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第三十五話「作戦会議」

 ロメリアさんに呼ばれて僕達は冒険者ギルドへ訪れていた。

 入ったらすぐ、空気が違うということは理解できた。

 

「あんた達! 今回の主力を連れてきてやったよ!」

「おう! 来たか、兄弟!」


 ギルドに入ると、迎えてくれたのはドッゴさんだった。

 他にも、やる気に満ちた冒険者達が、こちらへ視線を向けている。


「ロメリアの姉貴! 俺らはいつでも戦えますよ!」

「闇のダンジョン攻略……またロメリアさんに偉大な戦歴が!」

「こりゃあ、うちのティランズで冒険者をやりたいって連中が増えちまうかもな!」


 案内されたのは、カウンター前に設置されていた机。

 いつもは、そんなところに机はないのだが、今回は特別に設置されたと言ったところか。


「いいかい、あんた達! 昨日も言った通り、あたしはここに居る召喚士アース。妖精ティナ。聖女シャルと共に闇のダンジョンへ行く!!」

「ルートは、先にこちらで予め攻略したものを使います。ただ、闇のダンジョンは普通のダンジョンとは違います。予想外な出来事もありえます」


 闇のダンジョンへ入る僕達を中心に作戦会議は始まった。

 よく見ると、冒険者達の他にもティランズの警備隊の兵とその隊長達も混ざっている。


「予想外のこと、とは?」


 さっそく警備隊長である男が問いかけてきた。


「ダンジョン内、そしてダンジョン外でも起きますが。今考えられる最悪なパターンは……ダンジョン内から魔物達が溢れ出す、ということでしょう」


 シャルの言葉に、ギルド内に居る全員が息をのむ。

 通常、ダンジョンから魔物が出てくることはない。

 だけど、闇のダンジョンは違う。

 絶えず転移空間から瘴気が漏れている。その瘴気は、周囲を蝕み、光を奪う。そして、時間が経てば経つほど……転移空間は、緩くなる。

 緩くなると、そこから更に濃い瘴気が漏れ出し、ダンジョン内に居る魔物達も出てくる。


「そいつが、闇のダンジョンを早く潰さなくちゃならない理由のひとつだ。ティランズ付近にある闇のダンジョンも、出現して大分時間が経つ。周囲の自然も、もはや前の美しい光景の影すらないのは、あんた達も知ってるだろ?」


 そう言って、ロメリアさんはテーブルに置かれた地図のとあるところを人差し指で叩く。

 

「ああ。いつもは、そこで人を治す薬草を採取していたのに。今となっちゃ人を蝕む死の森になっちまった」

「俺は、よくあそこで剣の修行をしてたんだよな……」


 ティランズに住む者達にとっては、各々の思い出があるところ。それが今となっては、闇のダンジョンのせいで見る影もない。


「そいつを、今から奪い返しに行くんだ」


 ぐっと拳を握り締め、ロメリアさんは闘志を燃やす。

 

「あんた達は、あたしらがダンジョンに潜っている間、外で仕事だ」

「昨日、少し確認に行きましたが……外の魔物も大分瘴気を吸い込み凶暴化していました」

「へえ、気が利くじゃないか。アース」

「まあ、少し特訓をしながら」


 あの後、僕は闇のダンジョンがあるところまで足を運んだ。

 と言っても、ダンジョン自体には近づいていない。

 あくまで、周囲だ。

 それでも、何体かは瘴気で強化された魔物と遭遇した。


「瘴気で強化された魔物は、通常の魔物よりも格段に強い。皆さん、油断はしないでください」

「おうよ! 任せてくれ、兄弟!!」

「瘴気で強化された魔物なんて滅多に戦えないからな。結構、楽しみだんだよな」

「こら! アースさんが、さっき油断するなって言ったばかりでしょ? 馬鹿なの?」

「とりあえず、偵察は完璧にしないとね」


 僕達が、闇のダンジョン攻略をしている間は、冒険者達が外を護ってくれる。


「私達も、ティランズの警備をしっかり努めます」


 警備隊は、ティランズの周辺および中の警備。

 念のために冒険者達も何人か残る予定らしい。


「必ず……必ず今度こそ闇を祓ってきます。聖女の名に懸けて!」

「良い気合いだね、聖女様! あんた達! あたし達が最速で闇のダンジョンを攻略してくるからね! 終わったら、パー! と騒ごうじゃないか!!」


 二人の誓いの言葉に圧倒されていると、ティナが僕の肩に手を置いてくる。

 周囲を見ると、なんだか僕の言葉を待っている雰囲気だ……。

 

「……こういうのはあまり慣れていないんですが」


 こほん、と喉を整える。


「必ず、勝ってきます」


 短い言葉。だけど、それに僕は全てを込めた、つまりだ。

 えっと……皆の反応は。


「うん。良いんじゃない?」


 ティナは親指を立て。


「はい。必ず勝ちましょう、アースさん」


 シャルは、笑顔で浮かべ。


「当たり前!!」


 ロメリアさんは、拳を握った。それと同時に、冒険者や警備隊は大声を上げた。

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