表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/67

第六十一話「決闘開始」

 あれから数十分の時が経ち、祭を楽しんでいた人々は決闘の場の席が埋まるほど集まっていた。中に入れなかった人々は、神聖国の使者達が四方に散らばり、障壁を張る準備をしていた。

 そんな盛り上がりが最高潮直前と言った空気の中で、僕は今か今かと入場口で待っていた。


「いよいよね」

「うん」

「私は、これっぽっちも心配はしていないわ! 圧勝して、パー! と騒ぎましょう!!」

「ふふ。そんなこと言って。さっきまで、心配そうにあちこちを飛んでいたのに」

「う、うるさいわね! そういうあんたはどうなのよ?」


 と、ティナが恥ずかしそうにシャルに問いかける。


「私もティナちゃんと同じ気持ちです。アースさんが勝つと信じています。ですが、相手は世界でも指折りの実力者。アースさん」

「ん?」

「これを」


 シャルから受け取ったのは、護符だった。

 

「これには私の。そう私のいち―――いえ、想いを込めた聖女の護符です。反則になるような能力向上魔法は込められておりませんが、効果は絶大です」

「ねえ、今なんて言おうとしたのよ」

「なんのことかな? ティナちゃん」


 僕も気になるところだけど、もう時間だ。


「ありがとう、シャル」


 そう言って、護符を腰のポーチに仕舞う。


「それじゃあ、行ってくる」


 一呼吸入れ、ロウガとハヤテを召喚する。


「あんたは、何も心配せず応援してなさい!!」


 そこに、ティナが〈ブースト〉を僕とロウガ、ハヤテにかける。決闘に際して、ルールがいくつか決められた。

 まず、出場者以外からの支援は全面禁止。

 先ほどシャルから貰った護符には、確かに魔力反応はなく、身につけているだけで何かしらの支援があることはないだろう。


 次に、出場者は予め決め、追加することはできない。

 今回、ロメリアさん一人に対して、僕はティナ、ロウガ、ハヤテを加えた複数人参加となっているけど……この辺に関しては話し合いをして了承されている。

 ティナ、ロウガ、ハヤテは召喚士の攻撃手段という認識となった。


「来たね、アース」


 先に待っていたロメリアさんは、赤炎を地面に突き刺したままにやりと笑みを浮かべる。


「覚悟しなさい! 負けた後に、そっちは複数だったから! とか文句言うんじゃないわよ!!」

「あはははは!! 当然じゃないか。あたしは、そんな度量の小さい女じゃない。アースにとってあんたらは、仲間であり、力だ。文句なんてあるわけないさ」


 まあ、ロメリアさんはこういう人だよね。


「さあ、決闘前の軽い会話はここまでだ。審判!! 決闘開始の宣言をしな!!」


 すると、観客席に移動していたシャルが一人立ち上がった。

 そう。審判はシャルが務めることになっている。


「それでは、僭越ながら私、聖女シャルが平穏祭最後を飾るイベント……英雄アースとギルドマスターロメリアによる決闘の開始を宣言します!! 両者、構え!!」


 シャルの言葉に、僕は杖を。ロメリアさんは赤炎を構える。


「―――決闘、開始ぃ!!!」


 決闘開始の宣言と共に、隣にいたドッゴさんが鐘を木槌で叩く。

 ついに始まった。

 ロメリアさんとの決闘が。


「ロメリアさん」

「なんだい?」


 互いに睨み合う。僕は、今にも飛び出しそうなロメリアさんにこう告げた。


「最初から、全力でいきます」

「そんなの」


 僕の言葉を聞いたロメリアさんは、赤炎を構え飛び出す。


「当然じゃないか!!」


 迫りくる巨大な刃。

 僕は、焦ることなく静かに呟く。


「〈アーマード〉」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ