第三十二話「新たなパーティーのリーダーは」
「はー、まさか神聖国の王様の娘だったとはね」
シャルと同じ髪色のセミロングヘアーに、青い瞳。十代の親とは思えないほどの若々しく白い肌。首元には、シャルが使っている石と同じものがネックレスとして下げられている。
上に立つ者として、いつでも連絡が来て良いようにとしているのだろう。
「……お父様。まことに残念なお知らせをしなくてはなりません」
『ふむ。話してみなさい』
さっきまで、どこかふんわりとした雰囲気だったフィグナス様だったが、シャルの真剣さを見て目を細めた。
「―――というわけです」
『魔族、か。話を聞いた限り、かなりの実力者のようだね。魔物を、それも魔界から召喚して使役する召喚士、か。それで、シャル。どうすべきだと思っているのかな? ―――いや、どうしたい?』
さすが一国の王だ。
遠くからでも、その存在感がひしひしと感じる。
「至急、新たなパーティーを編成。そして、闇のダンジョンの新たな階層主である魔族クリントを討伐します。もちろん、パーティーのリーダーは」
と、僕の方を見る。
え? まさか。
「アースさんです」
「え? ちょっ、僕!?」
僕が、パーティーのリーダー?
『なるほど。良いんじゃないかな?』
「ま、待ってください! ここは、聖女であるシャル……シャルレティア様が務めるべきかと存じます! フィグナス聖王様!!」
ちなみに、シャルレティアというのは、シャルの本名。フルネームは、シャルレティア・エルシュテット。シャルというのは、愛称のようなもの。
聖女となって、旅をすることとなった時に、そう呼んでほしいと自ら頼み込んできたんだ。
『んー、でもね。シャルが選んだんだから、申し分ないと思うよ。なにせ、我が娘が”愛”し”希望”を持った君だからね』
「はい、お父様。アースさんなら、問題ありません。彼と一緒なら、今度こそ私も本気を出せます」
「どういうことだい?」
意味がわからないとばかりに、ロメリアさんが問いかけるとシャルは、どこか自慢するように説明を始めた。
「私は、愛と希望の女神ハートゥル様を信仰する聖女。ゆえに、愛と希望。備わった時、物凄い力を出せるのです!」
『つまり、アースくんが一緒ならシャルは魔族をも圧倒する力を出せるってことだよ』
「へー、そりゃあ凄いじゃないか!」
「いや、魔族を圧倒するは言い過ぎじゃないの?」
シャルの力は、これまでずっと見てきたから疑いたくはないけど……僕も、ティナと同意見。
「ふふん! 愛と希望をもってすれば可能なんだよ! ティナちゃん!!」
「いつも思うけど、なんで私だけ敬語なしなわけ?」
「ティナちゃんは、大事なお友達だから」
『うんうん。愛する人と愛する友が同時にできたようで、父としてこんなに嬉しいことはない』
まあでも、いつものシャルに戻ったようで一安心、かな?
「なあなあ、そのパーティーメンバーにあたしも入って良いよね?」
「もちろんです、ロメリアさん。上級二位の冒険者である、あなたならば問題はありません」
「よし! 闇のダンジョン。それに魔族。久々に燃えてきた……!!」
『アースくん』
「は、はい!」
盛り上がって来たところで、フィグナス様が僕を呼ぶ。
『どうか、娘の力になってあげてほしい。そして……闇を祓ってくれ』
……まるで、勇者になった気分だ。まさか、勇者パーティーを追放されてから、こんな展開になるだなんて思ってもいなかった。
けど。
「全力を尽くすことを誓います!!」
全然悪い気分じゃない。
こんなに気分が高揚することがあるんだと、自分でも驚いている。いや……もしかしたら、心のどこかで臨んでいたのかもしれない。
なんてね。




