第四十九話「階層主戦(3)」
「やれ! スカルウィッチ! アイアンゴーレム!」
まずは、スカルウィッチの魔法攻撃。
今度は二属性同時の攻撃だ。
しかも、最初の氷属性魔法の〈アイシクル・ランス〉ではなく、火属性と雷属性。こちらを逃がさないと言う意思を感じるほど、数えきれないほどの魔法の球体が作られている。
そして、その背後で右腕をゆっくりと振り上げるアイアンゴーレム。
あれほどの大きさだ。
その場から動かなくとも、ただ腕を振り上げるだけでこちらに攻撃が届く。
加えて、こっちが攻撃を避けたとしても、その衝撃が余波となって襲い掛かる。離れた場所でファイアスピリットナイトと戦っているロメリアさんにも当たる恐れがある。
ならば。
「シャルは魔法障壁! ロウガは前進! ハヤテは、魔法を撃ち落とせ!」
「はい!」
そして、僕は。
「遠距離から砲撃だ」
エネルギー砲を構え、僕は単騎で突っ込んでいくロウガの後ろ姿を見詰めながら、エネルギーを収束。
こちらが動いたと見るや否やスカルウィッチが魔法を放ってくる。
だけど、それをハヤテがエネルギー弾で確実に撃ち落としていく。
撃ち漏れがあっても、シャルが展開した魔法障壁で防げている。
「アース! ゴーレムの攻撃がくるわよ!」
「わかってる!」
「さあ、こいつの拳をどう防ぐ!」
クリントの問いに、僕はふっと笑みを浮かべながら収束したエネルギーを解き放った。
「はは! 真正面からかよぉ! 面白れぇ!! だが、こいつは、俺が召喚できる魔物の中でも特別―――あっ?」
自分が召喚した魔物の自慢をしている中、突如としてロウガが自ら解き放ったエネルギーの前に出た。
「なっ!?」
さすがのクリントも訳の分からない展開に驚いたらしく、目を見開いている。
「やっちゃえ! ロウガ!!」
ティナの叫びと同時に、ロウガの体から溢れんばかりのエネルギーが放出される。そして、一筋の閃光となって、アイアンゴーレムへと突っ込む。
アイアンゴーレムの右拳……いや、腕から肩まで全てが切り裂かれる。それにより、真下に居たクリントとスカルウィッチに、壊れた腕の破片が崩れ落ちる。
「ふう」
エネルギー砲は、こうして収束させることで一筋の光となって解き放つことができる。攻撃もできるけど、ロウガは先ほどのようにエネルギーを吸収することができる。
ハヤテと合体した時も、ハヤテのエネルギーを自分のものとしている。それと似たようなものだ。
「お? そっちもやった感じかい?」
「ロメリアさん。そっちは」
先ほどまで離れた位置で戦っていたロメリアさんが戻って来た。
視線を向けると、ファイアスピリットナイトが真っ二つになって倒れているのを目視した。
「耐性があるって言ってたけど、そこまでじゃなかったねぇ」
苦戦もなしに倒してしまったようだ。
「ですが、あの魔物は精霊系です。あのままだと、また復活します」
「そうなんだよねぇ。ほんと厄介な魔物ばっかり召喚するもんだよ」
精霊系の魔物は、ただ倒しただけじゃ完全に倒したと言うことにはならない。魔素がある限り、時間が経てば体を再構築させる。
ゆえに、ファイアスピリットナイトも時間が経てば復活するだろう。
「そんな厄介な魔物を召喚した魔族はどうなったのかしら」
しばらく静寂だった空間。
アイアンゴーレムの腕が崩れたことで倒した、ということになってくればよかったんだけど。
「どうやらまだ生きているみたいだね」
崩れ落ちた鋼鉄の破片の中から、クリントとスカルウィッチがゆらりと姿を現す。
無傷、ではないようで、それなりに体に傷を負っていた。




