第六十二話「アーマード」
僕が新たに手に入れた力。
それは。
「なっ!?」
「これが、新たな力です」
ロメリアさんの赤炎を素手で受け止めた。
その姿は、一見すればロウガとハヤテが合体した姿。だけど、ところどころ違うところがある。ハヤテの鉤爪は、両足に装着され、エネルギー砲は二丁になり、背に。
そして、両の手の甲には。
「ロボットとの一体化。なるほどねぇ!!!」
僕の新たな力に一瞬驚きはしたが、ロメリアさんはすぐさま赤炎から高温の炎を放出。僕の体を包み込んでいく。
けど。
「その炎エネルギー、貰いますね」
今の僕には、自分の力を高めるエネルギーでしかない。
赤炎から放出された膨大な炎は、両の手の甲にあるホイールが高速回転しあっという間に吸収。そのまま、己のエネルギーとして変換した。
その瞬間、体の中央にあるエネルギー結晶が輝く。
「エネルギー変換完了。〈イグニッション〉!!!」
「つあっ!?」
噴き上がる闘気。
空いている左手にエネルギーを纏わせ、そのままロメリアさんへと叩き込むも、寸前で赤炎を消し去り後方へと跳び、回避した。
魔剣は自由自在に消せるのか? 少し驚くも、僕は相手に隙を与えないように詰める。
「あはははは! いいねぇ、いいねぇ!! こういう戦いをやりたかったんだよ!! あたしはぁ!!」
歓喜に震えながらも、ロメリアさんは今一度赤炎を顕現させ突進してくる。
「おらぁ!!」
大振りの横薙ぎ。
それに対して、僕は左腕で防御し、右のエネルギー砲を肩に設置。
そして、圧縮したエネルギー弾を発射した。
初見の攻撃。
だが、ロメリアさんはギリギリのところで回避する。多少、髪の毛が焦げてしまったようだが、そんなことを気にすることなく、更に前に出る。
「楽しい! 楽しいよ、アース!!」
強烈な回し蹴りが、僕の横っ腹に直撃する。普通なら、激しい痛みと共に体が吹き飛ぶほどの威力なのだろう。
「やれやれ……硬いにもほどがあるね」
僕は、その場から一歩も動くことなく痛みもなかった。
やれやれと頭を抱えながらも、ロメリアさんは後ろへ跳んだ。
「なかなかの力だ。自慢じゃないけど、あたしの蹴りは鋼鉄を砕く威力なんだけどねぇ」
「それは、危ないところでした」
「あーあ、今も足が痺れちまってるよ。どんだけ硬いんだい? その鎧」
本来、ロウガの装甲は薄い。
とはいえ、簡単に砕けるほど軟ではない。
「そういえば、ずっと気になっていたんだけど」
「なんですか?」
開始からずっと激しい攻防を繰り広げていた僕達は、呑気に会話をする。しかし、そんな中でも相手の動きを観察している。
「妖精ちゃんは、どうしたんだい? あんたがロウガ達を纏ってからずっと見当たらないけど……」
「ああ、ティナですか」
と、僕は返事をしながら体に触れる。
「ずっと、僕達と一緒に居ますよ」
そう。ティナは、ロウガとハヤテ同様に……いや、二体と違い僕の体の中に居る。
「へえ。まさかとは思ったけど」
とはいえ、ティナは喋ることができない。
それに、正直に言うとティナの役割からして、あまり長時間この状態を保つわけにはいかない。彼女は、ロウガ達にエネルギーを与えていたように、僕と一体になったことで常にエネルギー補給と強化をしている。
ロメリアさんと戦う前に試しこの姿になった後、ティナに聞いてみた。
僕と一体化している間、意識はあるのかどうか。
ティナの回答は……眠っている感覚だった、と。
「さぁて。新しい力の一旦を見たところで……マジのマジで行かせてもらうよ!!」
魔力の爆発。
それは炎となって、ロメリアさんの全身を包み込む。そして、再び姿を現したロメリアさんは……獣となっていた。




