第二十四話「魔炎の大剣」
根は波のように押し寄せてくる中、デグボーは圧倒的に毒の色をした様々な果実を投げつけてきた。
それも……想像以上にでかいものを。
「でかっ!? 普通にアースぐらいあるわよ、あの果実!?」
ティナの言う通り、僕の身長と同じぐらいの果実だ。
相手が、見上げるほどの大きさだったため、なんとなく予想はできたかもしれないけど。
「あたしが手本を見せてあげるよ! 解放!!」
最優先でロメリアさんに飛んできた毒の果実。それを目の前にして、ロメリアさんは大剣に魔力を送った。すると、刃の中央にあった溝から炎が溢れ出し刃に纏った。
あれは、魔剣、だったのか? 普通じゃないとは思っていたけど。
「そおおらっ!!」
炎を纏った大剣で、ロメリアさんは毒の果実を一刀にて両断。
業火に焼かれたことにより、毒素も漏れることなかった。
「こうだ!!」
「いや、ロメリアの姉貴。俺達、魔剣とかじゃないんで無理ですぜ」
「……魔法使い達! 毒の果実は任せたよ!!」
手本を見せたが、ドッゴさんの言う通りロメリアさん以外普通の武器なので無理。そんなロメリアさんの姿に苦笑しつつ魔法使いの皆さんは炎の魔法を唱えた。
「〈フレア・ランス〉!」
「〈ファイア・ウォール〉!」
魔法使い達は、炎の魔法で。弓使い達は、矢じりに火を灯し、毒の果実を焼き落とす。
その間も、後衛に根が伸びてくるも、その全てをロウガが切り捨てていく。
そうしているうちに、ロメリアさん達はデグボーの近くまで辿り着く。
「お? 次がくるよ」
今までは遠距離からの攻撃だった。しかし、パターンが変わった。床から生えてきた根が一まとめになり、十数体の小さなデグボーが生成される。
更に、直接攻撃をせんとその巨大な枝をゆさゆさと動かしていた。
「ここからは毒の果実はこない! あんた達! 思いっきり行きな!!」
「おっしゃあ!」
「毒がなけれりゃ、こっちのもんだぜ!」
……だけど、警戒しないに越したことはない。確かに、ロメリアさんは過去にデグボーと戦ったことがあって、攻撃パターンをわかっているのかもしれない。
けど、相手は魔物。なによりも、過去と現在で違う大きな点は……闇のダンジョン。ここは、その影響を受けているかもしれない。
何が起こるかわからない。
「……生体センサーには何も映ってない、か」
念のため生体センサーで、周囲を確認する。今までは、画面に数えきれないほどの生体反応があったが、今は地上にあるデグボー本体とそれから生成された分身体達だけだ。
「あっ! 見てアース! 階層主の葉の色が!!」
ティナの言葉に、僕はハッと正面を見る。
なにやらぶるぶると震えたと思えば、デグボーの緑色の葉が全て赤く染まったではないか。なんだ? いったい何をしようとしているんだ。
「ロメリアさん!」
「わかってるよ! あんた達! どうやら、このデグボーはあたしが知らない行動をしてくるようだ! だから、ちょっくらあたしが」
ぐっと炎を纏った大剣を構え、ロメリアさんはデグボーに向かって突撃する。
「確かめてやるよ!!」
「ロメリアの姉貴!」
分身体の攻撃を回避し、葉が赤く染まったデグボー本体へ攻撃をしかける。
「〈ブレイズ・スラッシュ〉!!」
上級冒険者による豪快な一撃。
相手が植物系の魔物なため、炎による攻撃は大ダメージのはずだ。しかも、魔剣を使っている。普通の攻撃じゃない。
「やったぜ!」
「そのまま燃えちまいなぁ!」
切り口から燃え上がる赤き炎。
冒険者達の誰もがこれでやったと歓喜の声を上げる。
がしかし。
「なっ!?」
「炎を……吸収した?」
燃え広がるどころか、切り口に炎が吸い込まれていった。そして、その炎を養分としたかのように切り口もあっという間になくなってしまう。
「へえ。これは、確かにあたしが知るデグボーじゃないみたいだね」
上級冒険者の一撃で倒れない魔物を見て動揺する中級冒険者達だったが、ロメリアさんだけは余裕の態度だった。
これが、強者たる、てやつなのだろう。




