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第五十六話「ギルドマスターからの挑戦状」

「はあ!? あんた、なに言ってんのよ!」


 ロメリアさんの申し出にまず声を上げたのはティナだった。

 声を荒げながら、僕とロメリアさんの間に割って入ってくる。


「そ、そうですよ。盛り上がるイベントならもっと別のものを」


 シャルもロメリアさんに冷静になるよう訴えかけるが。


「―――確かめたいんだよ」


 先ほどまでの軽い感じから一変した彼女の雰囲気に口を閉ざす。


「それは……僕が、本当に世界を救えるかを、ですか?」

「ああ、そうだ」

「ば、馬鹿ね! 実際、魔族を倒して、闇のダンジョンを攻略したじゃない! あんただって、自分の目で確かめたでしょ!?」


 雰囲気が変わっても、ティナはロメリアさんに訴えかける。


「ああ、見た」

「で、では。なぜ?」


 シャルの言葉にロメリアさんは、にっと笑う。


「この先は、もっと強大な敵が待ち受けてる。当然、今回戦った魔族よりもね。だからこそ、その魔族を倒して成長して手に入れた新しい力を、あたしやここに居る連中に見せ付けてほしい! あぁ、こいつならこの先ももっと強くなって、必ず世界を平和にしてくれるって、思わせてほしいんだよ!!」


 ロメリアさんの大声に、周囲の人達も何事だと視線を集め始める。


「と、とか言って。ただ単純にあんたが戦いたいだけなんじゃないの?」

「あははは!! もちろん、それもある!!」

「やっぱりあるんかい!!」


 付き合いは短いけど、彼女は嘘はつけない人だということは理解できる。ロメリアさんは、本当に今の僕と戦ってみたいんだろう。

 でも、それと同時に先ほどの言葉も本当のことなんだろう。

 

 確かに、今回は魔族を倒し闇のダンジョンを攻略した。

 けど、クリントはおそらく魔族の中でもまだ実力は下のほうなのかもしれない。この先、旅を続ければもっと上の実力。

 それも魔族だけではなく、魔物や他種族とだって相手をすることにもなるかもしれない。


 そんな未知なる強敵達と戦い、勝利し、世界を平和にしてくれる。

 僕が、そういう存在なのだとロメリアさん達に思わせる。

 そう……勇者のように。

 

「で? どうなんだい、アース」

「アース。別に無理して付き合わなくてもいいのよ?」

「アースさんが見世物のような感じで、あまりいい気分ではありませんが……ロメリアさんの言葉を完全に否定はできないのも……」


 きっぱり断るように促すティナと悩むシャルの姿を一度見てから、僕は息を吐く。

 すでに周囲から多くの注目を集める中で、僕は。


「……わかりました。ロメリアさんの提案―――いえ、挑戦を受けます」

「おお! あんたならそう言ってくれるって信じてたよ!!」

「い、いいの? アース」


 心配そうに見詰めるティナに微笑みながら僕は頷く。


「この先、僕達の想像もできない相手が待っている。だから、少しでも実践を積んで、自分の力を完全に把握しておきたいんだ。……世界を救うって決めたからね」


 今までは、ただ誰かの、チャールの役に立ちたいとか。そういう感じの考えだったけど。

 今は違う。

 僕が、僕自身が前に出て、役に立つ。そうすることで、誰かの助けになるはずだから。


「その言葉に、嘘はないね。よーし!! そうと決まれば、祭の準備を終わらせないよねぇ! あんた達!! 張り切って準備しな!!」

「おうとも!!」

「やってやりますとも! 姉さん!!」


 僕の言葉を聞いたロメリアさんは、本当に嬉しそうに身を翻し、去って行く。


「あーあ、あたし知らないわよ」

「ごめんね、ティナ」

「……まあいいわ。やるからには、勝ちなさいよ」

「ロメリアさんは強敵です。ロボットという未知数の力があるとはいえ、油断はできません」

「うん。だから、しっかり対策を練らないとね」


 旅立つ前に、ひとつ壁を乗り越えなくちゃならない。

 さあ、しっかり準備をしないと。

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