表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/67

第四十五話「最奥へ」

 魔界のゴーレム達を殲滅した僕達は、休むことなく奥へと進んだ。

 その後は、特に何かが起きるということもなく、不気味なぐらい順調に階層を突破していった。


「ゴーレムの時みたいに、また魔界からの魔物達が襲ってくるかと思ったけど……あれっきりだったわね」


 新たな階層主である魔族クリントが居る七階層。

 そこへ辿り着いた僕達は、まず周囲を見渡す。


「油断するんじゃないよ。ここは最下層だ。油断したところに……ってこともありえるからねぇ」

「わ、わかってるわよ」


 ロメリアさんの言う通りだが、ティナの気持ちもわかる気がする。

 魔界のゴーレム達が襲ってきたことで、奥へ進めば進むほど、また魔界の魔物達が襲ってくるんじゃないかと気を張っていた。

 けど、ついに最下層まで、魔界のゴーレムほどの魔物は出ず。


 いや、もしかしたら知らずに倒していた?

 異世界と言っても、見た目では判断できない。

 これまで戦ってきた魔物達の中に、魔界から召喚された魔物が居たのかも……。


「それにしても、さすが最下層。より瘴気が濃いね」

「私達が来た時は、これほどではありませんでした……」


 と、シャルは目を顰めながら呟く。

 

「魔族さんの影響ってとこじゃないかい?」

「可能性としては、ありえるかもしれませんね……皆さん。あまり長いはできません。外の様子も気になります。クリントのところへ向かいましょう」


 シャルは、ぎゅっと杖を握り締める。

 そんな彼女の様子を見て、僕は正面に立つ。


「シャル。焦る気持ちはわかるけど、ここまで来るのに体力も魔力も、かなり消耗した。相手は、魔族。その強さを君は十分知っているはずだ。挑む前に、しっかり準備を整えないと」


 僕の言葉に、シャルは一度目を閉じる。


「そう、ですね。……私、一度失敗したことで相当焦っていたようです」


 右手を自分の胸に添え、目を再び開いたシャルの表情は、先ほどと違い余裕が見える。世界を救う勇者パーティーとして、聖女として。

 傍から見たら冷静に僕達を導いてくれていたが、やっぱり焦っていたようだ。

 

「ありがとうございます、アースさん。もう、大丈夫です」

「どういたしまして」


 もう大丈夫だと判断し、僕達は七階層を進む。

 

「……ほんと、不気味だね。魔物が一体も出てこない」


 通常のダンジョンには、魔物が一切出ない。所謂休憩エリアのようなものがあるダンジョンもある。だが、ここは闇のダンジョン。

 加えて階層主が居る最下層だ。

 魔物が一体もいないなんてことはないはずだ。


「クリントの仕業、でしょうか」

「だとしたら、親切だねぇ」

「何が親切よ。私は、馬鹿にしてるとしか思えないわ。自分のところに来るまで体力も魔力も消費し過ぎたせいで、簡単に負けたらつまらなんだ! みたいな感じがして」

「はっはっはっは! 随分と具体的だね。まあでも、わからなくもないねぇ」


 確かに、ティナの言うことには一理ある。

 まるで、自分のところに来るまで少しでも回復しろ、みたいに言っているようだ。


「そうだとしたら、遠慮なく回復させてもらおう」


 僕は、腰に装備していたポーチから二本の瓶を取り出す。

 ひとつは、赤色の液体が入った瓶。

 もうひとつは、黄色の液体が入った瓶。


 まず赤色の液体が入った瓶を開けてぐいっと飲む。

 魔力回復薬。

 これは、飲むだけで魔力を回復できる魔法薬だ。その中でも、赤色は上級。失った魔力が一気に回復したのを感じる。

 本来、魔素を取り込むことで自然に回復させるのが常識。

 だが、こういう状況では、こうやって薬により強制的に回復するのが最善。そもそも、闇のダンジョン内の魔素は、僕達にとっては毒だ。取り込んだら、体内の魔素が蝕まれてしまう。


 次に飲むのは黄色の液体。

 疲労回復薬。

 これを飲むことで、溜まった疲労を回復することができる。


「あっ、アースさん。空になった瓶は私が回収します」

「ありがとう」


 特に気にすることもなく、僕はシャルに空になった二本の瓶を手渡す。勇者パーティーに居た時も、彼女はこうして回収していた。

 なので、僕も自然と彼女に渡してしまった。


「くう! やっぱ疲労回復薬は、疲れた体に染みるねぇ!!」


 ロメリアさんは、僕達よりも相当疲労が溜まっているはずだ。そのためか、一気に二本も飲んでいた。

 

「シャルもしっかり回復してするんだぞ」

「はい」


 さあ、階層主まで後少しだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ