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第五十二話「闇のダンジョン攻略」

「……やった、のか?」


 崩れ落ちていく鋼鉄の巨体を見詰めながら、僕は呟く。

 鋼鉄は、次第に光の粒子となって四散していき、残ったのは……今にも息絶えそうなクリントただ一人。

 アイアンゴーレムと融合していたからだろうか。

 腹にぽっかりと穴が空いており、大量の血液が流れている。


「く、そ……! 魔族の俺が……! 人間、ごときに……!!」

「妖精もいるわよ!」

「ロボットもね」


 と、クリントの言葉にティナとロメリアさんが言う。


「そう、それだ。妖精、はともかく……んだよ、ロボットって」


 どうやら魔族もロボットの存在は知らないようだ。

 やはり、ロウガやハヤテは、それほど特別な存在だということ、か。


「ふざけ、やがって……そのロボット、さえいなけりゃ……!」

「負け惜しみ?」

「そもそも、あたしらは瘴気漂う場所で戦ってるんだ。卑怯だなんて言わせないよ? 魔族」


 ロメリアさんの言う通りだ。僕達は、魔族や魔物に有利な場所で戦わされれている。他人の世界を侵略しようとしている者達に、卑怯だなんだと言わせない。

 

「……ちっ。まあいい。俺程度を倒したところで魔王軍にはダメージなんて一切ねぇからな。先に地獄で待ってるぜ……!!」


 そんな捨て台詞を吐き捨てクリントは、魔素となって四散した。

 

「あいつ。私達が、地獄に落ちるとか思ってるのね」

「悪役によくある捨て台詞じゃないか。気にすることないよ。それよりも」


 と、ロメリアさんがずっと固く閉ざされていた扉へと視線を向ける。


「終わり、ましたね」


 階層主であるクリントを倒したことで、開いていく扉を見詰めながらシャルが呟く。

 正直、不安がなかったといえば嘘になる。

 闇のダンジョンに挑むだけでなく、魔族と戦う。勇者の力がない僕にやれるのかと。けど、こうして闇のダンジョンを攻略することができた。

 僕は……いや、僕達はやったんだ。


「帰ろう。皆が待ってる」

「そうね。ここを私達が出ないと闇のダンジョンも消えないしね」


 今も冒険者達はダンジョンの外で戦っているはずだ。

 階層主は倒した。後は、僕達が外に出れば闇のダンジョンは消える。そうすれば、森を侵食していた瘴気も同時に消える。

 

「さっさと行くよ! 正直、体がだるくなってきたよ」


 僕達は、外への転移陣へと歩を進める。

 魔族を倒し、闇のダンジョンを攻略したと実感しながら。


「―――ん?」


 転移すると、まるで時間が巻き戻ったかのように、森を侵食していた瘴気がなくなっていく瞬間が視界に映る。

 だけど、正確には時間が戻ったわけじゃない。ずっと瘴気に侵されていた草木はボロボロだ。


「見て、アース。闇のダンジョンが」


 ティナの声に、踵を返す。

 

「消滅していく」


 禍々しいオーラを放っていた闇のダンジョンも消滅。

 これで、本当に……。


「さて、と。あいつらは、無事だろうね?」


 そうだ。勝利の余韻にどっぷり浸るのはまだ先だ。僕達が、闇のダンジョンを攻略している間に、街を護らんと戦ってくれていた冒険者達の無事を確認しなければならない。


「行きましょう。シャル。まだ治癒魔法は使える?」

「はい。任せてください」


 皆さん。どうかご無事で。

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