第四十一話「異変」
闇のダンジョンに潜って数十分は経った。
本来ならば、もっと時間がかかるが、一度攻略をし道を覚えているシャルが道案内してくれているおかげでどんどん奥へと進むことができている。
ダンジョンの広さによっては数日もかかるところもあるとか。
しかし、僕達が挑んでいるダンジョンはさほど広くはないようだ。
こちらとしては好都合だけど。
「ん? 五階層からは、雰囲気が変わるんだね」
四階層を難なく突破した僕達は、今までの雰囲気と違うことに気づく。四階層までは、レンガなどの壁に囲まれたところだったが、五階層は洞窟のようだ。
天井はかなり高く、肉眼では見えない。
周囲は、ところどころ光る鉱石で照らされており、横幅もかなりある。
「こういう場所は、大抵大きな魔物か軍勢で押し寄せてくるのが定番ですね」
「だね。シャル。ここからはどんな魔物が出るんだい?」
「硬い魔物が多数。物理攻撃はあまり効きません」
「んじゃま、属性攻撃でいこうか」
「あっ、火属性もあまり」
おそらく出てくる魔物の種類は、岩石系。
岩石系は、その名の通り岩や石に関係する魔物。特徴として総じて体が硬い。種類によっては、属性耐性を持っているものも。
「はっはっはっは! 問題ないね! これでも上級冒険者だよ? それにあたしはまだ全力を出しちゃいない」
確かに、ロメリアさんはどこか余韻を残しているかのように戦っていた。
これは、元剣士としての勘だけど。
「だったら、僕達ももう少し出力を上げるべきだな。ロウガ、ハヤテ。ここから出力を上げよう」
僕が指示を出すと、ロウガとハヤテはこくりと頷く。
「エネルギー残量は大丈夫なの? 補充しようか?」
ティナの言葉に、僕は改めて二体のエネルギー残量を確認する。ロウガは、ここまでずっと戦っていため76まで減っている。これでも出力を抑えていたため良い感じと言える。
対してハヤテは、最大エネルギー量はロウガより多く150はあり、そのうち20ほど消費している。
「ううん。まだ大丈夫だ。ティナは力を温存していて」
「わかったわ」
エネルギーを補充するなら階層主直前。
「おっと、どうやらお出ましのようだね」
話しているうちに、魔物がこちらへ近づいてきていた。
「あ、あれは……!?」
「シャル?」
シャルの様子がおかしい。
まさか、あの魔物―――ゴーレムって。僕の脳裏に、シャルが語ってくれたことが浮かぶ。彼女の反応から察するに、今こっちに近寄ってくるゴーレムは。
「どうやら、ようやく動いたみたいだね」
ロメリアさんもそれに気づいたらしく、赤炎を構える。
「どうやら、ゴーレムだけじゃないみたいだ」
よく見るとゴーレムの背後に小型の魔物が大量に確認できた。
しかも、全て岩石系。
どうやらここからは、あまり出し惜しみをしている場合じゃないみたいだ。




