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第五十九話「平穏祭二日目」

「ふう……」

「お疲れ様、シャル」

「いえ、これも聖女の務めですから」


 平穏祭の二日目の朝。

 一通りのことを終えたシャルは、僕達と一緒に祭を周ることになっていた。聖女として色々と仕事をしていたせいか、気丈にふるまっているが疲労の色が見える。


「それで? 今後について、どうなったのよ」


 と、ティナは問いかける。


「とりあえずは、いい方向に進んだ、と言ったところですね」

「それじゃ、今日は思いっきり祭を楽しもう」

「はい。もちろんです」


 それからは、昨日シャルのためにと思いリサーチしていた屋台を中心に周り、時間を費やした。

 ティナもそうだが、シャルも意外と食べる方なので、屋台の人達はかなり驚いた表情をしていたなぁ。シャルにいたっては、一日目から楽しめなかった分もあるのだろうけど。


「―――ふいー。食べた食べた」

「それはよかった」


 などと言いつつ、僕は随分と軽くなった財布をこっそりと握り締めながら笑顔を作る。


「ご心配はいりません、アースさん。もしお金が必要でしたら私がお出しします」

「い、良いんだよ。こういう時はかっこつけさせてほしいな。あはは……」


 自分の分は自分で。

 シャルはそう言って僕が金を出そうとするのを止めようとしたけど、僕も僕なりに男としてかっこつけたい部分があったわけで。

 

「よう、兄弟! 楽しんでるみてぇだな!!」

「ドッゴさん!」


 食休みをしているところへドッゴさんが姿を現す。


「なによ。偵察でもしに来たわけ?」

「はっはっはっは!! 敵意むき出しだな!! まあ、この後のことを考えれば当然の反応だな」

「ロメリアさんは?」


 ティナを宥めつつ、僕は問いかける。


「今は、存分に祭を楽しんでるところだ。お前達のようにな」

「そう、ですか」

「が、ただ楽しんでるわけじゃねぇ。お前との戦いに向けて闘志を燃やしているんだ」


 それは僕も同じだ。

 祭を楽しみつつ、戦いへ向けて闘志を燃やしている。


「ドッゴさん。先日のことはロメリアさんにお伝えしていただけたでしょうか?」

 

 シャルが訪ねると、ドッゴさんは頷く。


「ああ。もちろんだ」


 先日のこととは、僕とロメリアさんの決闘についてのことだ。

 戦いの場は、ギルドが保有している訓練場兼決闘場を使うことになった。ただ、念のためにシャルと神聖国からの使者達による結界で、更に防御を固めることになっている。

 

 外でやろうにも、ロメリアさんが本気を出せば周囲の草木が燃えてしまい、大惨事になってしまう。かと言って訓練場兼決闘場をただ使っても、耐久度が心配になる。

 それに加え、祭の最後を飾るイベントということもあり、見学人達が集まる。

 その人達を護るためにも、何かしらの防御対策は必要だった。そこで、シャルが自分と神聖国からの使者達による結界を張ることで防御対策を取ることにすると提案したのだ。


「しっかり頼んだわよ?」

「ええ。アースさんが思いっきり戦えるようにしっかり努めますとも」

「ロメリアの姉貴も見学人達が大丈夫なら思いっきりやれね! って喜んでいたぜ」

「ところで、なんで昨日の会議に来なかったのよ」


 ティナが言うようにロメリアさんは、今日の決闘に関しての会議。つまりは、ルールや先ほど言った結界についてを決める話し合いがあった。

 ロメリアさんにも当然声をかけたつもりだったのだが……。


「すまねぇな。祭を楽しみ過ぎたようで、ぐっすり眠っちまったんだ」

「えぇ……」


 ドッゴさんの言葉にティナは眉を潜めながら声を漏らす。


「アース! もうけちょんけちょんしてやりましょう!!!」


 そして、よりやる気が上がったようだ。

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