第五十三話「帰還」
大急ぎで戻った僕らを出迎えたのは、ドッゴさんを筆頭とした冒険者達だった。
怪我を負ってはいるものの命に別状はなさそうだ。
「よう! お前達! 無事だったか!!」
「ロメリアさん!」
「瘴気がなくなったってことは」
「はい。無事、魔族を撃退して、闇のダンジョンを攻略しました」
シャルの言葉に、冒険者達は歓喜の声を上げる。
「それにしても、あんた達やるじゃない。目立った怪我もないなんて」
「おう。それなんだがな」
ティナの言葉に、ドッゴさんが率先して説明を始めた。
「勇者が?」
「はい。ロメリアさん。俺達が、魔物どもと戦っている時に、加勢してくれたんです」
「魔法使いの子も、本調子じゃなさそうでしたが、普通に強かったですぜ」
僕達が闇のダンジョンを攻略している間、どうやらチャール達が加勢してくれていたようだ。そのおかげで、冒険者達も大怪我を負うことなく瘴気で強化された魔物達を倒せた。
「んで? その勇者様一行はどこに行ったんだい?」
ロメリアさんが、辺りを見渡しながら問いかける。
「瘴気が消えた途端に、何も言わずに」
「……チャール」
彼のことだ。もしかしたら、もう街には……。
「アースさん。彼らのことも気になりますが、今は」
「うん、そうだね」
シャルに声をかけられた僕は、頷き冒険者達を見詰める。
「皆さん! 僕達がダンジョン攻略をしている間、魔物達と戦って頂きありがとうございました!!」
僕達を信じて戦ってくれた冒険者達に労いと感謝を。
「なに言ってんだ。街を護るのも、魔物と戦うのも冒険者として当たり前のことだぜ?」
そう言ってドッゴさんが、ぐいっと僕の肩を抱きにっと笑う。
「そうそう。まあ、正直怖かったけど」
「だな。瘴気で強化された魔物は強いって聞いてたけど、マジで危なかったよな」
「私なんて、危うく真っ二つにされそうだったし」
危なかったと言いつつ、冒険者達の表情は柔らかなものだった。それを見たロメリアさんは、呆れたようなでも、安心したような表情で息を漏らす。
「よーし、あんた達! 街の危機は去った! 気持ちよく凱旋といこうじゃないか!!」
「おー!!」
「くー! 今日の酒はとびっきり美味いだろうなぁ……!」
「まずは、怪我の治療からでしょ? あんた、腹から血が出てるじゃない」
そう。闇のダンジョンは消え、もう瘴気もない。
魔物は普通に居るとはいえ、ひとつの脅威は去ったんだ。
「アース」
ロメリアさんを中心に歓喜の声を上げている光景を見ていた僕の肩にティナが腰掛ける。
「やったわね」
彼女の微笑みに、僕は釣られて笑みを浮かべる。
「さあ、アースさん。行きましょう」
ぎゅっと手を握り締め、シャルが僕を引っ張る。その先には、ロメリアさんと冒険者達が待っていた。
「うん」
僕は、一度青空を見上げてから、足を動かした。




