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第五十五話「提案」

お久しぶりです……。

しばらく充電してました……。

 それは、闇のダンジョン攻略後の夜。

 さすがに疲れが溜まっていたのか、ベッドに入った瞬間にぐっすりと眠りに落ちた。

 

「その時に、声が聞こえたんだ」

「声ですか? そのようなものは聞こえませんでしたが」

「あんた、当たり前のように同じ部屋に居たわよね」


 正直、シャルがいつの間にか同じ部屋に居ることに対して、驚かなくなっている。

 

「それで、声をというのは」

「二人には、話したことがなかったけど。夢に不思議な少女が何度か出てきたんだ」

「不思議な少女、ですか?」

「うん」


 僕は頷き、ティナを見る。


「その子、ティナになんとなくだけど雰囲気が似てるんだ」

「へ? 私?」


 と、ティナは目を丸くする。

 

「たぶんだけど、彼女は……僕が手に入れたこの力に関係してる。ハヤテを召喚できるようになった時も、彼女から受け取った感じだったから」

「へぇ……」

「では、その手の甲のものも」


 改めてシャルは、僕の手の甲に刻まれている紋章へ注目する。

 

「おそらくね」

「でも、それってただ縦線があるだけよね?」


 今までは歯車だけだった。でも、今では縦棒のようなものが刻まれている。端から端へではなく、中央に何か意味があるように刻まれているんだ。

 

「いったいどういう意味があるんでしょうか」

「さあ?」


 本来なら二人のように首を傾げているところ。

 けど、僕には理解できる。

 

「限界突破したんだ」

「限界突破?」

「それは、能力が向上したということ、ですか?」


 一般的に限界突破とは、修練により身体能力などが向上することを意味する。例えば、剣の修練の末に剣技を習得したり。

 魔法を習得したり。


「まあ確かに、魔族を倒して闇のダンジョン攻略したんだから、それぐらいはして当然だけど」

「では、また新たな召喚を?」


 シャルの言葉に、僕は首を横に振る。

 

「実は、まだよくわかってないんんだ」

「え? どういうこと?」

「実は、これって召喚士の力なのかな? って思うものなんだ」

「なに? なに? ちょっと気になるんだけど!」

「召喚士らしくない力。私も気になります!」


 僕の言葉に、二人はどんな力なのかとぐいぐい迫ってくる。

 と、そこへ。


「なんだい、なんだい。随分と面白い話をしてるじゃないか」

「あ、ロメリアさん」


 上機嫌なロメリアさんが声をかけてきた。


「新しい力を手に入れたって? そりゃあ、あたしも興味あるねぇ」


 そう言いながら、何かを考える素振りを見せる。

 そして、何を思いついたのか。にかっと意味ありげな笑みを浮かべた。

 なんだか嫌な予感がする……。


「実はねぇ、この祭のメインイベントがまだ決まってないんだよ」

「はあ? メインイベント?」

「そうそう。こう、最後にぱー! っと盛り上がるような刺激のある感じの」

「ですが、今回のお祭の趣旨は平穏」

「そこでだ!!」


 シャルの言葉を遮るかのように、ロメリアさんが大声を上げて、顔をぐいっと近づけてくる。


「あんたら、この祭が終わったら旅立つんだろ?」

「は、はい」

「てことは、あたしとももう簡単には会えないってことだ」


 ロメリアさん的には、今回の一件で闇のダンジョンを制覇する旅をするのも悪くないと思うようになったらしいけど。

 立場などの色々なことを考え、断念したんだ。


「―――最後に、あたしとガチの勝負をしないかい? アース」


 ギラギラと燃え滾る闘志が両目に宿っているのがわかる。

 ロメリアさんは……本気で言っている。

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