなくていいか」

「いやいや、ここまできてやめないでくれ。父さんが答えられることなら、なんでも話すから」


 そう言われてもねぇ。

 さっきまでは、少しは信頼できそうだと思っていたけど、今や全然期待できなさそうに思えてきたし。

 まぁいいか。これも親孝行だと思って。


「前に飾に告白したんだけど――」


 と、フラれた、というか今のおかしな関係になってしまった経緯を説明した。

 もちろん、キスしただの、水着で風呂に入っただのの話はカット。


「なるほどなぁ。仲の良い家族だと思っていたのに、あいつ裏切られて恋愛不信になっている、と。半分くらいは父さんたちのせいかもな」

「別にそれで責めるつもりはないよ。ただ、飾がそれで微妙に踏み込みにくい線を引いてしまって困ってるんだよ。どうしたらいいかな」

「う~ん…………………………」


 うなったままなにも言わなくなってしまった。

 役に立たないな。


「いきなりこんな難しい話をされてもすぐには答えられない。少し時間をくれ」

「わかった。期待しないで待ってる」

「いや、おおいに期待してくれ」


 電話を終えてから、少し考える。

 つい父さんに話してしまったが……本当に良かったのかな?

 まぁいつまでも秘密にはしておけないし、将来的に飾と付き合うことは許してくれたし、別にいいか。

 さて、残った宿題を片付けて風呂に入るか…………風呂っ⁉


 しまった。父さんとの長電話で、ずいぶんと時間をくってしまった。

 いつもなら飾が風呂に入っている時間をとっくに過ぎている。間に合うか?

 廊下に出ると、パジャマ姿の飾と鉢合わせた。


「間に合わなかったか……すまん、父さんと長電話していて、時間を忘れてしまった。一緒に風呂に入る約束を忘れていたわけじゃないんだ」

「いや、そんな約束してないし、別に待ってなかったけど?」


 しかし、洗濯物の干場には飾の水着が干してあった。

 待っていないと言いつつ、俺が入って来てもいいようにはしていたんだな。

 期待に応え、明日はちゃんと一緒に入らないと。

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