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第三十八話「瘴気漂う中を」

 転移空間を抜けると、視界に広がるのは外とは比べ物にならないほど瘴気が漂う迷宮だった。

 まるで瘴気を吸って変色したかのように、ところどころ赤紫色のレンガが目立つ。

 

「ただでさえ瘴気でめんどくさいってのに、遺跡型かい」


 ロメリアさんがめんどくさそうに息を吐く。

 遺跡型は、罠や道が迷路のようになっていることが多い厄介なダンジョンのひとつだ。

 肉眼で見える限りでも、左右に三つほどの道がある。こういうダンジョンはただでさえ正確な道を見つけ出すのに時間がかかるというのに、そこに瘴気もプラスされている。


「ご心配なく。道は覚えています。……変わっていなければ良いのですが」


 普通のダンジョンに闇のダンジョン。

 二つに違いがあるが、同じところもある。一度生成されたら、構造は変化することはない。ただ、これまでなかっただけで、もしかしたらということもある。

 

「とりあえず、シャル。道案内を頼むよ。もし、変わっていてもそのまま突き進むしかない」

「わかりました、アースさん。では、こちらへ」


 僕達は、シャルの案内でまずは二つ先にある右の道へと進む。そこから魔物の相手をしながら、案内通りに進んで行く。

 

「どうやら、構造は変わっていないようですね」

「まあ、いくら魔族と言ってもダンジョンの構造を変えることはできないってことなんじゃない?」


 ダンジョンは、異空間。

 構造を変えるということは、空間を操るということだ。僕達の世界でも、空間を操る方法。たとえば、僕が使っている召喚術がそのうちのひとつだ。

 だけど、異空間を作る。これは小さな世界を創るも同義。それほどの空間操作能力は、これまでの歴史上で一人しか存在しない。


「こちらとしては好都合。このまま一気に駆け抜けるよ!!」

「この先を左に抜けると二階層へ向かう転移空間があります」


 一階層を進んで早数分。

 初回の攻略だったらもっとかかっていただろう。僕達は、二階層へ向かうため通路を右に曲がった。


「っと、厄介なのが居座ってるね」


 しかし、そううまくはいかない。

 転移空間の前に、アンデット系の魔物スケルトンが大量に湧いていた。アンデット系の魔物は、痛みというものを感じない。

 そのため、例え腕や足を切ったとしても怯むことなく襲い掛かってくる。

 

「ここは、私に任せてください」


 シャルは一人スケルトン達の前に歩み寄り、杖を掲げる。


「闇を浄化させし光よ!! 〈ホーリー・プレッシャー〉!!!」

「おー……光で圧殺」


 さすがのロメリアさんも予想外だったようだ。

 スケルトン達を一掃したのは、高濃度の光。

 アンデットにとって光は弱点であるのに加え、その光で圧し潰されるという殺意マシマシの聖魔法。


「さあ、行きましょう。二階層へ」


 軽く二十体以上は居たであろうスケルトンを一掃したシャルは、一気に四散する魔素を背ににっこりと笑みを浮かべた。


「相変わらず、物騒な攻撃を使うわね……」


 シャルが言うには、光でただ攻撃するだけでは動く者達も居る。そうさせないために、圧し潰す方法を選んだそうだ。


「あはは……」

「頼もしい限りだよ!」

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