表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/67

第六十話「決闘前の熱い空気」

 いよいよだ。

 僕は、平穏祭を十分に楽しんだ後、いち早く戦いの場へと訪れていた。まだ祭は続いているので、客席には誰も居ない。

 だけど、時間となれば客席は埋まるかもしれない。


 ただの訓練場ではなく決闘場も兼ねているということもあり、広さは十分。円形のフィールドとなっていて、客席のある壁も成人男性三人分ぐらいはある。

 その中央に僕は佇んでいる。

 

「珍しく燃えてるわね、アース」

「はは、そうだね。僕自身、戦いがこんなにも楽しみになっているなんて、初めてのことかもしれないよ」


 隣で微笑ましそうな表情で見ているティナに、僕は右拳を握り締めながら呟く。


「……正直、僕は戦いが嫌いだったんだ。というよりも、怖かった、かな」


 子供の頃の僕は臆病で、自分が傷つくのも、誰かが傷つくのも嫌だった。

 そんな僕が変わったのは、村に手負いの魔物が現れた時。

 勇敢にも、その魔物に挑んだのはチャールで、そのチャールがピンチになり、彼が死ぬのが嫌で無我夢中で、傍にあった鍬で魔物の背中を攻撃した。

 そこからは、チャールと一緒に魔物が完全に命を落とすまで攻撃を続けた。


「へぇ、そんなことがあったのね。じゃあなに? アースが戦えるようになったのは、あの馬鹿勇者のおかげってこと?」

「馬鹿勇者って……まあ、そうなるかな」


 あの時のチャールの姿は、本当に勇敢だった。

 僕にとっては、勇者のように見えたんだ。

 だからこそ、なのかな。恐怖を振り払い、魔物に立ち向かうことができたのは。


「もし、あの出来事がなかったら、ずっと小さな村でほそぼそと暮らしていたかもしれない」

「なるほどねぇ。だったら、剣の勇者には感謝しないといけないねぇ」

「ロメリアさん?」


 どうやら、ロメリアさんも待ちきれずと言ったところか。ずっと燃える闘志が目に宿っていたけど、今は比じゃないほどに一段と燃え上がっているのがわかる。

 その瞳は、戦う相手である僕へ向けられていた。


「準備はどうだい? 英雄」

「……できていますよ、もちろん」

「いいねぇ。戦う男の目をしてる。こっちも一層滾るってもんだよ」


 周囲には誰もいない静寂が包む決闘の場で、僕とロメリアさんはただただ無言で見詰め合う。


「ロウガ、ハヤテ」


 そして、僕は共に戦うロボット達を召喚する。


「改めて見ると、その異様な存在感がひしひしと伝わってくるね。ロボット……まだ謎多き存在だけど、これだけは理解できてる」


 と、背にある赤炎のこちらへと突き付ける。


「あんた達は強い。その強さ……真っ向から打ち砕いてやるよ」


 そんなロメリアさんの言葉に、ロウガが一歩前に出た。

 言葉は発しないが、なんとなくわかる。

 それは、ロメリアさんもそうだったようで、ふっと笑みを浮かべた。


「楽しみにしてるよ、決闘の時を!!」


 満面の笑みを浮かべ、ロメリアさんはその場から姿を消す。


「頼んだよ、ロウガにハヤテ」


 ロウガには肩に、ハヤテには頭に手を置く。二体は、静かに頷いた。


「アースさん。そろそろ時間です」


 すると、色々と手配をしてくれていたシャルが僕を呼びに来た。

 

「わかった。ティナ、シャル。応援よろしくね」

「まっかせなさい! 全力で応援するわ!!」

「私もです。あなたに聖女の祝福を」


 さあ、いよいよ始まる。

 必ずロメリアさんに勝利して、今の僕の力を証明するんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ