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第三十四話「夢の中の少女再び」

「―――ここは」


 見覚えのある風景。

 ここは……あの少女と出会った場所。鋼鉄の壁に囲まれた通路。僕は、あの時のように奥へ、奥へと進んで行く。


「居た」


 そして辿り着いた部屋には、鋼鉄の管や板などと融合しているかのような状態のティナに似た黒髪の少女が居た。

 まだ意識ははっきりしている。

 今度こそ、何か情報を。


「君。君はいったい」

「……もう、少し」

「え?」

  

 こちらから話しかけると、黒髪の少女はぼそりと呟き始めた。


「もう少し……がんば、て」


 その刹那。

 また急激に意識が遠のいていく。


「ま、待って……! まだ君と話したいことが……!」


 だが、それは叶わず。

 最後に見たのは、まるで期待しているような、それでいて慈しみのある微笑みだった。


「―――また、なにも」


 一度目と同じで、こちらからは何も聞けなかった。相手側から一方的に、という感じで終わってしまった。だけど、一度目と違うのは、ただ意味深な言葉を聞いただけということ。

 一度目の時は、力を貰った。おそらくだが、僕がロボットを召喚できるのは……彼女のおかげ、かもしれない。


「おはようございます、アースさん。本日は、三十秒ほど早い起床ですね」

「……あ、うん。おはよう、シャル」


 そして、これもこの前と違う。

 この前は、部屋の隅っこで膝を抱えていたシャルだったが、今回はなぜかティナとは逆側に寝転がっていた。


「あの、鍵かけたはずなんだけど」

「開いてましたよ?」

「いや、そんなはずは」


 僕は、覚えている。

 寝る前にティナが部屋の鍵をしっかりかけたことを。疑問に思い、ドアを調べると……本当にかかっていなかった。

 特に壊された形跡もない。

 

(だけど……いや、まさか)


 僕は、鍵穴を見詰めた後、シャルを見る。


「あんたぁ! どうやって侵入してきたのよ!?」

「普通にドアから」


 ティナも起きたらしく、いつものようにシャルに詰め寄っていた。


「おーい! 起きてるかい? 闇のダンジョンに向けて、作戦会議と行こうじゃないか!!」

「朝からうるさい!!」

「なんだよ……あんただって相当じゃないか。というか」


 鍵がかかっていたらどうしたというのか、というほど迷いなくドアを勢いよく開けて入って来たロメリアさん。

 現在の時刻は、朝六時を過ぎたところ。

 だけど、宿屋へやってきたロメリアさんは、もっと早く起きたはずだ。それで、いつもの通りのテンションというのは、凄い。僕も朝に弱い、ということはないけど……。


「あんた達ってやっぱそういう関係だったのかい?」

「違うわよ! こいつは、不法侵入者よ!」

「不法ではありません。ちゃんとドアを開けて入ってきましたから。それに、アースさんから許可は得てます。いつでも来て良いと」


 確かに言ったけど……。


「んん……それで、ロメリアさん。作戦会議、でしたか?」


 なんだか流れが変な方向へいっていたので、僕は一度咳払いをしてから、流れを変えるべくロメリアさんに問いかけた。


「ん? ああ、そうだ。昨日、うちの馬鹿共と話し合ったんだけどね。とりあえず、そのことも含めてギルドで作戦会議をしようと思ったんだよ」

「それを伝えに、わざわざギルドマスター直々に?」

「別に良いだろ? 今は、そういう肩書は気にしない気にしない。今、気にすべきことは―――わかってるだろ?」


 そうだ。今は、闇のダンジョンを。そこで待ち構えている魔族クリントを倒す。

 勇者パーティーじゃない。

 僕達で。

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